電気設備工事ではなぜボックスが必要なのか?
なぜケーブルのジョイント部にはボックスが必要なのか?
なぜコンセントには裏ボックスが必要なのか?
照明器具や空調室内機とケーブルの接続部にもボックスは必要なのか?
ボックスが省略できる場合はあるのか?
について解説していきたいと思います。



ボックスが必要な理由は? なぜボックスが必要?


電気設備工事でボックスが必要な理由ですが、一言で表すことはできません。
ボックスは様々な役割を兼ねており、まとめると主に以下の4つとなります。


(1)火災予防のため
(2)電線管内の電線を触れるようにするため
(3)電線管の固定のため
(4)(壁内の場合)壁材の負荷軽減


順に説明していきます。



(1)火災予防のため

ケーブルとケーブルを接続する際や、ケーブルと機器とを接続する際には、ケーブルのシースと絶縁体を剥かなければなりません。

差込みコネクタやリングスリーブなど適切な方法で接続したとしても元の状態に比べ絶縁性は落ちることになります。


↑差込みコネクタ

↑リングスリーブ



ケーブルに張力がかかった場合も接続部が一番弱くなります。


よく、ジョイントだらけのつぎはぎの施工をする電気業者もいますが、ケーブルはそういうところから絶縁劣化していく(つまり漏電しやすくなる)ので、ジョイントはできるだけ最小限にするべきです。


つまり、ジョイント部は電気的に弱い部分ということになります。
そして、もしその弱い部分をボックスで保護せずに、周りの断熱材やホコリに接触している状態で漏電が起こってしまったら、最悪、家事になってしまいます。
また、ネズミがかじるリスクもあります。

そのためボックスでの保護が重要となります。


まとめると、ボックスで保護することにより、

断熱材に接触するリスク
接触不良により熱による火災からの延焼保護
ネズミがかじるリスク

を防ぐことができます。

↑ボックスによりケーブルの接続部を断熱材(黄色)から保護している。(写真の例はコンセントの裏ボックス)


(2)電線管内のケーブルを触れるようにするため

電線管と電線管の接続の際にはボックスを使う必要はないですが、ボックスを適度な間隔で設置することで、電線管の中のケーブルの引き換えが容易になります。配管長が高ければ長いほどケーブルを引っ張っても抜けなくなってしまうので、適度な距離ごとにボックスを設けてそこからケーブルを触れられるようにしておくとよいでしょう。
ちなみに国土交通省の建築設備設計基準では「電線管の1区間が30mを超える場合には、途中にプルボックス又はジョイントボックスを設けるものとする」と記載があります。(※垂直の場合は6m以内ごと)

また、内線規程より、ケーブルのジョイントは配管の中で行うことは禁止されているため、配管の中にケーブルがある場合で、途中でケーブルをジョイントしたい場合は、配管と配管の間にボックスを設置し、その中でケーブルのジョイントを行う必要があります。
そうすることで、ボックスの蓋を開ければジョイント部の点検が可能となります。


(3)電線管の固定のため

壁内のコンセントへの配線のたち下げは、改修の際に電線の敷き換えが容易にできるように、電線管を使用する場合が多いです。

国交省の建築設備設計基準でも「保守点検が困難な隠蔽部分の配線は合成樹脂管、金属管等により保護する」となっています。

↑壁内の電線管(PF管)の立ち下げ

住宅などでよく使用されるボックスレス施工だと、ハサミ金具を使用することになりますが、ハサミ金具には電線管を差し込むことができません。
電線管をしっかりと固定するにはボックスが必要です。


(4)壁材の負荷軽減


これは壁に取りつけるコンセントやスイッチについてですが、コンセントのボックスは通常、LGSに固定するため、壁ボードにはほとんど負荷はかかりません。

LGSに固定したボックスに、コンセントを取り付け、壁ボードの上から最後にコンセントプレートを設置する流れになります。

↑壁ボードを設置前のコンセントのボックスの様子 ボックスがLGSの間柱に全ネジを通して固定されている。

一方、壁材に直接コンセントを取り付けてしまうと、壁のボードだけでコンセントを支えているため、最悪の場合、コンセントの抜き方によっては、壁のボードごと壊してしまう可能性もあります。

少なくとも大規模な案件や公共工事においては、壁のボードだけで支持をとるものはないと思ってください。

コンセントに限らず、引き渡し後にお客さんの責任で、ボートにビスを打って時計をつけたり、画鋲で何かを取り付けたりするのは自由ですが、電気工事としてそれを行うことは品質の観点ではあまり望ましくありません。

改修なら致し方ない場合もありますが、コンセントでも時計でもインターホンでも電気工事で設置するなら、ボードから支持をとるのではなく、ボックスを使い支持をするのが望ましいと言えます、

また、コンセントを更新する際、ボックスがないと金具ごと壁裏に落としてしまう可能性かあるという問題点もあります。


以上が電気工事でボックスが必要な理由となります。





内線規程にはなんて書いてある?


内線規程におけるボックスについての記載をいくつか抜粋します。


(1)ケーブル相互の接続はキャビネット、アウトレットボックス又はジョイントボックスなどの内部で行うか、又は適当な接続箱を使用して行い、接続部分を露出させないこと ただし次の各号のいづれかによる場合はこの限りではない

①接続部及び被覆物が露出しないように、JISC2813(屋内配線用差込型コネクタ)に適合するボックス不用形差込電線コネクタなどの接続器具を使用して施設する場合

②止む得ない場合でケーブルの絶縁体と同等以上の性能を有する合成樹脂によりモールドした場合又は絶縁チューブ等を利用して十分に被覆し保護した場合
(内線規程 3165-5)


(2)ケーブルと器具とを接続する場合は、キャビネット、アウトレットボックスなどの内部で行うこと。

ただし、大壁、空洞部分、天井ふところまたはこれらに類する場所で器具端子を堅ろうな難燃性絶縁物で密閉し、ケーブルの導体絶縁物を造営材より十分離隔した場所にあってはこの限りではない (内線規程 3165-5)

(3)断面積が大きいケーブル相互を接続する場合などであって2項の規定(当記事では(1)のこと)により難い場合は、黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープなどを使用して十分に被覆するか、又は絶縁用プラスチックチューブなどをはめることにより十分に保護すること。
(内線規程 3165-5)


(4)コンセントの施設

a  埋め込みコンセントは金属製または難燃性絶縁物におさめて施設すること

b コンセント自体がその端子部分充電部を露出しないように堅ろうな難燃性絶縁物で覆われているものは、これを大壁の壁板などに堅古に取り付ける場合であって、かつ防護カバーを取り付ける場合に限りaの規定にかかわらずボックスの使用を省略することができる。

(内線規程3202-2)




このように内線規程においてもボックスの設置は求められています。



ボックスが省略可能な例は?


内線規程には省略可能な場合も記載されています。
先程の内線規程の文章から、省略可能な例を抜粋します。

①接続部及び被覆物が露出しないように、JISC2813(屋内配線用差込型コネクタ)に適合するボックス不用形差込電線コネクタなどの接続器具を使用して施設する場合


差込型コネクタというと、WAGOが有名ですね

↑WAGO


この製品は、JISC2813屋内配線用差込形電源コネクタに適合しています。

では、これを使用した場合はボックスの省略は可能なのでしょうか?


答えは不可です。
内線規程で言っている差込コネクタというのは、差し込みコネクタとボックスが一体となったようなものです。ボックス不要型についても同じくJISC2813に記載があります。

↑ボックス不用形差込電線コネクタ


そのため、通常の差し込みコネクタを使用した場合は、ボックスが必要ということになります。


また、差し込みコネクタは、大手ゼネコンでは使用を禁止している例もあります。

リングスリーブ+絶縁テープの組み合わせの方が昔ながらのやり方ですが、電線も抜けづらく、信頼性が高いという判断だと思われます。
実際、差し込みコネクタはしっかりと差し込めていなかったたことが原因で、発熱で焦げたりなどの事故も起こっています。
しかし、差し込むだけで良いので、施工は非常に楽であり、コネクタ部分がプラスチックなので絶縁性があり、リングスリーブのときのように最後にテープを巻く必要がありません。
内線規程においても差し込みコネクタは屋内配線の接続方法として正式に記載がされていることと、公共工事標準仕様書でも差し込みコネクタの使用はOKとなっていますので、公共工事でもよく使われます。


※差し込みコネクタはよくワゴと呼ばれています。実際にはワゴというのは会社名なのですが、他社の差し込みコネクタ(ニチユ製など)も含めワゴと呼んでしまってる人が多いです。またワゴ社には、ワンタッチコネクタ(JISC2814-2-2)やボックス不用形差込電線コネクタなどの製品もありますが、JISC2813のボックス内使用型適合品の差し込みコネクタのみをワゴと呼んでる場合がほとんどです。


(1)②止む得ない場合でケーブルの絶縁体と同等以上の性能を有する合成樹脂によりモールドした場合又は絶縁チューブ等を利用して十分に被覆し保護した場合
(内線規程 3165-5)


(3)断面積が大きいケーブル相互を接続する場合などであって2項の規定により難い場合は、黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープなどを使用して十分に被覆するか、又は絶縁用プラスチックチューブなどをはめることにより十分に保護すること。
(内線規程 3165-5)


これらは、幹線(CV,CVT、FP、FPTケーブルなど)で使われる手法です。
ハンドボール内など水没の可能性のある場所はレジン注入工法、一時的に水没の可能性のある場所では常温収縮チューブ工法、絶縁カバー工法などが使用されます。
(※そもそもリングスリーブや差込コネクタは5.5SCまでの太さの電線でしか使用できませんのでCVケーブルではなくFケーブルが中心となります。CVケーブルの場合に圧着スリーブを使用する場合は、リングスリーブではなくB形スリーブやP形スリーブを使用します。)


内線規程の言葉に当てはめると



レジン注入工法

→合成樹脂モールド工法
※レジン注入工法はプラスチック製のケース(モールドケース)にレジン(樹脂)を注入する工法となります。

常温収縮チューブ工法
→絶縁チューブ

絶縁カバー工法

→黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープ、絶縁用プラスチックチューブ



となります。
すなわち、B形スリーブやP形スリーブを使用せずに、上記の3つの工法を使う場合はボックスの省略が可能となります。
(リングスリーブ(E形スリーブ)、突き合わせ用スリーブ(B形スリーブ)、重ね合わせスリーブ(P形スリーブ)をまとめて圧着スリーブといいます 詳細はJISC2806をご確認ください。)


「大壁、空洞部分、天井ふところまたはこれらに類する場所で器具端子を堅ろうな難燃性絶縁物で密閉し、ケーブルの導体絶縁物を造営材より十分離隔した場所」



これはあくまでケーブルとケーブルのジョイントではなく、ケーブルと器具とのジョイント部に使用するボックス、つまり位置ボックスについてです。


天井裏をみてもらうとわかるように、照明器具とケーブルの接続においてボックスを使用している例は非常に少ないと思います。


「器具端子を堅ろうな難燃性絶縁物で密閉…」とあるように、器具端子が器具内にある場合、ボックスの設置は省略可能となります。

ほとんどの施設用照明は器具端子が堅ろうな難燃性絶縁物で密閉されているので、ボックスの設置は省略できるということになります。
厳密に言うと、省略できるというよりは、器具内に端子があるので、実質、ボックスの内部で結線を行っている状態と変わらないということです。
もちろん接続部分が器具外の場合は、ボックスは必要となります。


コンセントにおいても同様で、ボックスレス施工というのも住宅などではよく使われます。

一般的な壁埋込用の電線差し込み式のコンセントは内線規程の用語を引用すると「充電部分を露出しないように堅ろうな難燃性絶縁物で覆われている」ため、ボックスが省略可能です。

しかし、施工性の観点や、コンセントをボードだけで支えることになってしまうなどの理由から、照明器具と違いコンセントについてはボックスを設置するのが一般的です。スイッチなど他の壁につく設備も同様です。
また、コンセントでも、ねじ端子式ものや床用コンセントなど端子が器具外にあるためボックスが必須なものもあります。


ボックスが省略可能な例は、公共工事標準仕様書でも内線規程と同様となります。
しかし、標準仕様書にはスイッチやコンセントのボックスが省略できる記載がありません。
これは、安全性の観点では、端子部分が器具内にあれば満たすことはできるのですが、先に述べた通り、壁内のボックスの設置には、壁ボードの負荷軽減や立ち下げ配管の固定などのメリットがあるため、省略は不可となっているものと思われます。



以上となります。



ボックスの種類や用語、使い分けについては下記の記事をご覧ください。

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