電気工事ではよくボックスを使いますけど、ボックスってなんで必要なんですか? あってもなくても変わらない気がしますし、絶対設置しないとダメなんですか?
電気工事でボックスが必要な理由は色々とあって一言では説明できないけど結構重要な役割を果たしているんだ。
でも、ボックスが省略可能な場合もあるから、それも含めて、一つ一つ丁寧に教えるね。
ここでは、電気設備工事ではなぜボックスが必要なのか?
なぜケーブルのジョイント部にはボックスが必要なのか?
なぜコンセントには裏ボックスが必要なのか?
照明器具や空調室内機とケーブルの接続部にもボックスは必要なのか?
ボックスが省略できる場合はあるのか?
についてわかりやすく解説していく。
ボックスが必要な理由は? なぜボックスが必要?
ボックスの用途
(1)電線のジョイント部の保護ため
(2)電線管内の電線を触れるようにするため
(3)電線管の固定のため
(4)(壁内の場合)壁材の負荷軽減
(1)についてのみ法的なものとなり必須だが、(2)-(4)はどちらかといけば便利だから使用しているというイメージである。
以下で順に説明していく。
(1)電線のジョイント部の保護のため
ジョイント部の説明の前に、まずケーブルと絶縁電線の違いについて軽く説明する。
絶縁電線(IV線など)は導体を絶縁体で覆った構造になっており、ケーブルはさらにその上にシースと呼ばれる外皮で保護した構造になっている。
電技解釈156条より、ケーブルは外皮(シース)があるためそのまま露出での施工も可能だが、絶縁電線(IV線)はシースで保護されてないため、基本的に電線管での保護が必要となる。
電技解釈156条の元となる省令(電技第56条)には、「配線は(中略)感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。」と記載がある。
つまり、「感電または火災の恐れがないように施設すること」について電技解釈では、「シースで保護されたケーブルを使用するか、シースがない絶縁電線の場合は電線管に入れて保護すること」と解釈している。
では、ここで接続部(ジョイント部)に話を戻すが、接続部はケーブルのシース及び絶縁体を剥がすことになる。
差し込みコネクタなどを利用した場合、差し込んだ部分はプラスチックなので絶縁性が保たれているが、差し込む直近の部分は絶縁体のみを残し、シースは剥がした状態となっている。
つまり接続部付近はシースがないため先ほどの絶縁電線の話と同じで何かしら保護する必要が生じ、露出はNGとなる。
リングスリーブで結線を行う場合も同様である。
そのため、接続部には何かしらの保護が必要となるが、配管で保護してしまうと、接続部に何かあった際に点検や補修が容易にできない。
電技解釈でも配管内で接続点を設けることは禁止されており、その理由として電技解釈の解説では、その部分における事故が比較的多く起こるからと記載されている。
接続点は施工精度によるが、過去の事例からも、電気的に弱く、短絡や過熱、漏電が起こりやすい部分となるため、外傷からの保護も重要だが、何かあった際にすぐに点検できることも重要である。
そこでボックスを使用することにより、接続部を保護し、かつ何かあってもボックスの蓋を開けることで中の保守ができるようになっている。
よって、特定の方法で十分な処理をされている場合を除き、ボックスでの保護が重要となる。
(※特定の方法での十分な処理については後述のボックスが省略できる場合にて解説する。)

↑差込みコネクタ

↑リングスリーブ
また、接続部は電気的に弱いと述べたが、ケーブルはそういうところから絶縁劣化していく(つまり漏電しやすくなる)ので、ジョイントはできるだけ最小限にするべきである。
電気設備工事監理指針でも、電路の分岐等止む得ない場合を除き、電線相互の接続は極力避けるとなっている。
なお、ケーブルの接続でボックスを使用する旨は、電技解釈の第12条に記載があり、その解釈のもとになった省令は省令12条「電線を接続する場合は、接続部分において電線の電気抵抗を増加させないように接続するほか、絶縁性能の低下及び通常の使用状態において断線のおそれがないようにしなければならない。」の内容となる。
つまり、ボックスを使用することが、上記の省令を満たすことにつながると電技解釈で解釈している。
まとめると、ボックスで保護することにより、絶縁体を保護したり、結線部を外傷から守ったりできるため、絶縁性能の低下や断線の恐れを減らすことができ、結果として、接続部が原因の感電や漏電、火災、断線のリスクや、場合によっては結線不良等で熱を持った接続部が建築材に当たり火災になるリスクなども減らすことができると考えられている。
要するに電線の結線部の保護のために設置していて、法的に必須というわけですね!
ざっくりいうとそういうことだね。保護しなくてもいいくらいしっかりと処理してれば省略できる場合もあるけど、それは後ほど解説するね
電線管と電線管の接続の際にはボックスを使う必要はないが、ボックスを適度な間隔で設置することで、電線管の中のケーブルの引き換えが容易になる。配管長が高ければ長いほどケーブルを引っ張っても抜けなくなってしまうため、適度な距離ごとにボックスを設けてそこからケーブルを触れられるようにしておくと良い。
ちなみに国土交通省監修の建築設備設計基準では「電線管の1区間が30mを超える場合には、途中にプルボックス又はジョイントボックスを設けるものとする」と記載がある。(※垂直の場合は6m以内ごと)
また、内線規程により、ケーブルのジョイントは配管の中で行うことは禁止されているため、配管の中にケーブルがある場合で、途中でケーブルをジョイントしたい場合は、配管と配管の間にボックスを設置し、その中でケーブルのジョイントを行う必要がある。
そうすることで、ボックスの蓋を開ければジョイント部の点検が可能となる。
(3)電線管の固定のため
壁内のコンセントへの配線のたち下げは、改修の際に電線の敷き換えが容易にできるように、電線管を使用する場合が多い。
建築設備設計基準でも「保守点検が困難な隠蔽部分の配線は合成樹脂管、金属管等により保護する」となっている。

↑壁内の電線管(PF管)の立ち下げ
住宅などでよく使用されるボックスレス施工だと、ハサミ金具を使用することになるが、ハサミ金具には電線管を差し込むことができない。
電線管をしっかりと固定するにはボックスが必要である。
(4)壁材の負荷軽減
これは壁に取りつけるコンセントやスイッチについてだが、コンセントのボックスは通常、LGSに固定するため、壁ボードにはほとんど負荷はかからない。
LGSに固定したボックスに、コンセントを取り付け、壁ボードの上から最後にコンセントプレートを設置する流れとなる。

↑壁ボードを設置前のコンセントのボックスの様子 ボックスがLGSの間柱に全ネジを通して固定されている。
一方、壁材に直接コンセントを取り付けてしまうと、壁のボードだけでコンセントを支えているため、最悪の場合、コンセントの抜き方によっては、壁のボードごと壊してしまう可能性もある。
少なくとも大規模な案件や公共工事においては、壁のボードだけで支持をとることは少ない。
コンセントに限らず、引き渡し後にお客さんの責任で、ボートにビスを打って時計をつけたり、画鋲で何かを取り付けたりするのは自由だが、電気工事としてそれを行うことは品質の観点ではあまり望ましくない。
改修なら致し方ない場合もあるが、コンセントでも時計でもインターホンでも電気工事の新築で設置するなら、ボードから支持をとるのではなく、ボックスを使い支持をするのが望ましいと言える。
また、コンセントを更新する際、ボックスがないと金具ごと壁裏に落としてしまう可能性もある。
以上が電気工事でボックスが必要な理由である。
内線規程にはなんて書いてある?
一部電技解釈の記載と被っているが、内線規程におけるボックスについての記載をいくつか抜粋する。
内線規定におけるボックスの記載(抜粋)
(1)ケーブル相互の接続はキャビネット、アウトレットボックス又はジョイントボックスなどの内部で行うか、又は適当な接続箱を使用して行い、接続部分を露出させないこと ただし次の各号のいづれかによる場合はこの限りではない
①接続部及び被覆物が露出しないように、JISC2813(屋内配線用差込型コネクタ)に適合するボックス不用形差込電線コネクタなどの接続器具を使用して施設する場合
②止む得ない場合でケーブルの絶縁体と同等以上の性能を有する合成樹脂によりモールドした場合又は絶縁チューブ等を利用して十分に被覆し保護した場合
(内線規程 3165-5)
(2)ケーブルと器具とを接続する場合は、キャビネット、アウトレットボックスなどの内部で行うこと。
ただし、大壁、空洞部分、天井ふところまたはこれらに類する場所で器具端子を堅ろうな難燃性絶縁物で密閉し、ケーブルの導体絶縁物を造営材より十分離隔した場所にあってはこの限りではない (内線規程 3165-5)
(3)断面積が大きいケーブル相互を接続する場合などであって2項の規定(当記事では(1)のこと)により難い場合は、黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープなどを使用して十分に被覆するか、又は絶縁用プラスチックチューブなどをはめることにより十分に保護すること。
(内線規程 3165-5)
(4)コンセントの施設
a 埋め込みコンセントは金属製または難燃性絶縁物におさめて施設すること
b コンセント自体がその端子部分充電部を露出しないように堅ろうな難燃性絶縁物で覆われているものは、これを大壁の壁板などに堅古に取り付ける場合であって、かつ防護カバーを取り付ける場合に限りaの規定にかかわらずボックスの使用を省略することができる。
(内線規程3202-2)
内線規程でもボックスは求められてるんですね。でも、ボックス不用形差込電線コネクタとか絶縁チューブとか使えば省略可能とか書かれてますね。
ボックスを省略できる例というのは結構あるんだよ。次で解説するね
ボックスが省略可能な例は?
内線規程には省略可能な場合も記載されている。
先程の内線規程の文章から、省略可能な例を抜粋する。
①接続部及び被覆物が露出しないように、JISC2813(屋内配線用差込型コネクタ)に適合するボックス不用形差込電線コネクタなどの接続器具を使用して施設する場合
あ、これってワゴのような差し込みコネクタのことですね! 差し込みコネクタ使えばボックス不要なんですね!
勘違いが多いところなんだけど、それとはちょっと違うんだ。詳しく解説するね。
差込型コネクタというと、WAGOが有名である。

↑WAGO
この製品は、JISC2813屋内配線用差込形電源コネクタに適合している。
では、これを使用した場合はボックスの省略は可能だろうか?
答えは不可である。
差し込み部の直近では、ケーブルのシースを剥がすことにより、絶縁体が露出する形になるため、ボックスでの保護が必要となる。
内線規程で言っている差込コネクタというのは、差し込みコネクタとボックスが一体となったようなものである。ボックス不要型についても同じくJISC2813に記載がある。

↑ボックス不用形差込電線コネクタ
そのため、通常の差し込みコネクタを使用した場合は、ボックスが必要ということになる。
また、差し込みコネクタは、大手ゼネコンでは使用を禁止している例もある。
リングスリーブ+絶縁テープの組み合わせの方が昔ながらのやり方だが、電線も抜けづらく、信頼性が高いという判断だと思われる。
実際、差し込みコネクタはしっかりと差し込めていなかったたことが原因で、発熱で焦げたりなどの事故も起こっている。
しかし、差し込むだけで良いので、施工は非常に楽であり、コネクタ部分がプラスチックなので絶縁性があり、リングスリーブのときのように最後にテープを巻く必要がない。
内線規程においても差し込みコネクタは屋内配線の接続方法として正式に記載がされていることと、公共工事標準仕様書でも差し込みコネクタの使用はOKとなっているので、公共工事でもよく使われる。
※差し込みコネクタはよくワゴと呼ばれている。実際にはワゴというのは会社名だが、他社の差し込みコネクタ(ニチユ製など)も含めワゴと呼んでしまってる人が多い。またワゴ社には、ワンタッチコネクタ(
JISC2814-2-2)やボックス不用形差込電線コネクタなどの製品もあるが、JISC2813のボックス内使用型適合品の差し込みコネクタのみをワゴと呼んでる場合がほとんどである。
(1)②止む得ない場合でケーブルの絶縁体と同等以上の性能を有する合成樹脂によりモールドした場合又は絶縁チューブ等を利用して十分に被覆し保護した場合
(内線規程 3165-5)
(3)断面積が大きいケーブル相互を接続する場合などであって2項の規定により難い場合は、黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープなどを使用して十分に被覆するか、又は絶縁用プラスチックチューブなどをはめることにより十分に保護すること。
(内線規程 3165-5)
これらは、幹線ケーブル(CV,CVTケーブルなど)でよく使わる。
ケーブルラック上でCVケーブルをボックスを使ってのジョイントはあまり見られないように、基本的にはCVケーブルではボックスは省略されることが多い。
内線規程における合成樹脂によるモールドとは、いわゆるレジン注入工法のことになる。
例えば、古河だとセルパック、3Mでもレジンキットとして販売されている。
内線規定における絶縁チューブとは、古河ではアイラップ、イージパオなど製品が該当し、3Mでは常温収縮チューブなどの製品が該当する。
黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープについては、古河ではエフコテープ2号が該当し、 3Mでは絶縁カバー工法などの製品が該当する。
(絶縁カバー工法は一般的にイメージするテープの形状とは違うが、メーカー確認の結果、内線規程でいう黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープに該当とのこと)
絶縁用プラスチックチューブについては、各メーカーにもヒアリングしたが、あまり該当する製品を出しているメーカーがないようである。
「大壁、空洞部分、天井ふところまたはこれらに類する場所で器具端子を堅ろうな難燃性絶縁物で密閉し、ケーブルの導体絶縁物を造営材より十分離隔した場所」
これはあくまでケーブルとケーブルのジョイントではなく、ケーブルと器具とのジョイント部に使用するボックス、つまり位置ボックスについてである。
天井裏をみてもらうとわかるように、照明器具とケーブルの接続においてボックスを使用している例は非常に少ない。
「器具端子を堅ろうな難燃性絶縁物で密閉…」とあるように、器具端子が器具内にある場合、ボックスの設置は省略可能となる。
ほとんどの施設用照明は器具端子が堅ろうな難燃性絶縁物で密閉されているので、ボックスの設置は省略できるということになる。
厳密に言うと、省略できるというよりは、器具内に端子があるので、実質、ボックスの内部で結線を行っている状態と変わらないということになる。
もちろん接続部分が器具外の場合は、ボックスは必要となる。
コンセントにおいても同様で、ボックスレス施工というのも住宅などではよく使われる。
一般的な壁埋込用の電線差し込み式のコンセントは内線規程の用語を引用すると「充電部分を露出しないように堅ろうな難燃性絶縁物で覆われている」ため、ボックスが省略可能となる。
しかし、施工性の観点や、コンセントをボードだけで支えることになってしまうなどの理由から、照明器具と違いコンセントについてはボックスを設置するのが一般的である。スイッチなど他の壁につく設備も同様である。
また、コンセントでも、ねじ端子式ものや床用コンセントなど端子が器具外にあるためボックスが必須なものもある。
ボックスが省略可能な例は、公共工事標準仕様書でも内線規程と同様となる。
しかし、標準仕様書にはスイッチやコンセントのボックスが省略できる記載がない。
これは、安全性の観点では、端子部分が器具内にあれば満たすことはできるのだが、先に述べた通り、壁内のボックスの設置には、壁ボードの負荷軽減や立ち下げ配管の固定などのメリットがあるため、省略は不可となっているものと思われる。
ボックスの種類や用語、使い分けについては下記の記事を参照のこと
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