ここでは、電気設備工事における、位置ボックス、ジョイントボックス、アウトレットボックス、スイッチボックス、コンセントボックス、プルボックス、ジャンクションボックス、屋内配線用ジョイントボックス、コンクリートボックス、スライドボックス、ナイスハットの違いについて解説していきたいと思います。
それぞれのボックスは公共工事で使っていいのか?
埋込コンセントでスイッチボックスとアウトレットボックスはどう使い分ければいいのか?
どれがJIS規格品でどれがメーカー独自の商品なのかも合わせて解説していきたいと思います。


正直言うと、これらの用語は結構曖昧な部分な場合もあり、使う場面や人、書籍によって何を意味するかは違ってきます。

そのため、ここでは主に内線規程や公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)、建築設備設計基準におけるボックスの呼び方の使い分けについて解説していきます。


※そもそもなんでボックスが必要なの?ボックスは設置しなくてもいいの?などの疑問については下記の記事にて解説しています。


まずは、ジョイントボックスと位置ボックスの違いについてです。


これらはボックスの名前ではなく用途となり、主に建築工事標準仕様書、建築設備設計基準などでボックスの分類として使われている用語となります。
ケーブルや配管の接続部に設置するボックスをジョイントボックス、器具の位置に設置するボックスを位置ボックスと総称しています。
(※建築設備設計基準では、ジョイントボックスのことをジャンクションボックスと記載することもあります)
↑コンセントの位置ボックス(壁ボードの仕上げ前)
↑コンセントの位置ボックス(壁ボードの仕上げ後)
↑ケーブルのジョイントボックス(ジャンクションボックス) (天井の仕上前)


上記の写真の例だと、写真1-3枚目のコンセントの位置に設置する位置ボックスとしてアウトレットボックスを採用しています。
また、4枚目の写真もケーブルのジョイント部に設置するジョイントボックスとしてもアウトレットボックスを採用しています。
アウトレットボックスというのが具体的にどんなボックスなのかは後ほど解説したいと思います。
ここでは、ジョイントボックス、位置ボックスというのはボックスの総称であり、結果として同じボックスを使用することもあるということを覚えておいてください。

続いて内線規程におけるボックスについての記載をいくつか抜粋します。

(1)ケーブル相互の接続はキャビネット、アウトレットボックス又はジョイントボックスなどの内部で行うか、又は適当な接続箱を使用して行い、接続部分を露出させないこと(内線規程 3165-5)

(2)ケーブルと器具とを接続する場合は、キャビネット、アウトレットボックスなどの内部で行うこと。
(内線規程 3165-5)

(3)埋め込みコンセントは金属製または難燃性絶縁物におさめて施設すること(内線規程3202-2)

(4) プルボックスとは通線を容易にするため配管の途中に設けるボックスをいい、大型のものは特別に製作されるが、小型のものは普通のアウトレットボックスで代用されることがある。(内線規程 3101-1)
※配管と配管の接続はカップリングで可なので、内線規程上では、配管と配管の接続にボックスを使用しなければいけない規定はありません しかし、通線を容易にするために建築設備設計基準だと30mに1箇所、配管が垂直の場合は6mに1箇所設けることとなっています。)


先ほど触れましたが、公共建築工事標準仕様書では上記の(1)の用途で使用するボックスを総称してジョイントボックスと呼んでいます。
内線規定上ではアウトレットボックスとジョイントボックスを用語として使い分けていますが、標準仕様書ではアウトレットボックスなども含めてジョイント部に使用するボックスを総称してジョイントボックスと呼んでいます。
また、(1)-(3)に使用するものを総称して内線規定ではボックスと総称しています。内線規程では配管と配管の接続に利用するものはボックスとは呼びません。あくまで電線が対象です。配管と配管の接続に利用するボックスは総称してプルボックスと呼んでいます。

アウトレットボックスは通常、ケーブルのジョイント部に設置しますが、小さい径の配管なら使用可能です。そのため内線規程においては配管の接続部に使用する場合は、アウトレットボックスなのに、分類としてはプルボックスに該当することになります。

標準仕様書におけるジョイントボックスは電線のジョイントのほか配管と配管の接続部に使用できるボックスも含んで総称しています。なのでアウトレットボックスは例えば配管の接続部に使用する場合であってもジョイントボックスに含まれます。
そしてプルボックスはジョイントボックスで対応できないサイズの配管(28ミリより大きい)の場合に使用するものとして扱っております。
ジョイントボックスとプルボックスは用語として使い分けされています。つまりアウトレットボックスはジョイントボックスの一種であるけど、プルボックスではないということです。


ここが、解説サイトやメーカーのHPによってボックスの説明が違う理由の一つでもあります。
何を基準にするかによってボックスの定義は全然異なるわけです。
標準仕様書より内線規程の用語が正だろうと考える人もいるかも知れませんが、標準仕様書は国土交通省が発行している正式なものなので、公共工事に限らず大規模な施設を中心とした民間工事でも多数採用されています。そのため、標準仕様書を基準にして用語を使い分けている業者もたくさんいます。
あとは、メーカーや電材屋さんが考える独自の分類も多数あります。


ここで、ジョイント部に使用するボックスを総称してジョイントボックスと呼んでしまう公共建築工事標準仕様書の記載の仕方はややこしくないのか?と思われる方もいるかもしれません。しかし心配は無用です。公共工事では、内線規定上のジョイントボックスは原則として使用せず、ジョイント部に使用するボックスはアウトレットボックスや露出丸形ボックス、コンクリートボックスの使用が基本となるので、用語として被ることがありません。なので、総称としてのジョイントボックスの中に内線規程上のジョイントボックスが含まれるということはならないのです。


話は戻りますが、公共建築工事標準仕様書では、(2)(3)の用途で使用するボックスを総称して位置ボックスと呼んでいます。


以上が内線規程と標準仕様書における分類の違いなのですが、下記の表にわかりやすくまとめたので、是非参照ください。




赤字の記載の部分は内線規定と標準仕様書で意味合いが異なる部分となります。


では、ここからは、ここからは、それぞれのボックスがどんなボックスなのかについて解説していきたいと思います。


アウトレットボックス


樹脂性と金属製があり、それぞれJISC8435JISC8340 で規格が定められています。 
サイズや形状の詳細は下記のJISのリンクをご確認ください。


樹脂製だと中浅形、中深形、大浅形、大深形の4種類のサイズがあります。

コンセントやスイッチの位置ボックスやケーブルのジョイントボックスとして使用できるほか、配管と配管のジョイント部にも使用できます。しかし、配管の場合28ミリまでの大きさが限度で、それ以上のものになると後述するプルボックスが必要となります。

しかし、写真を見てもらえばわかる通り、このままではコンセントの取付はできません。
アウトレットボックスのネジ穴と下記のコンセントのネジ穴が合わないというわけです。

アウトレットボックスはスイッチやコンセントの取付に特化したボックスではありませんから、コンセントやスイッチを取り付けるためのネジ穴がありません。そこで必要なのが塗代カバーです。
アウトレットボックスに塗代カバーというものをつけることで、コンセントやスイッチの位置ボックスとして使用することができます。

アウトレットボックスに塗代カバーをつけて、それに先程のコンセントを付けて最後にプレートをつければ一般的に見慣れたコンセントになります。


アウトレットボックスにブランクプレートをつければ、ケーブルのジョイント部を保護したり配管と配管を接続するためのジョイントボックスとしても使用できます。





スイッチボックス
↑1個用スイッチボックス

↑2個用スイッチボックス

↑3個用スイッチボックス


スイッチやコンセントに特化した位置ボックスです。
アウトレットボックスのようにジョイントボックスとしては使用できません。
樹脂製だと1個用-6個用まであります。
樹脂性と金属製があり、それぞれJISC8435JISC8340 で規格が定められています。 

メリットとしてはそのままスイッチやコンセントの取り付けが可能なことです。

例えば3個用のスイッチボックスを使用する場合は下の写真のような3個用の連用取付枠を使用します。
各枠に最大でスイッチやコンセントを3つずつ取り付けることができるので、3個用スイッチボックスは最大で9個のスイッチやコンセントが取付可能ということになります。


なお、1個用と2個用の取付枠はアウトレットボックスをスイッチやコンセントの位置ボックスとして使用する際にも使われます。むしろアウトレットボックスのサイズ的に2個用までが限界になり、3個用以上を使用したい場合は必然的に位置ボックスとしてスイッチボックスを使用する選択肢しかなくなるということです。

こう聞くとアウトレットボックスよりもスイッチボックスのほうが優れているように思われるかもですが、公共工事や大規模な施設の工事では、建築設備設計基準にて、位置ボックスは原則としてアウトレットボックスとするとの記載があるため、(隠蔽場所においては)あまりスイッチボックスは使われません。

しかし、公共建築工事標準仕様書では、スイッチボックスも使用できることになっていることと、JIS規格もしっかりとあるため、実際には公共工事であっても使用できます。隠蔽場所でスイッチボックスにて施工している現場も多数あります。

スイッチボックスとアウトレットボックスはどちらを使っても品質や性能は変わらないので施工者の判断で使いやすい方を使うのが良いと思います。 強いて言うなら、アウトレットボックスの場合はコンセントが1個用でも2個用でも同じサイズのボックスを使用するので、1個用のコンセントを使用する場合は、1個用のスイッチボックスを使用する場合に比べボックス内は広く使えるので、ケーブルを取り出しやすいのがメリットです。

また、壁に露出で設置するコンセントについては、アウトレットボックスではなく、スイッチボックスを使用します。



ちなみによく重宝される製品でスライドボックスというものがありますが、あれはメーカー独自のものなのでスイッチボックスとは呼びません。用途としてはスイッチボックスですが、ボックスに隙間が多く密閉されていない構造となっているためJISに適合ができず、あまり公共工事などでは使われない製品となっています。


簡単にまとめると壁埋め込みのスイッチ、コンセントの位置ボックスはアウトレットボックスが主流でスイッチボックスも使用可能。
露出スイッチ、露出コンセントの位置ボックスはスイッチボックスのみ使用可能と覚えておけば間違いないと思います。


また、これはよくある勘違いなのですが、コンセントボックスという名前のボックスは存在しません。コンセント用のボックスという意味なら、それはスイッチボックスかアウトレットボックスのことになります。コンセントボックスという名前の製品名があったとしても、それはJIS規格品ではなくメーカー独自に開発した商品である可能性が高いため、公共工事や大規模な現場ではあまり使用されません。





露出丸形ボックス
↑露出丸形ボックス

樹脂性と金属製があり、それぞれJISC8435、JISC8340 で規格が定められているボックスです。

先ほど、公共工事では、ジョイント部にはアウトレットボックスを使用すると言いましたが、配管が露出する場所には、アウトレットボックスではなく丸形露出ボックスを使用します。
 
つまり、天井裏や床下、壁内などの隠蔽場所でのジョイントはアウトレットボックス、建物内の壁や外壁、天井面などの露出場所には丸形ボックスという使い分けになります。


↑露出丸形ボックスの使用例


ジョイントボックス(狭義)

ジョイントボックスは標準仕様書では、アウトレットボックスなども含めたジョイント部に設置するボックスの総称ですが、内線規程では、ジョイントボックスとアウトレットボックスは用語として使い分けています。

先程も紹介しましたが、内線規程3165-2の記載は以下のようになってます。

「ケーブル相互の接続はキャビネット、アウトレットボックス又はジョイントボックスなどの内部で行うか、又は適当な接続箱を使用して行い、接続部分を露出させないこと

つまり、ジョイントボックスをジョイント部に使用するボックスの総称として使っているわけでなく、アウトレットボックスなどの他のジョイント部に使用するボックスとは用語として使い分けています。

しかし、上記で言っている内線規定上のジョイントボックスですが、実は定義が非常に曖昧です。JIS規格があったり、内線規程上で材質や厚みなどが定義されてるわけではなく、単に内線規程の資料3-1-3「ビニル外装ケーブル接続図」に説明図の記載があるのみとなっています。

そのため、各メーカーから「内線規定に適合しているジョイントボックスですよ」と様々な製品が発売されています。
つまり、内線規定には適合してるけど、JIS規格品ではないジョイントボックスが多数発売されています。
やはり、これらも公共工事で採用される例は非常に少なく、また標準仕様書にも記載がありません。
しかし、内線規程では認められていることもあり、民間工事では多用されます。
↑端子器具を有しないジョイントボックス

↑探査器具を有しないジョイントボックス

ジョイントボックスの中でも、「屋内配線用ジョイントボックス(VVF用)」という一部JIS規格に適合するものもあるのですが、それは後述します。

いずれにせよ内線規程におけるジョイントボックスはJIS規格品のことだけではなく、説明図に適合してるものなら全てジョイントボックスということになります。



適当な接続箱

これは、内線規程では、3165-2に記載があります。
しかし、具体的にどのようなボックスなのかの記載は内線規定に一切ありません。
なので、ある意味メーカーも制限がないため開発がしやすく、様々な製品が発売されています。

いちばん有名な製品はナイスハットです。
ナイスハットはジョイントボックスとして知られていますが、実はメーカーのHPには、適当な接続箱として記載されています。
内線規程の説明図から判断するに、ナイスハットはジョイントボックスと言っても問題なさそうですが、適当な接続箱については定義がないため、適当な接続箱と言っても間違いではないでしょう。


屋内配線用ジョイントボックス

JISC8365 で規定されているVVFケーブル用のジョイントボックスです。

アウトレットボックスとは違い配管と配管のジョイントには使用できません。
内線規程上のジョイントボックスに含まれますが、内線規程におけるジョイントボックスは上記のJIS規格品以外のものも対象となります。
JIS規格品ではあるのですが、公共工事においては、ケーブルのジョイント部に使用するボックスはアウトレットボックスがメインになるためあまり使用されません。また標準仕様書においても、標準的な施工としては記載されておりません。


コンクリートボックス

コンクリート内に埋め込んで使用するBOXです。
写真を見てもらうと分かる通り固定用のツメがあります。
樹脂製と金属製がありそれぞれ樹脂性と金属製があり、それぞれJISC8435JISC8340に記載されています。
樹脂製の場合、四角コンクリートボックスと八角コンクリートボックスがあります。
見た目や用途はアウトレットボックスと同じですが、コンクリートに埋め込む場合はコンクリートボックスにする必要があります。



プルボックス
↑国交省仕様のプルボックス


プルボックスの定義は、内線規程によると以下のようになっています。

「通線を用意にするため配管の途中に設けるボックスをいい、大型のものは特別に製作されるが、小型のものは普通のアウトレットボックスで代用されることがある。」

JIS規格のボックス(アウトレットボックス、スイッチボックスなど)は規格品なのでサイズがある程度限定されてしまいます。
なので、配管の本数が多かったり太い配管がきたりする場所などでの使用はできません。
そのため、JIS規格品では対応できないサイズのボックスを使いたいときに、プルボックスを使用します。

プルボックスはJIS規格がないことから、メーカーより様々な商品が発売されています。寸法や品質も様々です。

JIS規格はありませんが、代わりに標準仕様書の1.2.6にて、簡単ではありますが、プルボックスの仕様が定められており、その仕様に適合したボックスは国土交通省仕様や公共建築工事仕様などとして販売されています。
そのため、国土交通省仕様や公共建築工事仕様と記載のあるプルボックスなら、公共工事でも使うことができます。
選定の仕方としては、位置ボックス及びジョイントボックスとしては、アウトレットボックス、スイッチボックス、露出丸形ボックスを優先的に使用し、その寸法では対応できない場合に様々な寸法に対応できるプルボックスを使用するという形になります。

各ボックスの説明は以上になります。
最後にアウトレットボックスやスイッチボックスはJIS規格があると言いましたが、メーカーのカタログにアウトレットボックス、スイッチボックスと書いてあるからといって、それが絶対にJIS規格品であるとは限りません。単にメーカーのつけた製品名の場合もあります。カタログをよく見ると同じスイッチボックスでもJIS規格品の場合、その旨が記載されてるので、カタログをよく確認すると良いと思います。


以上になります。






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