
米国の苦悩(その2)
例えば、製造業の中でも衰退が著しいと言われてきた自動車
産業についていえば、米国での乗用車販売台数は335万台余
である(2023年)。
ところが、そのシェアを見ると、日本のメーカー上位4社(トヨタ、
ホンダ、日産、スバル)の合計で、ほぼ50%を占めるのに対し、
米国のメーカー上位4社(GM、テスラ、ステランシス(合弁)、
フォード)の合計が20%少々にしかならない。
他の大部分をドイツと韓国が占めている有様だ。
これでは米国が危機感を持つのも分かるってもんだ。

因みに、日本国内での外車販売シェアはドイツが席巻しており、
米国産の車は僅少となっている。
車が魅力的なら売れるはずというのはその通りで、努力不足は
あるけれど、トラジイの言うが如く、日本は米国で大量の車を
売ってるのに、日本ではほとんど締め出されているという風に
見えなくはない訳だ。

製造業の雄たる造船業に至ってはこの傾向がさらに顕著だ。
世界の船舶の製造シェアのうち45%を中国が占めている。
そして次が韓国で29%、次が日本で17%となっている。
米国は僅かに0.1%で、グラフには現れない少なさだ。

船を作るどころか、維持修理すらもままならない状況で、戦艦や
空母のメンテナンスにも苦労する有様だ。
単に製造業という問題だけではなく、安全保障上の問題にも
なっている訳だ。
自動車や船の原材料である鉄鋼についても同様な傾向が
見られる。
世界の粗鋼生産量のうち、政府の保護のもとに安価な鉄を
大量に生産する中国が半分以上を占める。
残りをインド、日本、韓国などがシェアし、米国も数%のシェアを
占める。
大手鉄鋼会社は多くが中国資本で、かろうじて、インド、日本、
韓国が食い込んでいるような状況。

米国はその政策として、製造業は他国に委ね、GAFAMに代表
されるハイテク産業、航空機、半導体やIT産業、金融業などに
注力してきた訳で、その結果として産業構造が変化してきた訳だ。
これらの企業がグローバル化し、税金が他に流れるという大きな
問題もある。
何を今更ってな気もしないではないが、国の根幹を支え、
安全保障を担うような産業や、製造業が急速に衰退し、雇用が
失われるに至って、これはマズい、自由貿易に頼り過ぎると
持続性が損なわれると、強く感じ始めたということのようだ。
とは言え、失われた産業は急に取り戻すことは非常に困難な
仕事となる。
インフラやサプライチェーンが失われ、製造ノーハウも散逸して
しまってるからね。
増してや、高関税による保護主義では産業基盤を回復するのに
時間が掛かり過ぎるだろう。
その間に、製品の品薄や高価格に悩まされるのは自国民に
他ならないし、経済活動は圧迫されるし、他方では、輸出の
差し止めを喰らう他国では深刻な経済低迷に見舞われる。
ここは、少し時間をかけて、対外債務をどう正常化してゆくべき
なのか、その間の対策はどうするのか、産業基盤の復活を
どう進めるべきなのか等、他国との深い話し合いが必要だと
思う。
性急な保護主義だけでは何の解決にもならず、経済の混乱と
米国離れや米国不信が拡大するだけの結果となろう。
その点でも、2国間交渉は大きな意味があるし、米国の意図を
汲んだ対応策を真剣に考え、話し合う良い機会なんだろう。
最後に、では日本が出来る対応はどんなものがあるのかを
考えてみたい。
その3に続く。
