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 保護者参観授業で、僕が今までで一番うまくいったと思えるものは、最初の5分間だけ僕が仕切って、あとはすべて子どもたちがリーダー中心に進めていった授業。

 僕はあとの時間何をしていたかというと、親御さんとずっとダベっていました(話題の中心はもちろん、子どもたちの日頃のがんばりだけどね)

 えっ、楽をしてずるいって? いやいや、楽をしてこんな授業ができるわけはないのです。

 今回は合唱コンクールづくりについて。

 

 “生徒の手による”合唱コンって、“教師が楽ができる”わけではない。それどころか、子どもたちが“自ら”創り出すためには、リーダーの育成を中心に、授業外での指導が山とある。

 

 今回は、音楽教師としてがんばっていた全盛期の頃の手立てを書き出そうと思います。若い先生方の参考になればうれしいな。

 

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 まずは全体にかかわるもの。
① 音取りだけしか指導せずに本番へ持ち込まない。時間数が少ないので計画的に、音取りをしてからの「曲づくり」が音楽教師の腕の見せ所。
② 担任教師へまかせすぎない。担任の先生の中には、合唱コンにのめりこんでくれる青春教師がいる。とてもありがたいことだが、あくまでも音楽的なことは授業で音楽教師が創り上げるんだという自負心をもって。
③ 個人指導で音が取れない者をなくす。授業の中では、日ごろからアカペラ授業や一人歌いを当たり前にしていき、歌う抵抗感をなくす。
④ 明るい学年経営、学級経営。これは音楽教師だけではどうしようもないが、いい合唱創りには不可欠。母体となる集団がよくなければいい合唱は生まれない。
⑤ 選曲で半分以上が決まる。安易にポップス系に走らず、いかに成長に合わせた曲を教師が準備しておくか、またそれぞれのクラスに合った曲をその中からクラスごとに選曲させるかがキーポイント(クラスで選ばせる際にこちらが意図した曲=そのクラスにあった曲になるようにコントロールする話術も大切!)

 

リーダーの指導

 次は一番大切なリーダー指導。この手立てがすべてを決めます。

 ・合唱コンの全てを牛耳る実行委員にはクラス練習での指導法など、常に高度な要求をして意識を高める。これにより、来年の実行委員も必ずピカピカの者が立候補してくるはず。

 ・パートリーダーを放課などを使って一学期から育てる。
 ・チェンバーコーラスを組織し、その指導によって各クラスのボイスリーダーを育てる。
 ・指揮・伴奏者にも高度な要求をしていく。例えば、テンポをゆらしたり、分割振りをしたり、抑揚をつけたり、各パートの出だしを指示したり、等のテクニックを、チェンバーの指揮などで教師がふんだんに使って見せる。
 ・吹奏楽部にも日頃から音楽への熱い想いを語り続け育てる。これにより必ず合唱コンに大きく貢献する者が育つ。


練習CDの作成
 ・授業のパートCDを工夫する。必ず[声+メロディ音+伴奏]を入れ、これにより音程だけではなく、声の勢いや抑揚も同時に学ばせる。また、それらのダビングを奨励し、音楽室にダビング機を常備、もしくは家に持って帰れるよう貸し出し用CDを何枚か準備しておく。
 ・クラス練習用に伴奏CDと合唱入りCDを配布。


生徒ののせ方
 ・授業でいろいろな曲想を紹介したり、記録ビデオにより同じ中学生が歌ういい合唱を見せたり、他クラスの話題を効果的に話したりして、意識の高揚を図る。
 ・課題曲に男女一人ずつのソロを入れる(生徒に投票させて決めさせる)
 ・合唱コンだよりを一ヶ月前から一週間ごとに発行し、気持ちをのせていく。優秀な実行委員だと、それを真似てクラス合唱新聞をつくるところも出てくる。それらは即、他クラスへ紹介していく。
 ・音楽室を全クラスが利用できるよう、学活時や帰りの会などの利用時間の調整を行なう。
 ・デジタルピアノを学年の廊下に置き、伴奏者が通りすがりに弾けるようにしたり、各クラスへの貸し出しも行なう。
 ・リーダーには時々他クラスを覗きに行かせ、また合同練習を奨励して互いに学ばせ競わせる。
 ・並び方や入場を工夫させ、クラスの特長を出させる(並び方は誰の右後ろに誰というところまでこだわらせる)


担任ののせ方
 ・担任用の楽譜など、全て生徒の手により製本させ渡す等、教師から何かを依頼するのでなく全て実行委員を通して担任を動かすようにする。


本番の運営
 ・本番の司会や運営は全て生徒の手に任せる(ビデオ撮影までも)。事前に司会の話す言葉をすべてチェックし、読み上げる人の名前に間違いがないかも確認する(教師は本番時、審査員席を離れず何もしない…というところまで司会・運営を育てておく)
 ・審査員は各クラス2名の生徒(実行委員と伴奏者を基本)と学年担当教師で行なう(多少音楽的な評価と食い違う場合も出るがそれが学校現場での合唱コンの逆にいいところだと思っている)
 ・審査発表は、司会の声のトーンを変えさせたりCDを使うなどして、よりドラマチックに盛り上げる(もちろんこの時も音楽教師は舞台裏に行かず、すべて生徒に任せる)

 

コンクール後の取り組み
 ・合唱コンや文化祭のビデオを関係者にダビングしてやり、その他の生徒にも貸し出しを行なう。これは保護者に学校教育・音楽教育を理解してもらう一助にもなる。

 これらの取り組みにより、体育大会が終わると実行委員が動き出し、中間テストが終わると同時にクラス練習が白熱し始める。二週間前くらいになると、日曜日に学校に来て練習するクラスがいたり、放課にグループで歌う姿を見かける。また実行委員が中心になって音取りの苦手な子やそのクラスの弱点パートをアカペラで教え合う姿も見えはじめる。

 

 音楽教師の皆さん、コロナに負けず、子どもたちの今しかできないピュアであつーい表現力を最大限に引き出してやってくださいね。