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 僕は、演奏舞台を鑑賞するのは、実は“苦手”である。

 すぐ眠くなってしまう。 “退屈”だからだ。

 合唱はおもしろいのに、吹奏楽や金管バンドは“つまらない”のだ。

 

 音楽教師なのに、吹奏楽部顧問を長くやっていたのに、コンクールで優勝し、選抜まで勝ち取り、上の大会へも何度も出場していたこともあるのに、「子どもの演奏が眠い」なんて口が裂けても言えない言葉だった。

 

 なぜ退屈なのか? 実は、理由はわかっている。

 

①当たり前だけど、中学生や小学生は、演奏はプロよりもちろん下手だ。下手なのにただ「まね」をしてるだけなのが退屈。

 合唱では、子どもの声は大人とは違い明らかにそれ自体が魅力だが、演奏の音は当たり前だが劣る。

②合唱は楽譜を見ないのに、吹奏楽や金管の舞台では楽譜を見てる。これも退屈。

③あくまで楽譜の「再生」で、舞台は「静止画像」を見続けているよう。これが退屈。

④時には「ソロ」演奏で一人だけで吹く場面もあったりしても、別にテクニカルでもない普通のフレーズをただ一人で吹くだけ。これも退屈。

 

 

 上記のような理由で、実は最初は吹奏楽部顧問はやりたくなかった。実際、新任の時には「吹奏楽部だけはやりたくない」と申し出たくらい。

 でも、5年目、日本人学校へ派遣された時は立場上やらないわけにはいかなく、最初は仕方なく引き受けた。

 しかし、子どもたちと向き合う中で、子どもたちの魅力=子どもたちしか持ってない魅力を、どう舞台で引き出すかを考え、それが達成できたとき、この上もない「感動」~プロの演奏では味わえないもの~を生み出せることを実感した。

 

 30歳で帰国してからは、吹奏楽部顧問を自ら希望し、この舞台づくりに励んだ。

 まずは夏のコンクールで賞に入らないといけない。演奏のへたさは舞台の魅力を半減するからだ。

(世の顧問の方たちは、コンクールを部活の目標とする。でも僕は、コンクールで“勝つ”のはその後の文化祭や予餞会の舞台を盛り上げるためのトレーニングの一つに過ぎない~くらいの気持ちを持っていた。) 

 そして、文化祭が迫ってくると、延刻届けを出し、毎日夜の8時9時まで子どもたちと共に練習を繰り返した。音づくりと共に「舞台づくり」もだ。この練習形態自体が、実は子どもの心を盛り上げ育てるためにもなるのだ。

 

◆僕が求めてきた「舞台づくり」とは・・・

 先にも書いたが、僕は基本的に演奏舞台が好きじゃない。裏を返せば「僕のような人間」をも虜にする舞台を考えればいいわけだ。

 特に文化祭では一般生徒が相手だ。吹奏楽や音楽を好きじゃない子たちもいっぱい混じっているのに普通に演奏だけなんて、観客を無視した失礼な行為だとさえ思う

 

 子どもって、大人にはない「真剣さ」「ひたむきさ」、そこに「可愛さ」が合わさって、大きな魅力となる。それを舞台に引っ張り出してやるのだ。

 プロは楽譜を見て演奏するのが当たり前。指揮者を直視するプロっていない。しかし、中学生はコツコツ時間をかけて練習する中で楽譜は暗記してしまう。だから本番は指揮者を見れる。プロと違って、指揮者に絶対の信頼をおくわけだ。そこにプロにはない教師と子どもの阿吽の呼吸ができる。と共に、その真剣な子どもの“眼”が、まず舞台の大きな魅力の源となる

 余談だが、僕は練習の中でこんなトレーニングをする。指揮の最中にテンポを時々大きくずらしてやるのだ。むちゃ速くしたりむちゃ遅くしたりと。これって、指揮者に絶対の信頼を置いていないと実はついて来れない。ついて来れない者は、残念ながら僕とコミュニケーションをとっていない子だ。それを学ばせるのにこれはとても効果的な方法だ。
 

僕の舞台づくりのコンセプトは・・・

“驚きと笑い”、そして“共感”から“感動”へ

 その具体的なノウハウを、以下、箇条書きで。

 ❶ソロを入れる;もちろんすごくいい音色かテクニカルな技を披露
 ❷アンサンブルを入れる
 ❸切れのいいスタンドプレー

 ❹体育館の左右の2階踊り場で一部ソロ;観客の視点を変える
 ❺観客席から登場or観客席に降りる;(同上効果)
 ❻振付をする;演奏と共に

 ❼踊りを入れる;場合によっては運動部の男子を引っ張り込んだりしてコミカルに

 ❽小物使用;リボンや帽子、ディズニーの小物など

 ❾寸劇挿入;演奏に合わせて劇が進行
 ❿ドラムスの効果的使用;やんちゃ生徒を引き付けるのに最適

 ⓫変わった楽器使用;シンセ系/エレキ系/大型打楽器/手作り打楽器など
 ⓬合唱や掛け声の挿入
 ⓭アカペラ;これは合唱舞台の場合
 ⓮魅力あるMC;場合によっては2~3人での漫才風なんてのも

 ⓯先生も演奏に加わる;やりすぎは逆効果となるので要注意

 

 これらを組み合わせることで、子どもの魅力を最大限に生かした舞台をつくり、観客に喜んでもらい、結果的に子どもたちに達成感を味わわせていきたい。

 僕ら教師は、演奏する際の観客は好きで集まっている子ばかりじゃない、ということを念頭に置き、「いかに観客を楽しませるか」を考えて舞台づくりをすることこそが、演技者である子どもたちをも自然と鍛え育てていくことにつながるんじゃないかな。