先日、ある先生が「縦割り清掃のリーダーを5年生に変更したら、またおしゃべりが多くなった」といっていた。<6年生が卒業する前にリーダー養成のために5年生にリーダーを引き継がせる>という手だてはすばらしいですね。
でも担当の先生から出されたこの“表(おもて)手だて”だけでは、もちろんうまくいくわけがありません。できる先生方は、これをするにあたって、いちいち口には出さないけど多くの“隠れ手だて”を行っているのです。
例えば、
<5年生をリーダーにする理由と6年生が引退することを全員に意識付けする時間をとる>
<5年生だけを呼んで話をする>
<6年生をフリーにして5年生のリーダーの顧問とするなど指導側にまわす>
<リーダー交代をせず、5年生をフリーにして6年生のリーダーのやり方を見て学ぶようにさせる>
<5年生と6年生で話をする時間を別にとる>等々・・・。
これらを一つもせずに、「はい、今日からリーダー交代です。」なんて乱暴な表手だてだけの人はいないと思いますが、若手の先生方は、こういう隠れ手だてを豊富にもってる先輩から学んだり盗んだりしていかないと、いつの間にか隠れ手だてをもたない中堅になっちゃいます。
さて、今回の本題、「スピーチ」の隠れ手だての紹介です。
クラス作りやかかわり合いの活発化の手だてとして「スピーチ」が有効であることは周知の事実であり、多くの学校が、小中学校かかわらず<スピーチをする>という表手だてをとってます。
ただ、その手だてをとったから子どもが変わるかというとそうではないですよね。スピーチという表手だてをとっても、実際にはうまくいかないことがほとんど。
短く内容のないつまらないスピーチ、それどころか、ほかっておくと、もはやスピーチとも言えないくらいのものになってしまうクラスも…。
つまり、その表手だてを活かすためには、“隠れ手だて”が必要なのです。
以下に、いくつかの隠れ手だてを紹介します。
◆話す側の指導・訓練
① まずは甘えさせないこと。1分間に満たないものは、やれるまで待ったり次回やり直しなど、最初はルール作りのために厳しく指導する。話が早く終わった場合は時計を止め、必ず一分間話すことをしつける。はじめにこれをきちんとしておかないと、いい加減なスピーチ習慣がついてしまう。
② つまらないもの(考えてこずその場で適当に話しているもの)には、はっきりと「つまらない」と言って意識付けする。
③ 話し下手な子には、前もって紙に書かせたり、話題提供やリハーサルを一緒に行ったりする。人によっては書いたものを読んでいいことにする。苦手な子は“自信がない”からなので、書いたものに朱を入れ、内容をあらかじめ認めておいてやる。
④ 時には、テーマを決めて話させる。話す観点がはっきりとし、話題が拡がりやすい。
「家族」「趣味」「行事」「旅行」「自分の癖」「最近の新聞記事から」「ペット」「病気・けが・災難(いやな思い出)」等々
⑤ 小道具の使用を認める。これにより話に具体性が帯び、話す側も聞く側も話題が身近になる。高価なものは預かるなどの配慮も必要。旅行の記念物、思い出やペットの写真(これはあらかじめ拡大を)、賞状、新聞記事、けん玉やコマなど(実技披露)。これをすると、話す側がより楽しみになる。
◆聞く側の指導・訓練
① 話し手を見る。姿勢や視線を意識させる。これがすべての学習の基本づくりとなる。終わったら拍手も徹底。
② 終わったあとに、その話題に対しての質問を1~2受け付ける。ただし、イエスノーで答えられるものはだめ。
③ 質問者の意見や思い出も述べつつ質問を出すというルールにすると、質問の質が高くなる。
④ 高尚なテーマについてのスピーチ週間などでは、書記を決め黒板に出させ、主要な点を板書させる。
聞き手がうまくなってくると、うなずく子が出てくるし笑いも起こる。何よりスピーチする子が生き生きしてくる。日頃しゃべらない子も、こういうところで人気者になったりもする。
子どもたちが、自分の番を心待ちにし始め、友だちの発表を楽しみにし始めたらしめたもの。集団が活性化してきた証拠。あとは放っておいてもうまくいきます。すでにクラスづくりは成功しているのです。