ヒューマンエイジ 第3集「食の欲望 80億人の未来は」NHK6/16放送 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

ヒューマンエイジ 人間の時代
第3集・食の欲望 80億人の未来は NHK6/16放送
レビュー一覧

 2022 「プロローグ」

 2023 第1集「人新世 地球を飲み込む欲望」

 2023 第2集「戦争 なぜ殺し合うのか」


感想
前回の第2集が1年近く前だから、ホント息の長いシリーズ。
今回のテーマは「食」自分自身はあまり食べることに執着する方ではない。「体重が増えるから、食べるのは控える」が可能。
それは多分若い時に「慢性腎炎」と言われて塩分制限をずっと行った経験から「うまいものには落とし穴があある」という刷り込みが出来ているのだろう。「一病息災」だな。
蟻の構成物質からヒトの食生活が分かるとは・・・
穀物を作るために生態系が壊されて行くのも切ない話。
植物として育つからいいじゃないか、という話とは違う。
そういえば先日の「プラネットアース」でも、アマゾンに作ったユーカリの森では、原産の動物は生きられないと言っていた。

トウモロコシと大豆からほとんどの食材が作れるのも凄いが、こうした食生活が、一体人間にどういう影響を与えて行くのか。
 

次回は本日 6/23(日) 第4集 「性の欲望」

内容
今日も、80億の人間が食べている・・・
その食への欲求は、時に切実 時に享楽的 時に暴力的。


自分たち自身のことを何も知らない 人間
この先にあるのは 更なる跳躍か 破滅か
希望の鍵を探して 壮大な知の冒険に 出掛けよう

ナビゲーター 鈴木亮平
ジャンクな食べ物が大好き。100年前そんな食べ物はなかった。
自分たちの食べ物が、短期間にどう変わったか。
もう一人のナビゲーター 久保田祐佳は別人格で参加。

アメリカ マイアミに住むスティーブ・プロトニッキ

食への欲望と共に生きる。事業の成功者。巨万の富を築く。
世界中の貴重な料理を食べる事に情熱を注ぐ。訪れたレストランは2000軒超。料理だけで年間600万円費やす。


世界の富豪達と、食だけを目的に旅をするフーディー(Foodie)
イタリア北部のブルーニコを訪れ、この土地でしか取れない食材の料理を味わう(三つ星:5万円コース)

日本に約5万軒あるコンビニには常時3000種の商品と、毎週100種以上の新商品が投入されている。
ジュース、肉が消えた。同じ白い粉になって。
ある同じ成分が高い割合で入っている。その異変を教える「
ロブ・ダン ノースカロライナ州立大学 生態学者
21種の蟻から人間の食の真実を掴んだ。蟻は人の食を映す鏡。

生活圏は直径15mほど。体の殆どはトウモロコシ由来の炭素。


本来多様な食べ物があったが、この100年で人間は限られた作物に頼るようになった。
コンビニの麺類、ドーナツ、アイスクリーム・・・
その答えがブラジルの工場にあった。年間トラック2.5万台分のトウモロコシが24H体制で加工されている。
皮、繊維を除去し酵素、酸等を加えて「異性化液糖」を作る。


食を支える糖分の源。溶け易く、低温でも甘味確保。
ここからデンプンのみを抽出し分子処理→「加工デンプン」
腰のあるおいしい麺、長期保存のきくケーキ。
「劣化しにくく、保水力が高い」→食の単一化

人間は80億人を支えるために「食の単一化」によって食料を生み出す技術を発展させてきた。
トウモロコシの胚乳から糖(でんぷん)、胚芽からは油を抽出。


ハンバーガーセットのうち牛肉パテ50%、チキンナゲット40%、ミルクシェイク80%がトウモロコシ由来だという。


久保田の顔もトウモロコシ粒子の集まり。


家畜のエサも穀物に依存。最近はサーモンの養殖も大豆に頼っている。人間は1万種を超える植物からカロリーを得ていると言われているが、今やトウモロコシと大豆に深く依存している。

食の単一化が引き起こす問題
南米ブラジルの草原「セラード」(日本5個分の広さ)に広がる大豆の耕作地。

ブラジルの大豆年間生産量は1.5億万トン。世界消費の4割を担う。元々セラードは強酸性の土壌(農業に不適)
食料事情により土壌改良が始まる。今も続く開発。
宇宙からセラードの様子を監視。緑が農地(1970→2023)


僅か50年ほどでセラードの半分が切り拓かれた。
進む環境破壊。スピードアップしている。
セラード本来の役割りを想像すらしていなかった人間。
実は、アマゾンの熱帯雨林が生み出す雨を大地に取り込む、貴重な水源地だった。3000種以上の動物が生息する生物多様性の宝庫だった。アマゾンと並び、地球という星を守る「要の場所」
この20年でセラードの川の水量は14%減少。

セラードが失われたら膨大な生物種が失われ、土地の保水力が落ち、砂漠化が進む。

農地の拡大はブラジルに限った事ではない。1700年頃の農地は世界の土地全体の5%程度。300年で8倍に増加。

 

トウモロコシ、大豆の大規模栽培で、地球の陸の4割が農地に替わった。

長谷川知子 立命館大学 環境シミュレーション工学

農地拡大の陰で生物多様性が失われている。対策は土地の保護。耕作放棄地を森林に戻す。自然保護区の拡大。

 

急速に進んだ食の単一化の引き金は「第二次世界大戦」
遠方の戦地に対しての保存食開発(麦、カカオ等から)
その象徴が「Dレーション」(チョコレートバー)


1本で1日に必要なエネルギーの1/3を賄う。2.5億万本生産。
1950年以降、アメリカ軍は経済的にも高効率の食品を求める。
レトルト加工技術、軽量でゴミ処理も楽→民間にも進展。
当時の人口爆発を相まって全世界に広がる(食料支援にも利用)藤原辰史 京都大学 農業史研究

食の単一化が、食への意識を変えて行く。
それまでの農業は中小規模(食が身近だった)自給圏の中。
アメリカからの食料輸出をきっかけに、食べ物と自分との距離が離れて行った。食の分業化が進み、食べ物への感覚が失われる。

人間自身への影響も出始めている。
メキシコ。かつての伝統的料理→10年で様変わり。
人気のストリートフード「ドリロコス」コーンスナックにジュース、チリパウダー、チリソース等を流し入れて食べる。


警戒を強めるメキシコ政府。

パッケージへの警告表示(子供に勧めない)

メキシコでは6~11歳の3人に1人が肥満。それが成人すると2人に1人が糖尿病になる。学校でも食の指導を行う。
肥満に悩む少女ノエミ。150cm、80kg。

家庭での食に問題がある。

加工食品は安価で安定しているが、野菜などは高価で買えず。
社会の格差により、加工食品しか食べられない者が出る。

超加工商品」というものがある。
作物を高度に精製して糖、脂肪を添加し保存性を高める。
カップ麺、菓子パン、シリアル等、現代社会に欠かせない。
佐々木敏 東京大学 栄養疫学、予防医学

超加工商品は、世界中の人の健康に大きな影響を与えている。
超加工食品の摂取比を8%42%のグループに分け追跡調査。

糖尿病発1.84倍、心筋梗塞1.2倍、脳卒中1.24倍の発症リスク。

過体重・肥満15%増。

理由:食物繊維が抜かれる。
結果論的に炭水化物、脂質の摂り過ぎになる。
人類の歴史としては飢餓が怖かった。脳は糖質・脂質を求める。
豊富な食に対するストッパーを持っていない(本能として)
技術だけが先に行ってしまった。今さら手放せない。

持続可能な食とは何か。一人のシェフ。
ペルー アンデス高地に住むヴィルヒリオ・マルティネス
昨年、世界のレストラン・ランキング1位となった。


理由は、料理に留まらない活動。

伝統的農法で作物を作り、種の保存にも尽力する。

作物を守り、世界に知らせる。


1人の人物との出会い。「クレトは私にとって大切な存在」
先祖代々の知恵を全て持っている。アンデスの調和を体現。
クレト・クシパウカル(58)人間も生態系の一部と考える。


ソラマメの根に付いた微生物が窒素を固定し、肥料にする。

トウモロコシとソラマメを近接して育てる事で補い合う。
雨季に減収となっても他からの食料調達は不要。保存法確立。
チューニョというジャガイモの保存食は、丁寧に保存すれば20年はもつという。

技術の発展は、我々にとって大切な事ではない。
重要なのは自然と共に生きること。動植物と共に暮らす。
食の単一化から離れ、世界規模の食料システムに抗う事は可能。

鈴木の想い
このシリーズでいつも思うが「人間の欲とどう付き合うか」


日本が行っている「提携運動」が参考になる(都市の消費者が集団購入で有機農家を直接支える)丸ごと引き受け農業を育てる。
80億の人口を養うには、作物の生産効率を上げ、世界に分配するシステムが必須。
穀物と豆が揃うと、いろんな栄養素育つ。

今までのものに、未来のために役立つものがある筈。
捨てて来た技術から学び直す。僕たちに残された可能性。