ファウンデーションの誕生(銀河帝国興亡史⑦) 発表:1993年 アイザック・アシモフ | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

シリーズ全体(⑥、⑦は①の前日譚)

ファウンデーション
ファウンデーション対帝国
第二ファウンデーション

ファウンデーションの彼方へ

ファウンデーションと地球

ファウンデーションへの序曲

ファウンデーションの誕生

 

 

前作「ファウンデーションへの序曲」超あらすじ
未来を数学的に予言出来ると言った三十二歳のハリ・セルダン。

それに興味を持つ銀河帝国の皇帝。
皇帝との謁見の後、チェッター・ヒューミンの手引きでストリーリング大学に行き、ドース・ヴェナビリという女性に引き合わされるセルダン。
その後、過去の歴史を求めてマイコゲン地区に行き「ロボット」に関して情報を得る。
次には帝国の目を逃れダール地区に。

そこで後に深い縁となるレイチ、ユーゴ・アマリルとの出会い。
レイチの機転で危機を救われ、次には反帝国国家ワイへ行く。

ワイのクーデターが途中で失敗し、その主導をしたのがヒューミン。

彼の正体は帝国の宰相デマーゼル。そして彼の本当の正体はロボット-ダニール・オリヴォー。セルダンの進める心理歴史学の支持者。
数々の経験の中で、心理歴史学実用化のために、トランターの歴史に絞って構築する事を覚ったセルダン。ここから本格的な研究が始まる。

 

ハードカバー表紙

 

文庫版表紙

 

本編超あらすじ
第一部 エトー・デマーゼル

ラスキン・ジョラナムという政治活動家による危機。レイチを敵方に潜入させて首相デマーゼルがロボットだという事を信じ込ませる。

ジョラナムによる大々的な弾劾報道により、一時デマーゼル排斥の動きになるが、会見で真の笑顔を見せてそれを払拭。

だがその混乱の責任を取ってデマーゼルは辞任。
セルダンが次期首相に任命されるが、それは全てデマーゼル/ダニールの目論見によるもの。
第二部 クレオン一世
ジョラナムのナンバー・ツーだった、ナマーティによる危機。

トランター内の基盤設備を故障させて市民の不満増幅を狙う。

ここでもレイチが敵方に潜入するが、取り込まれてセルダンの暗殺者に仕立てられる。
危ないところでセルダンを救ったのが、敵方に潜入していた保安官のマネルラ。皇帝のクレオン一世がアクシデントにより射殺される。
第三部 ドース・ヴェナビリ
マネルラはレイチの妻となり娘ワンダが生まれる。

八歳のワンダが見る、セルダンが死ぬ夢。首相となって十年のセルダンは六十歳。共同研究者のユーゴ・アマリル四十九歳。

派手に行われたセルダンの誕生祝賀会。
セルダン保護に過敏となるドースは、たびたび異常行動を起こす。
未来予測機器のプライム・レイディアント。その機能アップツールである電子浄化器を、若手のタムワイル・エラールが開発。

それがセルダンらを蝕んでいると突き止めてエラールを追及するドース。だがそれはドースにダメージを与えるものだった。エラールを殺したものの、機能停止するドース。そして暫定政権の崩壊。
第四部 ワンダ・セルダン
ワンダが十二歳の時、セルダンは彼女に他人の心を読む力がある事を知る。セルダン六十四歳。
セルダン六十六歳の時、アマリルが五十五歳で死ぬ。

ワンダの様な者を集めて第二ファウンデーションを作る構想を伝えるセルダン。それに感動して息を引き取るアマリル。
セルダン七十歳。図書館で見出したステッティン・パルヴァーという青年。ボディガードとして助けてもらううちに遭遇した傷害事件を機に、ワンダとの接触で彼にも能力がある事が判明。
二人の能力利用で図書館長を味方に付け、進む心理歴史学研究。
第一ファウンデーションのボディガードとしての、第二ファウンデーション(スターズ・エンド)構想が完成。

第五部 エピローグ
ハリ・セルダンの独白。ターミナス、スターズ・エンドへの稼働状況。八十一歳で生涯を閉じるセルダン。

 

感想
ハリ・セルダンが「心理歴史学」を、実用に漕ぎ着けるまでを描いたドラマの後編。そしてアシモフの遺作でもある。
亡くなったのが1992年なので、書き上げてから一年そこそこで亡くなったことになる。

さて本題。元々可能性の提示だけだった「心理歴史学」を、ロボットの第零原則の観点から、実用化のために手を差し伸べたロボット「ダニール・オリヴォー」の関与で、研究が軌道に乗り始めるのが前編までの話。

後編の前半は政府転覆分子との戦いであり、特に深い背景はないが、第三部では内部の敵タムワイル・エラールがドースと敵対する。

こいつの背景が判らない。ドースをロボットと知っていて電磁攻撃をかける。単に暫定政権と結託しただけの話?
第四部では、第二ファウンデーション員の原点である精神操作について語られる。核となった愛娘ワンダ。

あと付けとはいえ、第1巻の「ファウンデーション」ではほんの数ページしか語られなかったものが、大きく膨らんだ。
ただ「心理歴史学」が、どのように実用化に向けて整備されて行ったかのプロゼスはあまりキチンと描かれず、事件中心になっているのは、小説としての面白みはあるが、理詰めで追求したい向きには少し物足りないかも。

 

長く続けて来た「ファウンデーション」三昧は、一応これでおしまい(ちょっと寂しい)

 

 

 

あらすじ

第一部 エトー・デマーゼル
ハリ・セルダンの共同研究者ユーゴ・アマリル。ジョージョー・ジョラナムと言われる政治活動家の事を心配していた。これを放置すればデマーゼルが失脚し、心理歴史学の研究が頓挫する。
「君の警告は確かに聞いた」とセルダン。

仕事を終えての帰り道、学内の広場で演説を行っている者を見つけるセルダン。学生に聞くと「ナマーティ」という人物。例のジョージョーの支持者だという。無許可での集会とみなして壇上に上がり、止めさせようとするが、親衛隊の一人がセルダンに手を出した。

得意の護身術でその男を倒すと、セルダンはナマーティの首を締め上げ、解散を宣言させた。

 

大学での武勇伝は、家で待つドースに既に知られていた。
追い払った男はジョラナムの右腕。デマーゼルなら簡単に対処出来る、と言うセルダンにドースは、簡単に出来ることではないと言う。副作用が生じないようにしなければならず、精神操作は容易に使えない。

ジョージョーことラスキン・ジョラナムからの謁見依頼が来て、面会するセルダン。先方はナマーティと二人で来るため、こちらもレイチを同席させる。8年前ダール地区から連れて来て養子にし、現在二十歳。
セルダンの経歴を調べていたジョラナムは、彼の立場がデマーゼルの庇護によるものだと看破していた。

 

セルダンと話すレイチ。ジョラナムを危険だと言いつつ、彼の言う「全ての地区に平等な権利と機会を」というスローガンは自分の出身であるダールを助けるもの。一抹の不安を感じるセルダン。

ドースと話すセルダン。ジョラナムの出身はニシャヤ地区。

辺境で孤立し、見過ごされて来た地。
金を使ってニシャヤ地区を調べ、彼がこの地の出身でない事を確信した。彼の出身はマイコゲン。
彼の髪は完全無欠な感じがした。あれはかつら。

マイコゲンは劣等ではないが制限、差別が多く首相を目指す者の出身地としては不適当。

デマーゼル/ダニールとの話し合いの場を持つセルダン。

8年経っても彼の容姿には全く変化がない。
しばし家族の話をした後ジョラナムの話を始めるセルダン。

彼の事を既に知っていたダニール。
もし干渉した結果ジョラナムを滅ぼしても、それが帝国の滅亡に繋がるのなら何も出来ない。

セルダンはレイチに、ダール地区行きの打診をする。ジョラナムが、新たに自党員が増えた議会に出席する事が判り、彼への接触をレイチに頼んだ。引き受けるレイチ。そのアイデアにドースは反対。

ビリボトンの店でチンピラ相手にイザコザを起こすレイチ。

制服を着たジョラナム親衛隊という者。

この地域での治安維持を行っている。拘留されるレイチ。

 

首相デマーゼルと話すクレオン一世。帝位に就いて十八年。ジョラナムについて気にするが、強硬手段は無益だとなだめるデマーゼル。
セルダンがジョラナムの関係者を退治した話を知っている皇帝。

セルダンが何年か前に心理歴史学の話をしに来た事も覚えていた。

謁見を取り計れとの命令。

皇帝に謁見するセルダン。8年前以来の再会。

無礼講の誘いにも前回を考慮して用心する。
ジョラナムに対して何の行動も起こさないデマーゼルに不満の皇帝。心理歴史学がゲームに過ぎないという話を信じない。

セルダンの武勇伝も心理歴史学の賜物だと言った。

 

拘留されたレイチは、父セルダンやユーゴ・アマリルの名前を出し、ジョラナムとの面会を要求。
レイチに会いに来たジョラナム。ダール人として抑圧されて来て、ジョラナムを支持し助けたいとの申し出。

どの様に助ける?の問いに、実は首相のデマーゼルがロボットだという事を暴露した。ナマーティが即座に否定するが、ロボットの伝説を知っているジョラナムは先を続けさせた。歳を取らない、感情を表わさない、金属製に見える時がある。それはレイチとしての確信。
なぜそれを問題にするかとの問いにレイチは、帝国の運営をロボットなんかに握らせたくないと強調。興奮するジョラナム。

だが顔出しは出来ない、おやじに見つかったら大変、とレイチ。
権力を取った後の優遇をレイチに確約するジョラナム。

 

皇帝に呼び出されるデマーゼル。トランター全体にばら撒かれたホログラム。少年の姿で帝国の運営をロボットなんかに握られたくないと言っている。指さす先にデマーゼルの姿。
これを放置する事は出来ない、と皇帝。だが犯人を捕まえて処刑する事など出来ない。暴君、独裁者と思われる。

「セルダンと接触せよ」との命令。盗聴不可能なホットラインの設置。
セルダンと話す皇帝。

相変わらず心理歴史学が問題を解決してくれると信じている。
陛下が何もなさらぬ事が一番、とセルダン。

 

ジョラナムはその二日後、トランターを席巻一大作戦行動に出る。

ドースは、彼が短期間にトランターを支配すると心配した。
デマーゼルがロボットだという事がどうして知られたかを聞くドースに「レイチさ」と答えるセルダン。レイチは仕事を完全にやり遂げた。
ロボットに対する民衆の印象に対して、デマーゼルが笑うだけでいい。

デマーゼルが首相としての定例演説をホロビジョンで行っている。

事務的な報告が終わり、質疑となって「首相、あなたはロボットですか?」との質問。
少しの沈黙の後、声を上げて笑うデマーゼル。

豊かな笑いであり、それは聴衆にも広がった。

 

サンマスター14からのメッセージを受けた皇帝。

ジョラナムがマイコゲンからの離脱者であるか、との裏取りをセルダンがやっていた。それを証明する返事。
これでジョラナムの信用は地に落ちる。彼の処刑を口にする皇帝だが、それはお薦め出来ない、とセルダン。
処置をマイコゲン人に任せるという方法。厳格な民族であり、投獄され、終身労働の道。だがそれでも殉教者を作る恐れがある。
もう一つの道としてニシャヤへの追放も選択肢に入れる。

元々彼が出身地と偽っていた僻地。

見捨てられた地であり、復活の可能性はない。
セルダンを称賛する皇帝。

そしてデマーゼルの辞職を告げ、後継としてセルダンを指名した。

この結果はデマーゼルの示唆だった。

ロボット三原則に縛られて、危機への対応が苦しくなって来ていた。
今後の運営はレイチにも手伝わせればいい。

平等と社会正義の点ではジョラナムの思想も間違ってはいない。

そして今後は心理歴史学を信じている皇帝が協力してくれる。
人類の福祉のために働くことがたくさんある、と言って去って行くデマーゼル/ダニール。

 

第二部 クレオン一世
園丁(庭師)のマンデル・グルーバー。皇居庭園の園丁として三十年励んで来た。十年前、セルダンが就任した年に起きた暗殺未遂。

それを防いだのはドースだったが、グルーバーはその時熊手を持って駆け付けた。それ以来セルダンは庭園を歩く時は必ず彼に声をかけ、親しく話す間柄になっていた。
今、庭園長の交代時期を迎え、彼を後任にと考えているが、外の空気を吸える今の立場を望むグルーバー。
セルダンの首相就任により、彼と彼の心理歴史学を守るというドースの使命は、より困難になった。
ジョラナムは去年ニシャヤで死んだ。

その残党による皇帝暗殺を危惧するドース。

 

ワイ地区。反帝国と認知され、十八年前にはクーデターを帝国に鎮圧された歴史を持つ。そこで話すギャンボル・ナマーティ他数名のジョラナム党員。古参のカスパル・カスパロフ。
ナマーティは、ジョラナムの失敗分析から、都市部のインフラ機能を少しづつ故障させ、民に不便と不快を植え付けて行く方法を取った。

それが暴動の下地になる。
その方法に賛成しないカスパロフ。

去って行く彼を見送ってから、始末を部下に指示するナマーティ。

レイチ・セルダン。ダール地区でセルダンとドースに拾われてから十八年の三十歳。背は低く筋肉質。ダール人の証しの口髭。

親子二人での会話。ここ1、2年で起こっている設備故障の事。
分析によれば、これは故意に起こされたもので、多くの住民に影響が及ぶ様仕組まれている。
それに加えて最近ワイ地区で殺人があった。

被害者はカスパル・カスパロフ。古いジョラナム党員。
これらの出来事について犯人の「証拠」が欲しい。
潜入にあたって口髭を剃れという命令に抵抗するレイチだが、最終的に受け入れる。

庭に出た皇帝はグルーバーを呼び出す。首相からの言葉を伝え、親しく話をする。そして単刀直入に、君を庭園長に任命したと伝える。

あらゆる言葉で辞退するグルーバーにも耳を貸さない。
セルダンから、処刑その他何においても制限される身の皇帝にとって、その程度の人事権行使は唯一の気晴らし。

 

ワイの安ホテルに滞在するレイチ。ここは殺されたカスパロフが最後の数日泊まったところ。だが特に情報はない。

バーでマネルラという美しい女と知り合い、その繋がりで男が話しかけて来た。レイチの言った「ジョラナム主義」に興味を持っていた。
レイチは注意深く対応した。生まれは違うがダールで育ち、差別に対する不満は大きい。その上でのジョラナム支持。主義に対する質問。

皇帝制については否定していない。

首相のハリ・セルダンはどうも思わない(知らない)。
自分の信念のために進んで闘う気があるかと男に聞かれて肯定するが、ここに来たのは仕事を見つけるため。
名前を訊かれ「ブランチェット」と答える。男が証明書の様なカードをくれた。指定の行き先で見せれば仕事が見つかるという。

 

歩き回るナマーティを眺めている例の男:グレブ・アンドリン。
カスバロフを殺した事の批判を気にするナマーティ。
ナマーティが進める基盤施設の故障は、遅かれ早かれバレるが、ここからは次の段階。皇居の構内でトラブルを起こすため、現場に活動家が欲しいというナマーティに、皇帝が新しい庭園長を任命する件を話すアンドリン。それと同時に多くの園丁が入れ替わる。

そこを狙って同志を送り込める。
おあつらえ向きの男が見つかった、とアンドリン。見つけたのはマネルラ・ドゥバンカ。彼の友人。男の名はブランチェット。

マネルラとベッドで語らうレイチ(ブランチェット)。仕事をもらった事を話すと、相手の男-アンドリンにはただ紹介しただけ、と言った。

任務を忘れてもっと彼女に集中したいレイチ。

セルダンのところへレイチから遠回しのメッセージが届いた。グレブ・アンドリンとの接触。この名はノーマークだった。ワイ市長一族の一人。市長だったラシェルの甥。プレイボーイで、自らの力はないが監視されていた。ジョラナム主義を踏み台にして帝位回復の野望があるかも知れない。レイチが女と関わっていると聞いて眉をひそめるドース。

 

ナマーティとアンドリンとの会合。
ナマーティの前にブランチェットとして引き出されるレイチ。

彼には十年前に一回会っていた。

名前、出身、主義、勇気等次々に訊くナマーティ。
ブランチェットを帰し、アンドリンと話すナマーティ。

あの男がハリ・セルダンの養子、レイチである事を見抜いていた。

微笑し、それから声を出して笑うナマーティ。

 

レイチからの連絡が全く入らず心配のセルダン。
ある日の面会で、庭園長は自分の手には負えないと嘆くグルーバー。
話の中で新しい園丁が入る事を初めて知るセルダン。

交替要員になりたい者が何百人も待機している。
セルダンは、ここ数週間に到着する予定の新人園丁の詳細リストの提出をグルーバーに命令した。間に合ったか、既に手遅れか・・・・

 

ナマーティがアンドリンに話す今回の作戦。新任の園丁たちの群の中にブランチェットとアンドリンが紛れ込む。

秘密で持ち込むブラスター(手筈が決まっている)。
首相が新しい園丁の前に出て歓迎の挨拶をする。

その時にブランチェットがセルダンを撃ち、直後にアンドリンがブランチェットを撃つ。そしてアンドリンは脱出(手引きする者がいる)。

園丁志望者のグループの中に居るレイチ。アンドリンからブラスターを持たされて驚くレイチ。大義のためなら何でもすると言質を取られていたが、殺人までやるつもりはなかった。
拒否するレイチに「そうしろと命じるだけだ」とアンドリン。
「デスペランス」。違法薬品。精神安定剤を改良したもので、マインド・コントロールに利用される。食事に混ぜて処方されていた。ナマーティに最初から見破られていた。父親を殺すシナリオが組まれている。

 

拝謁の式典が始まり、十二人の園丁を前にグルーバーが一言挨拶。その後をセルダンが引き継いで前に出た。

レイチを見つけるが、彼は目を逸らしている。
激励の演説を続けるセルダン。レイチの後ろにアンドリンを見つけて驚くセルダン。
アンドリンが囁いて、レイチが胴着からブラスターを引き抜いた。

ブラスターを持ったまま動かないレイチ。その後ろでアンドリンの変形した死体が血の中に倒れていた。ブラスターを持つ女性の園丁、マネルラ・ドゥバンカ、保安官だと名乗った。
「息子はどうしてしまった?」の問いに「デスペランスだと思います」と言ってレイチからブラスターを取り上げるマネルラ。

皇帝のことを思い出して小宮殿に駆け込むセルダン。だがそこには皇帝のつぶれた死体。茫然と立っているグルーバー。

武器はアンドリンのものだった。
「庭園長になるのがどうしても嫌だったもんで」と崩れ折れるグルーバー。

 

第三部 ドース・ヴェナビリ
八歳の娘ワンダ。おじいちゃんは死ぬの?と母親マネルラに聞いて涙ぐむ。おじいちゃんというのはセルダン。
クレオン暗殺の一週間後。マネルラはセルダンとレイチの命を救ったが、いずれ出来る軍事政権の下では皇帝暗殺の一味とみなされて虐殺される運命。
解決策はセルダンの辞職。軍部との交渉で円満に軍事政権に移行出来れば、自分は研究に戻り、家族は守られる。

マネルラも公安を辞めさせその輪に入れるつもりだった。

事件直後、レイチは「デスペランス」の後遺症で最悪の状態。

そんな中でマネルラを求めた。ドースは彼女を認めない。

あの女がセルダンとレイチの命を救った事が許せない。

公安時代は情報集めのため、何人もの男と寝たような女。
だがマネルラの献身的な介護でレイチは回復し、その後結婚。

二年後にワンダが生まれた。

 

首相を辞してから約十年。セルダンは六十歳になろうとしていた。

本格的に心理歴史学の研究に戻り、ユーゴ・アマリル始め、多くの人員、予算を使ってプロジェクトを進めて来た。
アマリルも五十近くなり、少し活気がなくなっている。
そのアマリルが言うには最近入って来た若手のタムワイル・エラールが優秀だという。研究のためのプロジェクター、プライム・レイディアントの機能アップに貢献する電子浄化器を実用にしたのがエラール。

もうすぐ開かれる自身六十歳のための誕生祝賀会を思うと気が滅入るセルダン。
発案者のマネルラを詰問したが、誕生パーティーのアイデアはエラールの示唆だったという。「利口なやつだ」

ドースが心配事を話す。八歳のワンダが見た夢の話。

二人の男が「レモネード・デス」という言葉を話したという。

前にも二度あったセルダンの危機。彼を守るという意識の過剰反応。今の政府は完全に責任能力を欠いていると咎めるドース。

セルダンほどには容貌の変化なく、いざとなった時に彼を守る能力も衰えていないだろう。

 

タムワイル・エラール、三十六歳。西マンダノフ大学からの採用。

当初彼をうさんくさいと感じたアマリルだが、問題解決能力に優れ、今では重要なメンバー。
エラールと話すセルダン。軍事政権の新指導者テナール将軍が会談を求めているのを、一週間延期させたという。

それは誕生祝いと時期をずらすため。それを不快に感じるセルダン。
更に続け、将軍との会談は自分が代理として出る事を提案するエラール。自分が弱虫扱いされていると感じてそれを撤回させるセルダン。

 

セルダンの誕生祝賀パーティーが始まった。三日間続く。ワンダに会って、あの夢の話を聞いてみるドース。彼女の話は明瞭だった。
その後ドースとの話。「レモネード・デス」の言葉で毒薬の心配をするセルダンに、むしろ数日後に行われるテナール将軍との会談を気にしていた。「私が一緒に行かなければいけないのよ」

暫定政権のテナール将軍。だが皇帝が不在となって十年。

自らを皇帝にしたいと思うようになっていた。参謀のヘンダー・リン大佐。まともな戦歴はなく、将軍の話し相手が堆一の仕事。
セルダン除去は処刑ではなく、やり方が大事。

彼を自然な方法で交代させ、結果的に除去する。

祝賀会が終わり、数日後に将軍との会見を控えて、相変わらず付き添いを要求するドース。それに対しエラールが、皇居近くのホテルに人が集まって祝賀会フィナーレを行う提案を出した。

セルダンが人気者だという印象を将軍に与えて側面からセルダンの安全を担保する。それにはドースも同意。

 

将軍との会見日を迎え、セルダンは護衛に伴われて会談に出向いた。それとほとんど同時刻に姿を消したドース。

皇居内を歩くドース。だが警備の地上車に止められる。

乗っていた守衛を締め上げて車を奪い、猛スピードで走り出す。

二台の地上車による追跡。
目的の建物の前で止まると、連絡を受けて既に車が待機していた。

守衛が四人。女性である事に驚く守衛。
その中の一人が彼女をセルダンの妻のヴェビナリ博士だと気付く(タイガーウーマンとのあだ名)。ヘンダー・リン大佐に会いたいというのを制して逮捕すると言う守衛たち。

そのうちの二人を即座に襲い、ブラスター二丁を取り上げるドース。

ドースと対峙するリン大佐。守衛二人に先導させてここまで来た。

夫の安全確認が唯一の望み。将軍の狙いを聞くとリンは、将軍が心理歴史学に興味を持っていると言った。三十年近く続いている研究。

実用的なものを求めている。会議への同席を求めるドースだが、話が済むまでは無理だ、とリン。

テナール将軍とセルダンとの会談。三十年あまり費やしても実績を示すものがない事に不満の将軍。成果が出名kなら資金援助を止める。支持の中止は未来を投げ出す事。

時間が必要だ、と譲らないセルダン。
財政の話で税金の事が出たのを機に、セルダンは税務組織の問題に少し触れる。現在は複雑すぎる、と将軍自ら言う。
その直後、リン大佐とドースのホロビジョン映像が室内に現れた。

ドースの物理的影響力に不安を感じる将軍とリン。

あの女が居る限り、セルダンの除去は困難。

 

ドースに腹を立てるセルダン。だが怯まないドースは、暗殺の可能性について究明するため、関係者への尋問を宣言した。

ユーゴ・アマリルへの聴取。プライム・レイディアントの事について聞く。この装置を使っているのは今のところセルダンとアマリルだけ。

彼らの疲労の原因は?
重ねてセルダンが暗殺されるような可能性を訊ねるが、それはもちろんNOの見解。

レイチのアパートを訪問するセルダン。

彼の計画とは、将軍に人頭税を実施させる事。税の簡素化の極致。
これだけで暴動が起こり、政府が転覆する。
そんな話の時にドースが乱入。彼女はセルダン暗殺の陰謀を暴こうとしている。その原因はワンダの夢。

 

実験室を訪れるドース。対象はシンダ・モネイという女子研究員。

電子浄化器を開発したのは彼女。それを実用可能にする理論を考案したのがタムワイル・エラール。彼が業績を奪った?との問いを否定するモネイ。その装置のもっと強力なものを彼の指導で開発中。
ドースは、仮定の話として後継者の候補を問う。

エラール教授?の言葉を肯定するモネイ。

逆に古い化石は?の問いにはアマリルの名を挙げた。

再びアマリルを訪れるドース。彼の様子を見て、休暇を考えた事はないかと訊ねるが、言下に否定するアマリル。

そしてセルダンが最近後継者の件を口にするようになったと話す。

そうなったらプロジェクト、心理歴史学はどうなるのかしら?
「もしハリが引退したら、私が後を継ぎます」と断定するアマリル。

自分を辞めさせるためにここに来たのか?と背を向けるアマリル。

 

レイチとドースの会話。ワンダの話した「レモネード・デス」が頭から離れないドースを慰めるレイチ。
アマリルが、後継者問題で別人を選んだと早とちりした話をするとレイチは、彼の人格から見てそういう事はあり得ないと否定。

それで全く新しい考えが浮かぶドース。

 

四日間も銀河図書館に詰めていたセルダンに苦情を言うドース。
そしてあの電子浄化器をどれぐらい使っているかと聞く。

二年ほどとの答え。主にアマリルとセルダン。
あの装置が長期の影響を及ぼしていると言うドース。

否定するセルダン。
ドースはここ一週間普段と違う事はしないで、とセルダンに頼む。

セルダンがアマリルに、明日暫定政権が人頭税を実施すると伝えた。暴動を予測するプライム・レイディアント。

 

会議室で対峙するドースとタムワイル・エラール。

ドースが話す内容に「ありえない!」と否定する。
ドースは続ける。誕生パーティはエラールの発案。

そして中央研究所を片付けて立入禁止にした。

その間に暫定政権の者と打ち合わせをした。
それからワンダの夢に出た「レモネード・デス」の言葉。強力な電子浄化器を作ったあなたたちは、その作者にちなんでそれをエラール・モネイ・クラリファイアとでも呼んでいた。殺人装置として。それがエラール・

モネイ・デスであり、ワンダはそれを「レモネード・デス」と聞いた。
「気分が良くないようですね」とエラール。
話し始めるエラール。あなたが生きている間は、大先生は安全。

この件を暫定政権の人々に話した。彼らはなかなか信じなかったが、あなたが行った乱入事件により納得した。
電子浄化器は、人体には害を及ぼさないが、敏感な電子装置には有害かも知れない。もしロボットというようなものがあれば。

だからあなたは今不快に感じている。
さようならを言いなさい。装置を最大出力に上げれば、あなたは過去のものになる。
「私はあなたが考えている以上にシールドが効いているかも知れませんよ」と言ってエラールに体当たりし、手刀を彼の首に打ち込んだ。脊椎が砕けエラールは絶命。これをセルダンに知らせなくてはならない。

 

セルダンの腕に倒れ込むドース。顔はよじれ、体は歪んでいる。

彼女をベッドに横たえる。
エラールの死を伝えるドース。ついに人間を殺してしまった。
彼はあの装置を最大出力にして、ドースに致命的なダメージを与えた。再調整出来る者はいない。
ダニールが自分につけてくれた護衛。心理歴史学の成功を保証するためのもの。唯一の問題は、セルダンがその護衛に恋をしてしまった事。マネルラとワンダに後を託して機能を停止したドース。
市民の暴動を伝えるアマリル。


第四部 ワンダ・セルダン
銀河図書館で足を引きずりながら歩くハリ・セルダン。

銀河地図を立体状に表示して議論している三人に注目。

その特徴から「かぎ鼻」「はげ」「赤ほほ」と名付けられた者たちは、辺境の地アナクレオンに対する帝国の圧力誇示について議論していた。帝国の弱体化。赤ほほの聞いたセルダンの演説。
三人に話しかけるセルダン。銀河地図を操作するセルダンは、トランターを映し出す。驚くほど小さな世界。
その中の一人「赤ほほ」に明後日の午後四時、図書館の彼のオフィスで会いたいと伝えた。

 

七十歳の身に外出はこたえる。オフィスまで出向いて図書館長ラス・ゼノウに面会するセルダン。
ゼノウは、かねて依頼されていた「あれ」が見つかったという。

アナクレオン属州のはずれにある理想的な世界。遠すぎるため植民化されなかった。無人探査時に付けられた名は「ターミナス」。

六年前に話が遡る。
十二歳になったワンダに妹ペリスが出来た。母親マネルラの関心はそちらに注がれる。セルダンはドースの喪失と夢の話しとの連環で、ワンダを避けていた。
ワンダの話し相手としての受け皿はユーゴ・アマリルだけ。

彼女の悲しい顔を何とかしようと「きれいなものを見せてあげる」
それは心理歴史学研究用のプライム・レイディアント。

「きれいね」と喜ぶワンダだが「でもあの部分は嫌いよ、間違っていると思うの」と指指す。問題の方程式を見るアマリル。

 

セルダンに相談するアマリル。淋しくしているワンダを慰めるため、プライム・レイディアントを見せた時、ある部分を美しくないと指摘した。

気になってそこの見直しをしたら間違いが見つかった。
セルダンはその時、アマリル自身がその部分に疑問を抱いていたと聞き、ワンダが彼の心を読んだと言う。信じられないアマリル。

その能力を持っていた者--ダニール。

レイチにワンダの読心能力の事を話すセルダン。思えばレイチ自身セルダン、ワイのラシェル、ジョラナム、マネルラを味方に引き入れた。
この事実解明の一端としてゲノム解析を彼女に行う必要性を説いた。
反対するマネルラを何とか説得してワンダを連れ、ゲノム分析装置を持つミーアン・エンデレッキ博士を訪ねるセルダン。

細胞採取は腕から行われ、数分で終わった。
一ケ月以上経ち、結果を聞きに行くセルダンだが、常人に存在する程度の欠陥遺伝子があるほかは特に他者との違いは見つからないとのこと。

 

銀河図書館を自由に使える立場にあったセルダン。今回は別の目的で図書館長のラス・ゼノウに初めて面会した。それは図書館内に今より大きなスペースが欲しいという事。大勢の同僚を入れたい。
図書館に収蔵されている情報を集約するための事業:銀河百科事典を考えている。だがそれを否定するゼノウ。評議会は今の状態でさえ不快を感じている。自分から評議会への提案を申し出るセルダン。

衰弱したアマリルのベッドわきに座るセルダン。

彼はまだ五十五歳、セルダン六十六歳。
心理歴史学は革命を起こしつつある、と励ますセルダン。
二年前アマリルが指摘したワンダの能力。

そんな者を集めて第二ファウンデーションを作る。帝国の監視者。
素晴らしい!私のすべき事は何も残っていません、と言い残して息を引き取るアマリル。

 

そして現在。
評議員ジェナーロ・ママリーと対峙するセルダン。セルダン自身の図書館利用スペースは維持されるだろうが、同僚の分までは不可能だと言った。私から皇帝に話して予算増額が通ったら?というセルダン。

エイジス十四世に拝謁するセルダン。クレオンの傍系親族という理由で暫定政権の後に就いた。銀河図書館で部下と共に仕事をしたいという申し出に対し、帝国が慢性的な赤字を抱えている事を告げるエイジス。今彼に出来るのは、セルダンと親しいという印象付けを行う程度。
そして実現したエイジス十四世の図書館訪問。

ゼノウは、皇帝と親しくするセルダンを見て深い感銘を受けた。

だが評議会は皇帝の図書館利用の便宜を図る改善は行うが、セルダンの要望は却下。金の裏付けがない限り実現しない。

 

銀河図書館に向かって足をひきずりながら歩くセルダン。考える時間が欲しかった。そんな彼に若者の集団が近づいて来た。

目的はセルダンが持つクレジット。
八人相手では無理。その時、大きな声が聞こえた。それはレイチ。
ダール製のナイフを抜いて構える。

ブラスターを引き抜くリーダー格の男に飛びつき喉を刺した。
残りの者が飛びかかった時、二人が刺されて転がる。

一人死んで二人負傷。倒れている者らを連れて逃げる残りの者たち。
ワンダに教えられて来たというレイチ。

二人の精神コンタクトを信じたセルダン。

 

新しい職を見つけたというレイチ。サンタンニ大学。トランターから九千パーセクの遠方。二ケ月後に皆で行くから一緒に行こうという提案。

心理歴史学はライフワークだというセルダンに「失敗したんだよ」
レイチたちが出発する時期を迎え、ワンダが訪れた。自分はここに留まるという。でも両親をどうやって同意させたんだ?の問いに「押(プッシュ)したのよ」

他人の心の中が見える。それを押して望む事をさせられる。セルダン、アマリルの精神から心理歴史学を学んだ。もっと勉強したい。
資金がないんだよ、というセルダンに「見ててよ、おじいちゃん」

ある日、ワンダを伴ってセルダンが散歩をしていると、ワンダが後方から二人が迫っていると告げた。

プッシュ出来るか?の問いに「壁を押すみたい」
「来たわ!」の言葉で振り向きざまにその男を杖で打ち倒す。

護身用に鉛を詰めていた。もう一人は逃げて行った。駆け付けた保安官が現場を見ており、正当防衛ではなく暴行殴打だと宣言。

抑留され、弁護士と接見するセルダン。陪審裁判を勧めるが、判事との対面を主張するワンダ。

彼女のプッシュを感じてそれに同意するセルダン。
判事との対面。先に起きた八人による襲撃は警察にも報告されておらず、判事の心証は悪い。だが改めてハリ・セルダンの名前が心理歴史学の彼だと認識してから態度が急変。

倒された男が前科者だった事もあり不問にされた。
プッシュがうまく行かず、セルダンを守れなかった事を嘆くワンダ。

それを慰め、次の皇帝への拝謁時に同行してくれるよう頼む。

皇帝に拝謁するセルダンとワンダ。襲撃された事件を聞いて自分の無力を嘆く皇帝。

公安委員会に対してセルダンが全く人気がないのを訝る。
そして心理歴史学についても四十年近く努力しても何もならなかった。それなら、もういいではないかとも。
失意の中、帰ろうとするセルダンに、企業家を訪ねて贈与を募る提案を受けた。

目に涙を溜めるワンダ。皇帝に言われて四つの会社を回ったが、求めているのが金だと判ると冷たくなった。
心理歴史学のピンチに良案がないセルダン。
「これからどうするの?」とワンダ。
二日前に図書館で会った三人のうちの一人「赤ほほ」に会う約束をしていたセルダン。それを果たしに行かなくてはならない。

 

その若者はきっかり四時にやって来た。名はステッティン・パルヴァー。彼の父ジョラミス・パルヴァーとは面識があった。
トランター外のランカノ大学を卒業して、現在働いている。ここでの研究を勧誘すると、僕には仕事があるんですと言いながら、心理歴史学を教えてもらえるなら、出せる範囲の給料で受けると言った。
もう一つの仕事を頼むセルダン。

それはボディガード。「何とかなるでしょう」

ストリーリング大学そばを散歩するセルダンとステッティン。

清掃が行き届かない事を嘆くが、その先でゴミを投げ捨てる少年を見て怒鳴りつけるセルダン。
何かを聞こうとして集中しているステッティンを見て絶句するセルダン。その直後「すぐに逃げないと」
だが追い付かれた。相手は二人組。男が口上を言っている間にステッティンが一人に蹴りを入れて倒し、もう一人はセルダンが杖で倒した。
また関わると何もかも失う、とセルダンを連れて逃げるステッティン。

だがそれを陰で見ていた少年が保安官を呼びに行った。

それはセルダンがポイ捨てを叱った相手。

 

傷害事件裁判の公聴会。被告はセルダンとステッティン・パルヴァー。三人の若いトランター人を殴った罪。

弁護士、そしてセルダン自身の弁論。
次に目撃者の証言が行われた。ライアル・ネヴァス。セルダンがゴミのポイ捨てを注意した少年だった。セルダンたちがが一方的に手を出したとの証言。嘘だ!と怒鳴るセルダンに警告を出す裁判官。
だが話すうちにそわそわし始めるネヴァス。ブロンドの美しい女性(ワンダ)の強い視線。ネヴァスが被告席の方に目をやると、そこにはステッティンの視線。(真実を話せ!)の心の声。
裁判官が目撃の矛盾を突く。全ての目が注がれる。

ネヴァスはセルダンを見やり「ごめんなさい!」と言って泣き出した。

 

暴行殴打事件が全て解決し、新任図書館長のトライマ・アカーニオに面会するセルダン。前任者のラス・ゼノウからの引き継ぎを期待したが、彼との間で進めて来たターミナスでの百科事典プロジェクトの推進について否定的に語るアカーニオ。
今回事件であなたは、帝国内で先駆的な心理歴史学者ではなく、帝国の破滅を騒ぎ立てる狂人として注目されてしまった。

この図書館自体も笑い者にされる。

セルダンの、図書館での特権停止が宣言された。

 

プライム・レイディアントで、アマリルの研究を引き継いでいるワンダ。方程式の見直しで作業の進展があった事をセルダンに報告。

ターミナスを働かせるため、別の場所に釣り合いの重りを配置する。

それで完全な調和が図れる。
だがその時、レイチからの緊急メッセージ。政府が倒れ、暫定派に乗っ取られた。大学を守るためレイチは残ると言い、マネルラとペリスは第七アーカディア号で脱出したと話した。通信はそこで途絶える。
その後軍部を通じて情報を集めても状況が判らない。最後の手段でエイジス十四世にも頼み込むが、結局レイチの死が確認され、マネルラとベリスは不明のまま。

失意の中でもワンダは研究を続け、未来が形を現し始めるのを感じていた。百科事典編纂者をターミナスに定着させ、それがファウンデーションになる。だが肝心のセルダンが全く気力を失ってしまった。

 

花壇で手入れをしているワンダに話しかけるステッティン・パルヴァー。ボディガードをしているセルダンの事を心配していた。

数度の言葉のやりとりの中で、ある考えが浮かぶワンダ。
「あなたは人の心を操作することが出来るのね?」二人はこの事実をセルダンに伝えるために急いだ。

信じられないセルダン。能力を持った者が二人、こんな近くに居た。

ワンダは研究に没頭してステッティンに会う機会がなかった。

唯一あの公聴会で会った時、目撃者の少年に「事実を話せ」と偶然二人同時に念じた。それがあの少年を崩した。
ステッティンが話す。
「ワンダと僕が突破口なんです」

図書館長のアカーニオに再び面会するセルダン。

今度はワンダとステッティンを同行させている。
五分だけという条件で話を聞き始めるアカーニオ。

ワンダが心理歴史学の意義について「保存」の側面を強調。文明の衰退を予言すると共にそれを保存するのが銀河百科事典の目的。
この若い娘の、否定出来ない魅力に引き寄せられるアカーニオ。

破壊ではなく保存の問題・・・
後を継いでステッティンが、この図書館こそが帝国の知識、歴史の総体であり、この保存の価値は計り知れないと話す。
まったく突然に、セルダンの事業が至極当然の事に思われたアカーニオは職員、資金の増強を確約した。
図書館を辞し、セルダンは二人に、これからは極力二人で歩き回り、他の精神作用能力者を探すように言った。

 

セルダンの研究室で待つワンダとステッティン、そしてもう一人の男。

セルダンが来てその男性はボー・アルリンと名乗った。

商店街でワンダが出したシグナルに反応した。

プロジェクトへの参加を表明するアルリン。
セルダンのプラン。六年前、ワンダの能力を知ってから考えていた事。もう一つのファウンデーションは秘匿され、第一ファウンデーションのボディガードでなくてはならない。

そのためにもっと仲間を見つける必要がある。
私たちはどこへ行くの?というワンダに、セルダンは彼女の手を掴んだ。「セクション33A2D17-星界の端(スターズ・エンド)ね」

 

第五部 エピローグ
ハリ・セルダンの独白。
心理歴史学の進歩を考えるあまり、関わり合って来た人たちをないがしろにして来たかも知れない。
先月「危機ホログラム」のレコーディングを終えた。

それはセルダン廟に納められ、将来適切な指示を出すだろう。
先月ガールから便りがあった。ターミナスではうまくやっている。

「流刑地」のボー・アルリンらも元気。過去十年にワンダとステッティンは数十名の仲間を見出した。

あの二人が「スターズ・エンド」に行く事が必須だった。
ここを引き払い、大学に返すつもり。

手許に残るのはプライム・レイディアントだけ。
私には見える。しっかりとした希望の光・・・・スターズ・エンド。
これが--わたしのライフワークだった。

わたしの過去-人類の未来。ファウンデーション。

すごく楽しく、すごく生き生きしている。

そして、なにものも・・・・ ドース! 

 

八十一歳で生涯を閉じるセルダン。