みなさんこんにちは。
昨日に引き続き「フィナステリドの副作用」についてお話しします。
添付文書に記載されている副作用のうちで比較的頻度の少ない副作用ですが「睾丸痛」というものがあります。
「睾丸痛」の原因についてはDHT産生が阻害された結果、補うたように元の物質(男性ホルモン)を増やす働きが起こり、
(「負のフィードバック」と言います)男性ホルモンを増やそうという働きで睾丸(副睾丸)に痛みを感じる。
というのが原因として言われています。
「血精液症」(精液に血が混じる)の原因も同様と言われています。
この副作用については実際に外来で拝見したこともありますが、
症状が軽度であったことと、フィナステリド内服開始直後の短期間に見られただけで、
内服治療は継続したままで、自然に症状は消失しました。
また、その他に外来で訴えがあった副作用としては「女性化乳房」があります。
「女性化乳房」とは
「女性ではないのに女性のように胸が膨らむ状態」のことで
実は「真性~」と「偽性~」に分類されます。
「真性女性化乳房」は「乳腺が発達することで胸が大きくなる」状態で
多くは思春期の男性、もしくは一部壮年期男性にも見られます。
「偽性女性化乳房」は「胸に脂肪がたまることで胸が大きくなる」状態です。
太っただけでも「偽性~」と言えなくはないのです。
フィナステリド(プロペシア)の添付文書を読むと
副作用欄に「女性化乳房」とは書いてありますが、
「真性~」「偽性~」の明記はされていません。
また、頻度不明であることと、副作用が自己申告であることから、
「フィナステリドの副作用として真性女性化乳房になりうる」かどうかは疑わしく思えます。
真性女性化乳房は、男性には珍しく、生まれつき反応しやすい乳腺があることが前提としてあり、
ホルモンアンバランスによって発症すると言われています。
ちなみにフィナステリドではホルモンバランスは変化しないはずなので、
そもそもの体質として自然に「壮年期の真性女性化乳房」になった可能性の方が高いです。
偽性女性化乳房だというのならば、
それは脂肪です。
フィナステリドは肝臓で分解されるので肝機能障害を起こす可能性はあり得ますが、
かなりの患者さんに10年以上、中には20年以上内服している患者さんも診ていますが、
フィナステリドが原因で肝機能障害を起こしたと思われる患者さんは診たことがありません。
内科診療もしている立場からすると、
「フィナステリドよりも、よほどアルコール(飲酒)の方が肝臓に悪いのではないか」
とも思っています。
(あくまで私の個人的意見です。なんの確証もありません)
その他にも副作用の記載はあるのですが、いずれも頻度不明、つまりかなり低確率なうえに
因果関係もはっきりしない程度の症状とも言えます。
蛇足ですが、私の論文の結語を引用させていただきます。
「ED、リビドー低下含めた副作用は一般罹患率(発生率)よりも低く、
症状はいずれも一過性かつ軽度であり、その他にも重篤な(重大な)副作用は認めなかった」
少なくとも、私の外来では
「フィナステリドの副作用はほとんど起こらないので、心配しなくて大丈夫ですよ」
と説明しています。
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