バッタを住まわせる | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「先日、夢の中でマンションの大家であるらしい女が私の部屋に訪ねてきましてね」

 「その大家は実在する女なのですか?」

 「いいえ。しかし、夢の中ではその女が大家になっていて私はその設定にまったく違和感を抱いていなかったのですよ。それで、大家はこのマンションにバッタを住まわせるつもりだと言い出したのですよ」

 「バッタですか。虫と一緒に暮らす羽目になると想像すると気持ちが悪いですね」

 「大家が言うにはバッタにはマンションの清掃が必要なく、エレベーターも必要がないので人間よりも遥かに安い経費で住まわせられるらしいのです。ですから、マンションの住民として私のような人間よりもずっと有り難い客らしいのですよね」

 「だとすると、その大家は人間の住民を全員マンションから追い出すつもりなのですか?」

 「人間の住民を追い出すと明言はしませんでしたが、人間が住めない環境になりそうでした。バッタにはドアも壁も必要がないと大家は言いました。私は壁がないマンションなどに住み続けたくありません。速やかに引っ越さなければならないと夢の中で考えましたよ」


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