鶏の夢 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夢を見た。テーブルの上に一羽の鶏が立っていた。周りが暗いので室内の様子は何もわからないのだが、その鶏の姿ははっきりと見えていた。鶏冠が大きいので雄のようだと私は推察した。

 鶏は身動きしていなかった。私が視線を逸らすとテーブルの上を歩き出すのだが、見つめると再び静止するのだった。そして、身動きしていない間の鶏はまるで剥製のようで生きているようには見えなかった。

 いつまでも鶏ばかり凝視していられないと思い、部屋の中を見回してみた。しかし、暗過ぎて何も見えなかった。部屋の大きささえわからなかった。まるで目隠しをされているかのようだと私は感じた。背後から鶏の足音が聞こえていた。テーブルの上を歩き回っているようだった。

 ぐるりと部屋の中を見回して再びテーブルの方向に視線が戻ってきたはずだが、鶏やテーブルは見えなくなっていた。周りには暗闇だけがあった。ただ、ずっと背後から鶏の足音が聞こえていた。


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