傾くバケツの夢 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夢を見た。テーブルの上に金属製のバケツが置いてあった。周りが暗いので室内の様子は何もわからないのだが、そのバケツははっきりと見えていた。

 バケツは傾いていた。倒れるはずの傾き具合なのだが、不思議と均衡が取れているようだった。しかし、今にも倒れてテーブルの下に落ちそうなので私は気持ちが落ち着かなくなった。バケツをしっかりとテーブルに置き直そうと思って手を伸ばした。すると、バケツの中に水がたっぷりと入っているという事実に気付いた。水面がバケツの淵と平行になっていた。

 その事実に気が付いた途端に私は重力の方向がわからなくなって強い目眩に襲われた。自分の足だけでは立っていられそうにないので思わずテーブルに手を置いた。すると、バケツが倒れて床に落ち、水が飛び散ったようだった。暗いので見えてはいなかったが、その音が室内に響いた。バケツが視界から消えると私は目眩の症状が解消されたようだと感じて胸を撫で下ろした。


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