ラジオの夢 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夢を見た。テーブルの上にラジオが置いてあった。周りが暗いので室内の様子は何もわからないのだが、そのテーブルとラジオだけははっきりと見えていた。

 最初は無音だったので電源が入っていないようだと私は考えていたのだったが、突如として雑音を発し始めたので当惑しながらラジオに注目した。すると、その雑音と一緒に薄らとピアノの演奏が聞こえてきていると気が付いた。

 そこが夢の世界であると私は自覚していた。そして、夢の中でどのような音楽が演奏されるのだろうかと興味が湧いたので耳を澄ませてみた。雑音は徐々に消えていき、ピアノの音だけが聞こえてくるようになった。

 知らない曲だが、快活で心地良い演奏だった。ひょっとすると私の頭脳が生み出した曲なのかもしれないと思ったが、採譜する技能を持っていないので再演はできそうになかった。その音楽はおそらく二度と聴けないのだった。私は歯痒く感じながらラジオに耳を傾けた。せめて一音も聞き漏らさないでおこうと考えた。


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