令和6年中央区議会第三回定例会では、高齢期の生と死の尊厳を保つために必要なことを「身元保証問題」として捉えて、質問や提案を重ねました。日本では、2040年に高齢者人口がほぼピークとなり、全世帯に占める高齢者世帯の割合と高齢者世帯に占める単独世帯の割合がそれぞれ4割を超えると推計されています。核家族化や人間関係の希薄化に伴い、高齢期に必要な支援を身近な人から受けられない方が増加していく見込みです。また、身よりがいないまま亡くなる孤立死が「無縁仏」につながるケースが都市部を中心に増えていくことが予想されます。
1、中央区における高齢者の現状と課題等について
中央区の総人口に占める高齢化率は、令和6年1月1日現在で14.6%となっており、国や都の高齢化率を大幅に下回っているものの、高齢者人口は年々増加し続けています。本区においては、高齢者のいる世帯に占める単独世帯の割合が44.9%と高い特徴があります。
令和5年3月の「中央区高齢者の生活実態調査等報告書」によると、老いへの備えとして「介護申請の手続きや終末期医療の方針」、「残存家財の処分」、「葬儀や納骨の手配」など、身元保証を含む総合的なサービスが求められています。今後、力を入れるべき高齢者保健福祉施策について「ひとり暮らし高齢者への支援」の割合が高い結果となっており、その期待の高さが伺えます。そこで、中央区におけるひとり暮らしの高齢者の実態と支援の状況、課題について確認しました。
2、中央区における無縁遺骨の現状と課題等について
単身高齢世帯の増加や家族のつながりが希薄化する中で、死後に引き取り手がいない「無縁遺骨」が増加の一途をたどっており、今後、深刻な地域課題に発展することが予想されます。身寄りなき孤立死は「無縁仏」として自治体に火葬する義務があります。墓地埋葬法第9条は、身元がわからない行旅死亡人が亡くなった時の対応を想定していましたが、近年は身元がわかっていても火葬や埋葬を行う人がいないという理由で、自治体が弔うケースが増えています。そこで、中央区における無縁遺骨の現状と課題、親族等の捜索に係る事務負担や埋火葬等に係る財政的負担の状況について確認しました。
3、身元保証事業に対する認識と課題等について
身近に頼れる人のいない高齢者を対象とした身元保証や日常生活支援、死後事務等に関するサービスの需要が高まっています。民間の身元保証事業は、家族に代わって包括的かつ継続的に支援を提供してくれる心強いサービスである一方で、業務の性質上、金銭などにかかる不正が発生する危険性が危惧されます。また、身元保証事業者が契約者の死亡情報を確実に把握することは困難なこと、死後事務委任契約の履行を担保する仕組みが十分に整っていないこと、契約が履行されなかったとしても消費生活相談につなぐことができないことなどが懸念されます。契約者の死後に財産の遺贈を受け入れている民間事業者もあり、寄附を巡っては公序良俗に反するという判決がでており、健全な事業者の育成が課題となっています。そこで、中央区における身元保証事業に対する認識と課題について伺うとともに、身元保証事業に関する利用実態調査を実施すべきと訴えています。
4、自治体の強みを活かした終活支援事業の展開について
身元が分かるのに引き取り手のない遺骨が増えている現状を踏まえ、神奈川県横須賀市では二つの終活支援事業を官民協働で実施しています。一つ目は、低所得の単身高齢者を対象に、葬儀社との死後事務委任契約締結を支援する「エンディングプラン・サポート事業」です。二つ目は、すべての市民を対象にした終活情報登録伝達事業「わたしの終活登録」です。本人が終活関連情報を自ら伝達できなくなった際に、病院・警察・消防・福祉事務所などの照会に応じ、市が本人の代わりに登録された情報を伝達するものです。
どちらの事業も高齢者の生前から死後にかけての尊厳を守る手段を提供するものです。自治体が担う役割として、身寄り代わりになることよりも、住民が自ら備えるための動機づけや住民が備えたことが無駄にならない手段の整備といった視点を大切にしています。そこで、業務の中で、身寄りのない方の死亡情報や引き取り手のない遺体の情報が必ず入る自治体の強みを活かして、終活支援相談や意思伝達事業などの新たな行政サービスを提供していくべきと質しています。
5、単身高齢者等住宅確保要配慮者の居住支援の充実について
単身高齢世帯の増加に伴い住宅確保要配慮者の賃貸住宅への入居ニーズが高まることが予想されます。民間賃貸住宅では、賃貸人の一定割合が単身高齢者などの要配慮者の入居に対して不安感や拒否感を有しています。その理由は、連帯保証人の確保のみならず、居室内での死亡事故等に対する不安です。そこで、住宅と福祉が緊密に連携し、単身高齢世帯の入居相談から死後事務までを見据えた居住支援を志向していくべきと訴えています。
住宅セーフティネットの根幹である公的賃貸住宅の入居においては保証人に関する規定が削除された一方で、民間賃貸住宅では何らかの保証を求めており、多くの方が家賃債務保証会社を利用しています。公的賃貸住宅の入居がなかなか叶わない本区の現状を鑑み、賃貸人が住宅を提供しやすい仕組みづくりを検討すべきと質しています。
エンディングセレモニーは誰もが迎える旅立ちの時です。本人にとっては最後のライフイベントです。死をタブー視せずに、死後事務まで視野にいれたシームレスな支援体制の構築を要望しました。
▽令和5年3月中央区高齢者の生活実態調査および介護サービス利用状況等調査報告書
https://www.city.chuo.lg.jp/documents/3423/20230330hokoku.pdf
▽中央区議会HP
https://www.kugikai.city.chuo.lg.jp/
▽区議会だより
https://www.kugikai.city.chuo.lg.jp/dayori/index.html
▽インターネット中継
https://chuo-city.stream.jfit.co.jp/?tpl=speaker_result&speaker_id=205