1、築地市場跡地開発の進捗状況について
2024年4月に、東京都は「築地地区まちづくり事業」の事業予定者を決定しました。事業予定者は、三井不動産、トヨタ不動産、読売新聞グループ等の構成企業11社からなる「ONE PARK×ONE TOWN」です。本年度中(年度末)に、都は事業予定者と基本協定を締結する予定です。中央区は都の基本協定締結前(年度内)までに事業予定者に対し、本年4月に提出した「築地市場跡地開発に関連する要望書」に対する基本的な考えを取りまとめるよう求めています。
(1)中央区の要望内容
1、交通処理計画の公表について
交通に関するトータルマネジメントの早期検討を要望しています。
2、工事期間中の建築資材などの搬出入の輸送について
建築資材については、陸上のみならず、海上を活用することを強く要望しています。
3、区有施設への影響について
区有施設の再編や用途変更など施設のあり様について検討しています。
現在、築地地区まちづくり事業を総合的かつ効果的に推進するため、外部有識者、東京都、事業予定者等からなる「築地地区まちづくり事業マネジメント会議」において、事業計画のブラッシュアップや事業の具体化に向けた検討が重ねられ、付帯意見等を反映した基本計画の策定に向け取り組んでいます。また、都と事業予定者において、埋蔵文化財調査や土壌汚染対応をはじめとした各種調査を2021年から実施しています。本区としては、2028年度から建築工事に着手するために、最短4年を目途に都市計画決定を目指したいと考えています。
(2)今後のスケジュール
築地場外市場の賑わいを絶やさないため、2026~2027年度に暫定的なにぎわい施設を先行整備します。波除神社の北東に波除広場を整備し、年間を通じてイベントを開催していく予定です。また、2029年度に舟運施設やシアターホール等からなる複合棟を先行開業します。築地場外市場と連携し、食文化をさらに発展させる役割を担います。
2024年度 東京都と事業予定者の基本協定締結
2025年度 暫定的な先行にぎわい施設の着工
2026~2027年度 暫定的な先行にぎわい施設の開業
2026年度末 定期借地権設定契約の締結
2029年度 舟運・シアターホール等複合棟を先行開業
2032年度 第一期建築工事の完了(まちびらき一期)
2038年度 第二期建築工事の完了(まちびらき二期)
関連事業のスケジュール
2030年代~2040年代 東京高速道路(KK線)上部空間の整備完了
2040年度 首都高地下化事業の高架橋撤去完了
2040年頃 地下鉄新線の新設
2030年代前半 晴海線の事業着手
2040年代前半 晴海線の共用開始


(3)建築制限区域の課題
将来的に、築地市場跡地開発敷地内(建築制限区域)には高速晴海線が通り、地下鉄新線の駅が整備される予定です。事業予定者の提案概要によれば、晴海線や地下鉄新線の新駅が整備されるまで、場内市場跡地と場外市場の間の建築制限区域は「緑地」として管理していく方針です。晴海線と地下鉄新線の工事が完了するまで、建築制限区域には建築物が建てられないため暫定的な利用を検討しています。
(4)街区内動線計画の課題
【2階レベル】歩行者動線
歩車分離を図るため、敷地全体に人口地盤(デッキ)を整備、周辺市街地と地域資源をつなぐバリアフリー化された歩行者空間を整備する計画です。
【1階レベル】車両動線
車両用の地区内通路や交通広場を設け、敷地内の各建物や周辺道路と接続を想定しています。周辺道路との接続については、晴海通り「勝どき橋西交差点」に1か所、新大橋通り「中央市場前交差点」に1か所の計2か所を計画しています。現在は晴海通りに2か所、新大橋通りに3か所の計5か所の接続があることから、基幹道路との接続か所の少なさが問題視されています。円滑な車両動線の確保が不可欠です。
【地下レベル】
地下鉄新線の新駅など地下空間の歩行者および車両動線については明らかにされていません。陸・海・空を結ぶ広域交通結節点の縦動線についても検討が必要です。
(5)海上輸送の積極的な活用
事業予定者の提案概要によれば、隅田川沿いに人々が集い憩える広場や緑地など約10haものオープンスペースを整備する計画です。東京都建設局河川部は、隅田川スーパー堤防事業や築地川護岸工事、築地~竹芝防潮堤歩行者ネットワークなどの整備事業を予定しています。都の事業であるスーパー堤防(緩傾斜堤防)の整備については、堤防の形状や時期についてスケジュールが明らかにされていません。
築地市場跡地開発(約19万㎡)では、膨大な量の建築資材を要します。区は建築資材の運搬や残土の排出等について、その9割を海上輸送していくことを望んでいます。河川ではなく道路を活用すれば、工事関係車両により晴海通り、新大橋通り、市場通りなどは確実に交通混雑や渋滞が発生し、築地や銀座をはじめとした本区の経済活動は停滞します。また、長期にわたる工事期間中において食品等への影響が懸念されます。海上輸送の積極的な活用等による工事車両対策や粉じん対策等を行い周辺地域に最大限配慮するよう求めています。
本開発の工事期間中も工事関完了後も、地域と共存共栄できる地元に愛されるものとなることを望みます。また、地域課題の解決に資する社会的意義のあるものとなるよう期待します。

▽「築地地区まちづくり事業 」の事業予定者の提案概要2024.4月
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/toshi_saisei/data/teianegaiyou.pdf
▽中央区/築地市場跡地開発に関連する要望書2024.4.26
https://www.city.chuo.lg.jp/documents/15738/youbousyo.pdf
▽東京都都市整備局/築地まちづくり
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/toshi_saisei/saisei08.html
▽築地地区まちづくり事業マネジメント会議/東京都
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/07/22/11.html