Y/世界の、憂鬱な先端 | 星垂れて平野闊く 月湧いて大江流る

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 ここに二人のYくんがいます。

 二人には共通する所が多く、まず同年代で、共に男性で、関西出身です。母親が統一教会の信者、所謂「カルトⅡ世」(「宗教Ⅱ世」という言い方は好みません)であり、そして共に苗字のイニシャルがYです。

 一人は2022年七月八日に安倍晋三元総理を射殺した山上徹也、もう一人はあたしの京都府立大学時代の同級生です。ここでは前者を山上くん、後者をYとだけ記したいと思います。

【2022.8.9.追記 訂正記事

”Y/世界の、憂鬱な先端” | 星垂れて平野闊く 月湧いて大江流る (ameblo.jp)

 

 既に色々なメディアで報じられている所をそのままお伝えしますと、山上くんの母親はカルトにのめりこみ、家の財産を全て使い果たし、山上くんは大学に進学することができませんでした。彼が若い頃に自殺を図ったのは、兄妹に自分の生命保険金を遺してやろうとしたからでした。

 皆さんは、誰かのために死のうとしたことがあるでしょうか?

 

 そこから2022年七月八日、安倍晋三氏を射殺するまで、山上くんの人生にどんな紆余曲折があったのかはわかりません。これはあたしの想像ですが、親に否定された、というよりも親自身が自分の周囲の人々や生活を全て否定して狂信と妄想の虜になるのを、幼少の頃よりどうすることもできず見ていなくてはならなかった彼は、足元が揺らぐような、世界が壊れていくような感覚に囚われたことと思います。そうした人は恐らく、他者や社会との基本的な信頼関係を築くのに失敗しているような所があるでしょう。仕事もうまくいかず、恋愛や友人関係でも相手から拒絶されるということが度重なったのではないでしょうか。

 

 「極端な人が多いですよ」

 あたしが教会でカルトⅡ世問題について話していた時、傾聴してくれた友だちがしんみりと言った一言が印象に残っています。彼の元恋人もⅡ世で、今でもカルトに所属していて、彼は手紙でひどい言葉を浴びせられながらも、そんな彼女を何とか救い出したいと思っているようです。

 

 彼がそう言った時に、あたしもYを少し赦してあげようかなという気になったのです。

 Yに関しましては、あんまり多く書きたくありませんので過去記事を参照してもらうことにします(そこにもあまり書いてないですが)。

 

”速報:⑥かんさい熱視線「私たち"宗教二世"…」” | 星垂れて平野闊く 月湧いて大江流る (ameblo.jp)

 

 あたしはYから深刻な被害を受けて京都府立大学を中退しました。Yからの直接的被害以上にあたしを苦しめたのは、人々の無理解と、「大学中退」ということで社会的に大きな傷を負ってしまったことでした。虐待、いじめ、ハラスメント被害というのはそういうものです。二次被害、三次被害の方が大きいのです。

 他にも沢山あります。他の人が大学時代、それに続く新社会人時代の楽しい思い出を話す度に辛い気持ちになるなど。小説や映画やTVドラマでもそういう類のものは避けます。未だにです。

 べつにYと出会っていなくてもそんな大した人生を歩めていなかったかも知れませんが、Yと出会っていなければこれらのことは起こっていないと思います。正しく人生をめちゃくちゃにされたと思っています。また、この挫折経験によって「学習性無力感」というのをしっかり身に着けてしまい、自分はしっかりと自分なりのやり方や考え方で生きていける人間だ、自分は幸せになってもいいんだという確信を得るのになんと二十年以上かかったのです。正直、今でも確信できているか確信がありません。

 YがカルトⅡ世という生い立ち、境遇からあのような「極端な」性格になったのだとすれば、あたしは統一教会の孫被害者と言えるのかな?とも思っています。

 Yから被害を受けた当時、あたしは彼がカルトⅡ世ということは知りませんでした。あたしは以前からカルトやカルトⅡ世の問題には関心を持っています。あたしはカルトというのは人の心を蝕み、その人の人生や人間関係を破壊してしまうもの(山上くんのお母さんのように)であり、「いいカルト」なんて存在しないという信念を持っています。心からカルトを憎んでいますし、カルトⅡ世はお気の毒だと思います。何か自分にできることがあればしたいとも思っています。

 YがカルトⅡ世ということを知ったのは、Yが有名になったつい最近のことです。Yとはもう二十年以上会っていません。

 もちろん当時、「カルトⅡ世」という言葉はなく、今のように問題になることもありませんでしたが、もしYくんが大学の時に打ち明けてくれていればどんなだっただろうかな、とも思っています。

 

 過去記事を読めばわかると思いますが、Yは山上くんとは違って、学歴もキャリアもあり、社会的成功者と言える人です。

 そんな彼でも、「お母さんが家庭不和から変な宗教にハマってしまって、子供の時にひどい暴力を受けた」「それでますます家族仲が悪くなった」経験をまだ乗り越えられていないか、恐らく四十歳を過ぎた今やっと、自分が組織したピアサポートの力を借りて乗り越えようとしているのです。

 あたしは彼の著作を読んでいないので、彼とカルトとの関わりを詳しくは知りません。でも、一つ確実に言えることは、「カルトはその人や周囲の人の人生や人間関係に破壊的な影響を及ぼす」ということです。親が熱心な信者であればあるほど、「カルトだった親と無関係に幸せになる」ということは子にとってとても困難なことなのです。もちろん、誰でもそうしたいとは思いますけれども。

 

 そんな経緯があって、あたしは山上くんのことを他人事とは思えないのです。

 あたしはYを信用してはいないのですが、Yがもし、カルトⅡ世のピアサポーターとして充分な成熟を遂げているなら、是非山上くんに面会してやって、文通してやって、山上くんの友だちになって支えてほしいとも思っています。

 あたし自身が安倍をよく思っていなかったから、山上を英雄視するような所もあるのだろうと思う人もあるでしょうし、そんなことはないと言ったら嘘になりますが、安倍射殺という犯罪行為と彼がカルトⅡ世であるということは区別して考えていいことです。

 山上くんのことでめちゃくちゃなことを言っている人があります。安倍さんを好きだったからそんな風に言うのかも知れませんが、「四十過ぎて何を言っているんだ」「日本は自由な国なんだから何でもできる、どんな生き方でも選べる」「親が変な宗教にハマっていたって本人は幸福なんだからそれでいいし、自分も親とは無関係に幸せになればいいことだ」「母親の財産は母親の好きに使う権利がある。いい年をして二十年も前のことをあの時母親がどうだったから言っているのは甘え」「大学に行けなくても高校には行かせてもらったんだろう」「お金がなくて大学進学を諦める人はいくらでもいる」等々。

 こういう人は本当に想像力がないというか、自分が如何に恵まれているかに気がついていないというか、「もし自分が山上くんと同じ状況だったらどうなっていたかわからない」という所に考えが及ばない人なんだろうな、とあたしは残念に思います。

 ついでに言っておくと、日本というのは新卒一斉採用をはじめとした独特な慣習を含む社会構造の不備と、それと両輪を成す同調圧力のせいで、一度失敗するとやり直しのし辛い国だと言われていますし、お金がなくて大学に行けないというのは完全に個人ではなくて制度の問題です。国葬を挙げてもらうような政治家が対応しないといけないのはこういう所なのです。

 そうするとまた、「だったら外国に行けばいいだろう」とか言い出すので、もう何も言いませんけどね。結局彼らは理解したくないだけで、理解しない理由を探しているだけなのです。

 そういう方面に興味がない人は知らないかも知れませんが、最近「カルトⅡ世」がぽつぽつと問題になりかけていた所だったので、そういうことを言うとセンスのない人だと思われると思います。

 とにかく、とても想像のできないような世界で生きていると思って良いです、彼ら彼女らカルトⅡ世は。

 一つ大事なことは、山上くんは数ヶ月前に職を失い、借金もあって生活費が底をつきそうだった。彼は生活保護などに頼らず飢え死にするつもりだったのでしょうか。その前に安倍をと決意して行動を起こしたと報道では言っています。それは外でもない、母の人生を、自分の人生を、家族の生活をめちゃくちゃにした統一教会と安倍が深く関わっていると彼が思ったからです。

 また、「爆弾を使うと他の人を巻きこむ恐れがあるから銃にした」とも言っています。自殺未遂のエピソードといい、彼は本来利他的で博愛的な人間なのだと思います。少なくともサイコパスではない。

 ぬくぬくと生きてきた人間にそんな彼の悲壮な思いが想像できるはずがないと思います。わからないなら黙っているべきです。

 

 ちょっと疲れたので、続きはまた後日書きます・・・・のつもりですが、これで終わるかも知れません。