米澤穂信<小市民>シリーズ第三弾『秋期限定栗きんとん事件』読了です。


私的に米澤さん作品は「大ハズレ無し!」なんだけど、
どうも、このシリーズは前作も前々作もいまいち乗り切れなくて(-""-;)
同じ高校生が主人公の<古典部>シリーズは大好きなのに。…何故だ?
かわいらしいカバーイラストに反して、結構ビターな味わいだったりするから、かな?
謎解きのスカっと感がいまいち物足りないから、かな?
人並み以上の頭脳を持ちながらそれを隠して<小市民>として生きることを願う
小鳩君と小佐内さんのキャラが、面白くはあるけど、バリバリに小市民な私には
ちょっと傲慢に思えてしまうから、かな?


とにかく…このシリーズ、前2作は購読しているんですが、
今回新刊を書店で見かけても、ちょっと迷ってしまって。
上下巻だし、買って読んで楽しめなかったらイタイな、と(笑)。
そうしたら、救いの神が。元職場の同期くんが貸してくれました!
気前良く(?)無期限貸与してくれたので、取り掛かるまで大分時間かかったけど。
(ちゃんとお返ししますからね~!)


読んでみたら、あら、まぁ面白かった(^▽^;)!!
上巻はちょっともたもたしたけど、下巻は一気読み。シリーズ中、いちばん楽しめた。


手っ取り早く解説すれば、このお話は、前作で「お別れ」をした小鳩君と小佐内さんが
お互いがベストパートナーであることを思い知るまでの紆余曲折。
…こう言うと、タイトル通り甘~い物語のようだけど、彼らの間にあるのは、

ベタベタした恋愛感情ではなく、もっとドライで冷静な「計算」。
でも、やっぱりそこは高校生の男の子と女の子。これから向かう先はやっぱり「ラブ」かもね、
というくらいの、サラリとした雰囲気です。


二人にとってはかなりハッピーな幕切れなんだけど…
小鳩くんに告白した仲丸さん、小佐内さんに告白した瓜野君は、ご愁傷様でした。
仲丸さんも瓜野くんもそれなりに自分勝手で強引だったけど…
瓜野くんはやっぱり可哀想すぎる。小佐内ゆき。怖いオンナっ(T▽T;)


あ。すみません、まるっきり青春恋愛小説であるかのように書いてますが、
もちろん、ばっちり、きっちり、ミステリです!!

メインの「事件」の様相、それを解決に導いた小鳩くんの手腕は読み応えアリです。
真相にはちょっとやり切れない感じ…。だから、後味はやっぱりビター。
でも、それがこのシリーズの味、だし。


ああそれにしても、憐れな瓜野くん。
青臭い正義感、身勝手な自己顕示欲。私も瓜野くんは大っ嫌いだけど…
思わず、「がんばって」と言いたくなってしまう。
あの結末。あの仕打ち。果たして立ち直れるのかなぁ、彼は…。


秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)/米澤 穂信

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)/米澤 穂信

評価:☆☆☆☆
山内さんとの「互恵関係」を解消した小鳩君に、クラスメートの仲丸さんから

交際の申し込みが。あぁ夢に見た小市民的幸せの日々到来!!
…そして小佐内さんにも「彼」が出来た。野心に燃える新聞部員の瓜野君。
しかし、瓜野君が学内新聞に掲載した連続放火事件の「謎」が、やがて小鳩君を引き寄せる。
・・・小鳩くんと小佐内さんの再会はいつ?