本CDは 1970年1月10日英国ノッティンガムはビーストンのノッティンガム大学ボールルーム公演を皮切りに,3月30日フランスはセーヌ・サン・ドニのル・ブルジェ空港(パリ空港)で行われたエボリューション・ミュージック・フェスティバル公演までの英国・欧州ツアーから,ツアー終盤に当たる 3月20日スウェーデンはルンドのアカデミスカ・フォルゲン大ホール公演をオーディエンス収録したもので,Sigmaレーベルから 2009年にリリースされた 『 Lund Master (Sigma 41) 』 です.今回価格改定に伴って再リリースされた関係で購入.

 丁度,ブートレッグ収集を中断していた時期にリリースされている Ayanamiレーベル,Siréne(Sirene)レーベル,それと Sigmaレーベルの若番の商品は,ネットで一部の音源のみ入手した以外は殆ど持っていない状況なので,今回の価格改定と再リリースは嬉しい限りです.

 既発では 1990年代に World Productions Of Compact Musicれーべるから 『 Atom Heart Moo Live (WPOCM 0390 F 048-2) 』 が,2000年代に入り 2001年に Ayanamiレーベルの 『 In The Grend and Pink (Ayanami 132) 』,2002年に Orange Recordsレーベルの『 Interstellar Highlights (FP 70-A/B) 』 ,2003年には Flux And Reflux Musicレーベルの 『 Lund Sweden 1970 (FARM 20507) 』 等がリリースされていますが,これらの商品に使用されている音源は世代数を経ているのに対し,本CD 『 Lund Master (Sigma 41) 』 は,マスター・カセットを使用してリリースされており,非常に高音質で,多分,この英国・欧州ツアーの中ではトップ・クラスに属する音源だと思います.

 オープニングを飾る "Astronomy Domine" は,9分あるにも関わらず,この日演奏された曲の中では ”The Embryo” と並び一番短く,「 Track Of Our Last Album "Ummagumma”. 」 として ロジャー・ウォーターズに紹介される "Careful With That Axe, Eugene" も劇的なパフォーマンスで,1st Set 最後に演奏される 4つのパート("Something Else","Syncopated Pandemonium","Storm Signal","Celestial Voices")を持った "A Saucerful Of Secrets" も秀逸です.
 この日の公演の最後で演奏される "Atom Heart Mother" は,約2ヵ月半前の 1月17日英国ヨークシャーはコッティンガム(ハル)のローン・センター公演が初演(一部では1月23日パリ公演とも言われています)とされており,この時期はタイトルも未だ "The Amazing Pudding" でした.当然,オーケストラやコーラス隊との共演は行っていないものの,この日の演奏は既に最終形に近い形となっています.

 リリース当時のメーカー情報では
 『1970年3月20日、スウェーデンはランド公演が、初のマスター・クオリティ、超高音質完全収録盤で登場です。
 既発盤(Ayanami)とは比較にならない極上レベルのサウンド。既発同様にAstronomy Domine冒頭1分10秒目でマスターに起因するアナログカットがありますが、それ以外は完璧な内容。
 この時代としては異例とも言えるライン録音に匹敵するダイレクトなサウンドは圧巻で、劣化の殆ど感じられない、太く鮮度抜群の音像は聴き手を大いに驚かせることでしょう。原音を忠実に再現するために、故意に除去しなかった、うっすらとしたヒスノイズは聴こえますが、そこから突き抜けてくるように弾き出される絶品の楽音は実に味わい深く、聴き応え満点です。

 9分を上回るオープニングのAstronomy Domine。
 「新作 Ummagumma から」というMCでスタートするCareful With That Axe, Eugeneはあまりの迫力に聴き手は誰しもが圧倒されることでしょう。1970年のオーディエンス録音で最も音が良いのではないでしょうか?ロジャーのベースノートをはじめ、全ての楽音が分離感抜群のサウンドで迫ってくる様はまさに圧巻です。
 力強いCymbalineの演奏は後の繊細なヴァージョンとは違うダイレクトな迫力に満ちています。中間部のまだまだ未整理のインストパートはバックのドラムのアレンジも含め、一風変わった、この時期ならではの強烈な演奏はファン必聴。中間のSEも長めに収録されており、後半のギルモアのソロも未完成の迫力を放っています。
 「休憩の前に最後の曲」という紹介でスタートする14分近いA Saucerful Of Secretsはかっちりとコントロールの効いた演奏。
 The Embryoはストイックで後のヴァージョンに比べるとシンプルな演奏。丁寧に弾き歌うボーカルパート、随所で聞かれる初期型のギターソロが新鮮に響きます。後半、キビキビしたリックのオルガンのバックでギルモアのカモメ・トーンのギターが炸裂します。
 14分近い熱演のInterstellar Overdriveはイントロパートからギルモアのギターが素晴らしい効果を生む後半部まで聴き応え満点で、この日一番の創造性に満ちた演奏を楽しめます。
 Set The Controls For The Heart Of The Sun も演奏時間の長さを感じさせないきっちりとコントロールされた見事なパフォーマンスです。
 ラストはロジャーの「最後の曲。新曲だ。次のアルバムに入る予定の曲」という紹介でスタートする初期型Atom Heart Mother。

 とにかくあまりに音が良いので、まだまだ発展途上にいる生まれたばかりの20分近い大作インストナンバーを最良のサウンドで堪能できます。構成の基礎たる部分は既に完成されており、それぞれの細部をメンバー間の有機的な結合によるサウンドでじっくりと構築していく様は素晴らしく、フロイド・ファンは至福の時を味わえます。
 音質・内容・価値、これ以上はない程に素晴らしく、1970年初頭のヨーロッパ・ツアーをマスター・クオリティの最高音質で103分に渡って捉えた最高傑作。200枚限定のプレスCDにてリリース決定です。

 ★beatleg誌 vol.110(2009年9月号)のレビュー要約です。ご参考まで。
 1970年3月のLund公演を収録。以前にAyanamiレーベルからリリースされたことのある公演だが、今回のリリースではマスターテープに極めて近いジェネレーションの音源が使用されており、音質の向上が顕著だ。この当時の最新アルバム『Ummagumma』のプロモーションも兼ねており、オープニングの「Astronomy Domine」は、Watersの「『Ummagumma』に収録」という曲紹介に導かれてスタートする。1970年のステージで演奏される楽曲は、ジャムを中心に徐々に長大になっていくが、その反面、与えられたギターソロの小節を埋めるのに四苦八苦する、Gilmourの稚拙な演奏が興味深い。日本のグループサウンズの楽曲で聴ける、チョーキングのないギターソロとよく似ている。ラストには、この年の1月に初演された「Atom Heart Mother(この当時は、The Amazing Pudding)」が披露される。200枚限定のファクトリープレス仕様。』

Lund Master (Sigma 41)
 
 Live At Akademiska Foreningens Stora Sal,Lund,SWEDEN 20th March 1970

  Disc 1
   1. Astronomy Domine
   2. Careful With That Axe, Eugene
   3. Cymbaline
   4. A Saucerful Of Secrets
   TOTAL TIME (46:28)

  Disc 2
   1. The Embryo
   2. Interstellar Overdrive
   3. Set The Controls For The Heart Of The Sun
   4. Atom Heart Mother
   TOTAL TIME (56:08):

 Careful With That Axe, Eugene
 
 A Saucerful Of Secrets
 
 The Embryo
 

[参考]
 Atom Heart Moo Live (WPOCM 0390 F 048-2)
 
 Interstellar Highlights (FP 70-A/B)
 
 Lund Sweden 1970 (FARM 20507)
 

Atom Heart Mother
[原子心母]




1970
 January
  10 The Ballroom,University Of Nottingham,Beeston,Nottingham,UK
  17 Lawns Centre,Cottingham,Hull,Yorkshire,UK
  18 Fairfield Hall,Croydon,UK
  19 The Dome,Brighton,UK
  23 Civic Hall,Wolverhampton,UK (Cancelled)
  23 Theatre des Champs-Elysées,Elysée,Paris,FRANCE
       [Broadcast On Europe 1 Radio]
  24 Theatre des Champs-Elysées,Elysée,Paris,FRANCE

 February
  02 Palais des Sports,Lyon,FRANCE
  05 Cardiff Arts Centre Project Benefit Concert,Sophia Gardens Pavilion,Cardiff,UK
  07 Royal Albert Hall,Kensington,London,UK
  08 Opera House,Manchester,UK
  11 Town Hall,Birmingham,UK
  14 King's Hall,Town Hall,Stoke-On-Trent,UK
  15 Empire Theatre,Liverpool,UK
  17 City Hall,Newcastle-upon-Tyne,UK
  22 The Electric Garden,Glasgow,UK
  23 McEwan Hall,University Of Edinburgh,Edinburgh,UK
  28 Endsville '70, Refectory Hall,University Union,Leeds University,Leeds,UK

 March
  05 Studio B, BBC TV Centre,White City,London,UK
      [Line Up, BBC1 TV, Broadcast 13 March]
  06 Great Hall,College Block,Imperial College,London,UK
  07 University of Bristol Arts Festival - Timespace,Colston Hall,Bristol,UK
  08 Mothers,Erdington,Birmingham,UK
  09 City (Oval) Hall,Sheffield,UK
  11 Stadthalle,Offenbach,GERMANY
  12 Kleiner Saal,Auditorium Maximum,Hamburg University,Hamburg,GERMANY
  13 Konzert Saal,Technische Universität,Berlin,GERMANY
      [Two Shows]
  14 Grosser Saal,Meistersinger Halle,Nuremberg,GERMANY
  15 Niedersachsenhalle,Hannover,GERMANY
  18 Gothenberg,SWEDEN
      [Cancelled]
  19 Stora Salen,Stockholm Konserthus,Stockholm,SWEDEN
  20 Akademiska Foreningens Stora Sal,Lund,SWEDEN
  21 Tivolis Koncertsal,Copenhagen,DENMARK
  30 Le Festival Musique Evolution,Le Bourget,Aeroport de Paris,Siene St Denis,FRANCE

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