出典元 ファイナルファンタジーVII アルティマニア オメガより一部抜粋しています

 

 

 

 

 

 

 伏線がどうつながっていくのか、開発の終盤まで誰にもわからなかった


──『FFVII』のシナリオは、具体的にどのようにして作られていったんですか?

北瀬佳範:最初は、坂口さんのプロットをもとに、こんなネタをやりたいとか、こういうシーンを入れたいなんていうバラバラのパーツを、僕や野村が考えていきました。そのパーツを野島さんに渡して、まとめてもらった形です。もちろん、野島さんにもやりたいネタがありますから、そこに僕らのネタを混ぜてもらうという感じですね。

野島一成:ほかの人のネタをちゃんと入れたり、知らないフリをして無視したり(笑)。

野村哲也:セフィロスについては、最初は全然ちがう話を考えていたんですよ。たしか、セフィロスとその仲間を、クラウドたちが追うっていう話をプロットとして書いた気がする。それがジェノバとかリユニオンの原型になっていますね。

野島:みんな、クラウドよりもセフィロスが好きだったような覚えがあるなあ。クラウドの行動は決まっていなくても、『ここではセフィロスが何をする』ということだけは決まってたから(笑)。

北瀬:クラウドが自分探しをするっていうネタは、野島さんのアイデアでしたっけ?

野島:たぶん僕ですね。単純に世界を救う話だと燃えないなと思って。もともと、主人公自身に何か問題があるような話は好きだったので、そんな物語にしたいなと。

北瀬:そういったシナリオ作りと並行して、各地のロケーションごとに担当者がイベントを作っていくんです。昔からの『FF』スタイルですね。

──つまり、複数の担当者が作ったイベントを、ひとつのシナリオとして統合していくと。

野島:そうですね。クラウドが本当はソルジャーじゃないとか、ニブルヘイムではこんなことが起っていたっていうのは、大ざっぱに決まっていて、そこに各地のイベントを取り入れていった感じです。

北瀬:たぶん野島さんとしては、そういう作りかたはそれほど苦じゃないと思うんだけど、その一方で僕なんかが急に『ゴールドソーサーで遊ばせてよ』みたいな依頼を出すと、困っちゃうわけですよね。

野島:そう。最初から内容がわかっているイベントは、なんとなくシナリオに吸収できるんですけど、あとから出てきたマップとかアイデアとかは、設定にうまくハマってくれなかったりして苦労するんですよ。『こんな時代に、ゴールドソーサーにどんな客がくるんだよ』とか(笑)。そういえば、あのころはキャラクターのモーションをプランナーが作ってたよね。

──あのバレットの動きは北瀬さんが作っていたんですね。

北瀬:そうなんです。ちゃんとCGのソフトを立ち上げてモーションを組んでましたよ。ただ、開発の後期からは、本職のモーションデザイナーさんに担当してもらいました。

野島:そういえば、ジュノンでガス室に閉じ込められたティファが逃げ出そうとするシーンのモーションを見て、北瀬さんが苦笑いしていたのを覚えてますね。

北瀬:そう、『やっぱり本職の人が作るとちがうなぁ』って思ってた(笑)。

──野島さんもモーションを作られたんですか?

野島:いやあ、僕が作ったモーションは、本職の人が作ったものとあまりにも差が激しかったので、ほとんど作り直してもらったんですよ。だから、僕が担当したシーンのモーションは、全部かっこいいはずです(笑)。

北瀬:野島さんはどのへんのイベントをやってましたっけ?

野島:えーっと、エアリスとクラウドが会う教会とか、北の大空洞とか、あとはニブルヘイムあたりですか。シナリオがなかなか完成しなかったので、お話的に重要なロケーションのイベント作りがどんどんあとまわしになって、結局僕が担当することに……。

北瀬:その手法は結構使ってますよね。シナリオ上で重要な場所のイベント担当を自分にしちゃえば、少しくらいシナリオが遅れても大丈夫だろう、みたいな(笑)。

野島:だから、そこまでの伏線がどうつながっていくのか、開発の終盤まで誰にもわからなかった。

北瀬:野島さんしか知らなかったんだよね。

野島:そうそう。いろんな人が聞きにくるんだけど、まだ頭のなかにモワーッとあるだけで形になる前だったから、ヘタなこと言えなくて。

直良有佑:だから、当時はみんながそれぞれ勝手に想像をふくらませていましたよ(笑)。

──『FFVII』の登場キャラクターは、野島さんと野村さんがふたりで考えられたんですか?

北瀬:野村は絵的なアプローチをして、野島さんは設定的なアプローチをした感じですね。

野島:そういえば、はじめのころは哲さんとほとんど口をきいたことがなかったあ。

北瀬:そうだったっけ?どうやって打ち合わせていたの?

野島:北瀬さんを介してやってた(笑)。まあ、口頭での打ち合わせはなくても、誕生日がいつで、歳はいくつで、こんな性格で、みたいなキャラクターごとの設定を哲さんが作ってくれていたから。

──シナリオについて、おふたりで話し合ったりはしなかったんですか?

野村:うーん……『FFVII』のときは、そんなに話し合った覚えがないんですよね。

野島:話してないってことは絶対にないと思うんですけど、そんなに頻繁にはやってないんじゃないかな。

野村:毎回そうだけど、僕は最初のころの『どういう作品にしようか』という段階では結構アイデアを出すけれど、実際に野島さんがシナリオを書く時期になったら、すべておまかせで、あんまりタッチしないから。

 

 

 

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