出典元 ナルト展「公式ガイドブック 道 -MICHI-」より一部抜粋しています
何より世界ではやっぱり『NARUTO -ナルト-』なんです―尾田
尾田:お互いの漫画上、やっぱり勝ったり負けたりっていうのはあるからさ。でも、会ってみたら本当に優しい、いい人なんですよ。もう、勝っても負けても全然変わんない。この人と争いはできないって思っちゃった。
岸本:それにお互い、相手のつらさがめちゃめちゃわかりますからね。
尾田:それがうれしいよね。キツいときって、誰に何を言ってもらうかが一番大事で。同じ立場の岸本さんに「わかる」って言われると、本当にわからってもらえた気がするんだよ。
岸本:本当にわかるから(笑)。でも、僕はまだ楽なほうだったと思う。尾田さんはずっとトップを走っていて、そのつらさや苦しさは尋常じゃないはずだから。僕だったらプレッシャーやストレスで胃に穴があくかもしれない。
尾田:『NARUTO -ナルト-』と競い合うことができたのは、本当によかった。一番ありがたかったのは、完全に勝たせてくれないところ。実際に週刊連載の中で勝てなかったり、何より世界ではやっぱり『 -ナルト-』なんですよ。どこか悔しさを持たせてくれるのが、本当にありがたくて。そういう存在って、ほかにないんですよね。
岸本:僕は『ONE PIECE』を目指すっていうか、常に勝ちたいと思っていた。間違いなく、そこは意識してましたね。
セリフって、自分が本気で思ってないと全然うまくいかない―岸本
岸本:いつだったか、尾田さんに会ったとき、どういう気持ちで漫画を描いてるのか、本音を知りたくて、こそっと聞いてみたことがあるんです。
尾田:何を話したか覚えてる?
岸本:尾田さんは覚えてないんだ(笑)。そのとき、「どうやったらうまく描けるかとかじゃなくて、自分で苦しんで毎回描く、そういうスタンスいくべきだ」って話してくれて。すごく納得したんですよ。
尾田:追いつめられたときって、結局は気持ちで描くじゃん。
岸本:結局は、そうなんですよね。だからキャラクターに言わせるセリフって、自分が本気で思っていないと全然うまくいかない。魂がこもらないっていうか。
尾田:伝わらないよね。本気で考えて、気持ちで描かないと。
言い訳のうまい漫画家が面白い作品を描くんじゃないかな―岸本
──『NARUTO-ナルト-』のラストに向かう流れの中で、岸本先生はどのあたりに苦労されましたか?
岸本:サスケをどうきっちり描いてあげるかですね。それまでナルトの内面はけっこう描いてきたんですけど、サスケの本当の心情はずっと隠してきたんです。最後に明かすことになるわけですが、そこに持っていくまでが大変で……。クライマックスはナルトとサスケのバトルって最初から決めてたんで、イメージ通りと言えばイメージ通り。ですが、その間はまるでイメージ通りにはいかなかったという……。
尾田:最初に考えてたことって、描いてるうちにどんどん飽きてくるからね。それより面白いことを思いついたら、やっぱりそっちに行くべき。せっかく思いついたのに面白いほうにしないのは、読者にも悪いしね。
岸本:絶対、そっちに行っちゃいますよね。ハッってひらめいたりしたら。
尾田:で、行っちゃったら翌週困るんだよね。その先を考えてなかった、どうしようって(笑)。
岸本:言い訳探しが始まるんですよ。つじつまを合わせる言い訳(笑)。だから、言い訳のうまい漫画家が面白い作品を描くんじゃないかな。
尾田:まとめ上手の能力は必要だよね。
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