黒子のバスケ 実渕玲央
「きったないわね!てゆか試合前にドカ食いってなんなわけ」
「うっさいわねー」
「え?征ちゃん今日スタメン?」
「ちょっとぉ~寝てんじゃないでしょーね?」
「要はアナタ以外足手まといってことよ 悪いけど」
「確かにアナタは2人がかりで抑えるのがやっとだけど
あとの4人はそれ以上の差がある
特に彼…小太郎を相手にいつまで保つかしらね?」
「ごめんなさいね うるさいのは苦手なの
ちょっと静かにしてもらおうかしら」
「けっこう欲張りなのよ こう見えて私って…」
「アンタのイタイからイヤっ!」
「だからー いつでもできるわけじゃないんだってば!」
「しょーがないでしょ 反省点の多い試合だったんだから」
「そこからパスを出してフィニッシュ
シンプルだけど キレイだわ」
「まだ決まってないでしょ アンタもう少し考えて生きなさいよ」
「知んないわよ!」
(でも確かに理解できないわ
残り39秒…万一外しでもしたら海常はキープすれば勝ち…
黄瀬ちゃんで勝負に行く必要すらなくなる
ここは絶対に落とせない
…その意味でも一番大事に攻めなければいけない場面で
今必要なのは気合や勢いじゃない
まるで ヤケクソだわ)
「アンタ どんだけ今日食ってきたのよ!?長すぎでしょ 過去最長じゃないの!?」
「日向順平 あんた一緒に誠凛のビデオ見たでしょーが
イモくさいのはタイプじゃないけど ちゃんとかわいがってあげるわよ」
「それより 心配なのはアンタなんだけど?火神でしょマーク」
「軽いわねー 相変わらず…状況わかってんの?」
「…なら いいけど」
「ファンブルがなければ決められたのに 残念だったわね」
「なっ!?」
「むっ」(やっかいね…二年生も気合のってきてるじゃないの…!!)
「手がつけられないわね……!」
「なっ…」
「っもう!やられた!」
「っと ごめんなさいね」
「まぁね けど 問題はそこじゃないわよ 順平ちゃん?」
「…何も?見えてたからとったの それだけよ?」
「どーゆうつもりか知らないけど
戦力外のカレを入れたまま ウチとやろうなんて甘いんじゃない?」
「!! しまっ……」
「…ふーん」
「っうん もうっ やられたわァ」
「征ちゃんスローイン!ボール入れるわよ!」
「入ったけど……下手ねぇ まだまだってカンジ」
「アラ うれしい 第1Qの終わりけっこーカチンときたのよね」
「ぶっつぶしてアゲル♡」
「行くわよ 覚悟はいいかしら?」
「だめよぉ それじゃ」
「!!」(重心を残す位置が遠くなってる…!!)
「やっぱりそう思う?」
(けどまあ似てるだけだけどね もし私の形をマネしたとしても
とっくに消化して自分に合う形にカスタムしてる 別物だわ)
「悪くないわね…!ボール回してね 征ちゃん」
「見直したわアナタ…思ってたよりずっといいシューターね
だからお礼にいいもの見せてア・ゲ・ル♡」
「♡」
「あらん」
(ふ――ん…
………思ったより早かったわね)
「征ちゃん 私の方はあと一球でいいわ」
「格付けすんじゃったわ この勝負は私の勝ちね」
「てゆか 毎回あれ言うの ホントやめてくんないかしら(マッスル○○っての…)」
(だから…全力でダンクするだけでしょーが)
「撃たせないわよぉ?」
「何が?」
「ホラァ ヘンなこと言ってボケっとしてるから!!」
「どうかしらね………むしろ必死にふり払ってるようにしか見えないけど
今にも心を覆いつくそうとしている 絶望の闇を」
(ふーん… やっぱり…ねぇ)
「短い間だけど楽しめたわよ 順平ちゃん♡」
「ごめんなさい ちょっと気が抜けちゃったのかしら すぐに締め直すわ」
「どういうつもり…!?」
「っ………」(しまった…!)
(どういうこと………?
確かにカレはスクリーンのかけ方は上手いけど……
まさかそれだけのために出てきたわけじゃないわよね…?)
「え?」
「しぶといわねぇ っもう!」
「これは…」
「けど…征ちゃんには勝てないわ…!!
そのゾーンでもだめだった前半を忘れたの?」
(しまった…また!!この子…スクリーンが単純にマジで上手いわ!!)
「命拾いしたわねぇ ホント…」
「あそこでもしムキになってすぐやり返そうとしてたら
アンタどうなってたかわかんないわよ」
「んもうっ」
「アタシは小太郎みたいに相手によってテンションコロコロ変わったりしないわよ?
……って
なんでアンタ ちょっとドヤ顔なワケ?」
「は?」
(リアクションしづらい!!)
「くっ…」
(いきなり豹変するわね!天然ていうか
…なんとなく 小太郎に似てるかも)
(野性…!?
…まあレベル的には
トラ。黒ヒョウ。チーター。にゃん。
…ぐらいの差はあるケド
…けっこう うすめ…!!
普通の3p(スリー)でも勝負できる…けど
誠凛の子たちに決して油断はしない
少し差が縮まってしまったこともあるし
「地」のシュ…
――え!?
一歩下がった!?「地」でくると読んだの…!?
まさか ありえないわ
たまたま下がったのなら
「天」のシュートが撃ちやすくなっただけよ!)
「え!?」
(しまった 指がかかりすぎた―――!)
(猫は猫でも 山猫か)
「つくづく 誠凛は一人残らず 油断ならないわね」
(決して ナメたりしていたわけじゃないけど……
「地」→「天」の切り替えに反応してくるとは正直思わなかったわ)
「…………」
「今度のは わかったところで 何もできないわよ」
(4ファウルで おっかなびっくり かろうじてプレイするのがやっとかと思ったケド…
まさかここで この試合一番のキレとはね…!)
(跳んでない…!?まさか……
「地」を読まれた!?)
「…やってくれたわね 順平ちゃん」
「マジで 潰すわ」
(日向順平………
コイツは 危険だわ
アタシのシュート3種を見分けて反応してくる
ならばその中でも
たとえわかっていても
止められない…
「虚空」で勝負
…したい所だけど
ファウルにもかかわらず第4Q頭から出てきた
と言うことは
「虚空」に対しても何か掴んでいるかもしれない
スリー以外で勝負か
ボールを回すか… いいえ だからこそ勝負!!
シューターとしても「天」「地」にも
自身と自負はある
けどアタシにとって その二つ以上に「虚空」へのそれは別格なのよ…!!
そして洛山選手としても 引くわけにはいかない
アタシのプライド全てを賭けて「虚空」を撃つ!!)
「え……?
ちょ…征ちゃんそれってどういう…」
(征ちゃん…征ちゃんの眼はあの時と同じ…)
「…征ちゃん」
「そんな…ウソでしょ!?
止めて小太郎!!」
「ウソ… でしょ…」
「…ちゃん 征ちゃん!聞いてた 今の話!?」
「くっ…」
(けど ひっどいパスね もう!!
まるで別人から受けてるみたい
ストレスたまってしょうがないわ…!)
「ウソ…!?」(征ちゃんが謝った…!?)
(ウッソ 征ちゃんがエール…!?
それに今のパス
位置・タイミング 指がかかるボールの縫い目の角度までカンペキ
私のステップに合わせるためにワンバンさせて
試合中あんなに気持ちよくシュート撃てたのなんて初めてだわ…!!
さっきまでの姿がウソみたい…
ワケがわからないわ
なんなのよ もうっ
テンション上がっちゃうわね……!)
(キレが落ちてるわよ!!そんなの撃たせると思ってんの!?)
(他の4人も同様 動けてはいても決して早くなったりはしてないわ
けど……)
「征ちゃん!」
「ゾーンの速さのチームプレイ…なんて
まさか そんなことが……」
「チィッ」
(3本と言ってもそれはスリーを入れての話……
ならアナタは最警戒に決まってんでしょ!!)
(…最悪…だわ!!
とっさの反応に理性のブレーキが入って
中途半端なブロックになってしまった
いっそ思い切りぶつかるでもした方がまだマシだった…)
「みんな…ごめんなさ…」END
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