黒子のバスケ 赤司征十郎



「ムダ口をたたくな 帰ってすぐミーティングだ」
「すまない待たせたね」
「大輝 涼太 真太郎 敦 そしてテツヤ…
また会えて嬉しいよ
こうやって全員揃うことができたのは実に感慨深いね
ただ場違いな人が混じってるね
今僕が話したいのはかつての仲間だけだ
悪いが君は帰ってもらっていいかな?」
「真太郎 ちょっとそのハサミ借りてもいいかな?」
「髪がちょっとうっとうしくてね ちょうど少し切りたいと思っていたんだ」
「まあ その前に 火神君 だよね?」
「…へぇ よく避けたね
今の身のこなしに免じて今回だけは許すよ
ただし 次はない 僕が帰れと言ったら帰れ」

「この世は勝利がすべてだ
勝者はすべてが肯定され敗者はすべて否定される
僕は今まであらゆることで負けたことがないし
この先もない
すべてに勝つ僕はすべて正しい
僕に逆らう奴は 親でも殺す」
「いや 本当は確認するつもりだったけど
みんなの顔を見て必要ないと分かった
全員 あの時の誓いは忘れてないようだからな」
「許す
やらせてみよう」
『バスケ部を辞めろ これは命令だ
むしろこれはお前を気づかってのことだ
素行は決してほめられたものではないが
今まで帝光の勝利に貢献してきた
だがお前では黄瀬には勝てない
近い将来スタメンの座を奪われるだろう
そうなればプライドの高いお前は結局いなくなる
早いか遅いか どちらにせよ結果は変わらない』
『オレは敗北を知らない
はは いや…すまない
ただ今ふと思っただけだ
決して望んでいるわけじゃない
知らないから興味があるというだけだ
それ以上のイミはない』
『…そうだな もしお前と戦うことになれば
さすがに手加減はできなさそうだ
負ける気は毛頭ないがな』
『ところで緑間…』
「ああ 彼らは強いよ」
「カントクも同意済みだ」
「それは無理だ 真太郎
一度でも僕に投了させたことがあったかい?」
「同じさ 僕が今まで間違ったことを言ったことは 一度もない
すべてに勝つ僕は すべて正しい」
「…へぇ」
「ナメてなどいないよ
むしろこの上なく慎重に進めているぐらいだ
切り札をそう簡単に切るわけにはいかないさ
……ただし
切らずに終わってしまうかもしれないな
このままでは」
「さっきの言葉 もしわかりにくければ言い直そう」
「ボクが直接手を下すまでもない それだけのことだよ」
「いや…必要ない
これ以上人数をさくのは逆効果でしかない
五将といえど今の真太郎を止めるのは難しいだろう
後半は1人でいい
真太郎とは僕がやろう」
「開会式以来だねテツヤ」
「もちろん覚えているよ 火神大我」
「実力も評価している
…だが 一つ忠告しておこう
ボクと目線を変えずに話すことを許しているのは
ボクに従う者だけだ
逆らう者は何人たりとも 見下ろすことを許さない
頭が高いぞ」
「テツヤも 僕とやるつもりなら覚悟しておくことだ
お前の力を見いだしたのは僕だ
いずれそれを思い知ることになる」
「来い 真太郎」
「…抜く?そんな必要はない
キミがどくんだ」
「逆らう者は何人たりとも 見下ろすことを許さない」
「頭が高いぞ」
「…どいてもらおうか」
「いいや 僕の命令は絶対だ」
「真太郎…お前は強い
だが負ける
お前たちを従えていたのは誰だと思っている
たとえ『キセキの世代』でも僕に逆らうことなどできはしない」
「ムダだ どけ…真太郎
僕の命令は絶対だ」
「負けたらの話だ 勝てば問題ない
心配などしていない
なぜなら僕は確信している
お前たちがいて負けるはずがない」
「宣言しよう お前はもうボールに触れることすらできない」
「言ったはずだ 絶対は僕だと」
「終わりだ 真太郎」
「改めて敬意を表するよ 真太郎…そして秀徳高校
最後まで誰一人闘志を失わなかった…だが
届かない
眠れ 歴戦の王よ」
「ああ あと明日からは送迎もしないでくれ」
「父は関係ない
それに毎朝そんなことされては変に目立って笑われてしまうよ
学校ぐらいオレの自由にさせてくれ」

「おっと 気をつけて
あといつもありがとう
日々チームを支えてくれていることに感謝しているよ」
「行こう緑間」
「青峰 最近見ないと思っていたらこんな所にいたのか」
「まあ どこで練習してもかまわないが 彼は?」
「…いや 彼に少し興味がある
面白いな… 初めて見るタイプだ」
「もしかしたら
彼はオレ達とは全く異質の才能を秘めているかもしれない」
「悪いが全員先に帰っててくれないか?彼と少し話がしたい」

「いくつか質問してもいいかな」
「……なるほど
やはり面白いな
初めて見るよ キミほど……
バスケットボールに真剣に打ち込み
その成果が伴っていない人は」
「ああっ すまない そういう意味ではないんだ
オレは感心しているんだよ
運動能力は低いが運動神経は悪くない
頭が悪いわけでもなくスポーツIQはむしろ高いと言っていい
キャリアと練習量も十分経験者と呼べるものだ
にもかかわらず… キミを見ても何も感じない
これは極めて特殊なことだ
普通どんな人間でも何かスポーツをある程度やりこめば
強弱の差はあれ経験者特有の空気がでる
出てしまうものなんだ
平たく言えば キミは日常生活に限らず
スポーツ選手としても存在感があまりにない
繰り返すがこれはとても特殊なことだ
短所ではなく むしろ逆…
これはキミの長所だ
生かすことができれば必ず大きな武器になる」
「緑間 聞いていたのか」
「…さあね 可能性は感じたが 会ったばかりの他人だ
友人などではない
あれこれ世話をする義理はないね
オレは糸を垂らしただけだよ
それを登ってこれるかどうかは 彼しだいさ」
「…やあ 黒子君 待ってたよ
三ヶ月ぶりだね 答えは出たかい?」
「やぁ…待っていたよ
ようこそ 帝光バスケ部一軍へ」
「そして肝に銘じろ 今この瞬間からお前の使命はただ一つ 勝つことだ」
「遅刻だぞ灰崎」
「いや…だが油断はするな」
「灰崎です」
「はい」
「落ちついて 黒子君
まずはゆっくり…」

「いや…全然大丈夫ではないね!?」
「いや… これはさすがに… 想定外だ」
「落ちついて まわりをよく見るんだ」
(ミスが多すぎる…
緊張か まだ型(スタイル)が完全に自分のものになっていないか… その両方か
とにかく このままではマズいな)
「だからと言って下手でもいいと言う訳ではないが…」
「今度は仮ではなく正真正銘のレギュラーだ
おめでとう」
「困ったね」
「口で説明してもあの調子ではまず納得しないだろうね」
「いえ… ただ虹村さんの心配をしているだけです」
「なんだ 緑間はまだ黒子のことを認めていないのか?」
「…いえ 少し様子を見ましょう」
「まさか オレはいつも通りやっているよ」
「…どうやら解決したようです」
「手を貸すな
全中は一日二試合が連日続く
この程度ついてきてくれなければ困るよ」
「よーし次 4対4いくぞ!!」
「黄瀬 やめろ!!」
「一つ忠告しておこう
ここからはもう そうそうファウルをとれるなど思わない方がいい
全力で守ることを勧めるよ」
「さあ 最後まで油断せずいこう」
「黒子 今日は朝練はないはずだが…」
「そうか… ちなみにさっきのは何をしてたんだい?むぃーって」
「……オレは何もしてないよ
確かにあの時オレは黒子に可能性を感じて声をかけた
けどそこからはい上がってきたのは黒子自身の力だ
しかもその力あってこその今年の優勝だった
礼ならばむしろオレが言いたいぐらいだよ
ほっとするのはまだ早いよ
オレ達にはもう一年ある
来年に向けてまた気をひきしめなければ
三連覇のためにね」
「昨夜コーチから連絡があってね
職員室に行ったが少し早く着きすぎてしまって
まだだったのでこれからもう一度…」
「桃井 君もか?…どうした?もしやもうコーチと話したのか?」
「はい」
「問題ありません」
「……はい 父さん」
「監督の真意はわからないが 正直賛成しかねるな」
「バカを言うな そんなこと許せるはずない」
「…なんだと」

「今何と言った?紫原」

「どけ桃井」
「聞き捨てならないな 紫原
キャプテンが必ずしも一番チームで強くある必要はないが
そこまでハッキリ歯向かわれては話は別だ
力ずくでなければならないのならそうするまでだ
自惚れるなよ」
「一対一
5本先取だ」
「少しお灸をすえてやる」
(オレが…
赤司征十郎が 負ける…?
ありえない…
そんなこと あってはならない…!!
勝たなければならない
誰が相手でも
何があっても …でなければ
この世は勝利がすべてだ
勝者はすべてが肯定され
敗者はすべてが否定される)
「すべてに勝つ僕は すべて正しい」
「少し調子に乗りすぎだぞ敦
あまり僕を怒らせるな
僕に逆らう奴は
親でも殺すぞ」
「遅かったな… もうみんな着がえている
早く体をふけ 風邪をひくぞ」
「……… その顔はどうやら だめだったようだね」
「…そうか
ならばもう… しょうがないな
「僕は赤司征十郎に決まっているだろう テツヤ」
「…またその話か
僕は変わってなどいない
ただ元から僕は二人いて
それが入れかわっただけだ」
「別に隠すつもりなどない
信じようが信じまいがテツヤの自由だ
ただもし そのことを変わったと言うのならば
それは必要だったからだ
僕が変わったからチームが変わったのではない
チームが変わったから僕も変わったんだ
皆の突出した才能が目覚め始め
もはや外に敵はいなくなった
あるとすればそれは外ではなく内…
僕らお互いが敵となることだ
大きすぎる力を無理にまとめようとすれば
お互いに反発し合い 内部から崩壊する可能性がある
僕らはもう力を合わせるべきではないんだよ」
「もし辞めたいのならば止めはしない
あとはお前しだいだ
続けたいのならば受け入れろ
この先も 帝光のシックスマンであり続けたいのなら」
「面白そうだね
どうせなら僕も乗ろうか」
「かまわないよ
試合で勝てば文句はない… むしろ気が抜けてしまう方が考えものだ
それで少しでもやる気が出るなら奨励したいぐらいだ」
「ささいな余興だ
真太郎もそうイラつくな」
「わかった
この後ミーティングだ
早く戻れ
桃井も一緒に着いていってくれ」
「もし遅くなるようなら連絡を」
「誰だいキミは…テツヤに何か用かい?」
「決勝の対戦校か …荻原?
なるほど 先のテツヤの試合ぶりはそういうことか」
「………
質問の意味がわからないな」
「…それが楽しむことだとでも言うのか?くだらないな
負けても楽しければいいなど弱者の言い訳だよ」
「やはり 響かないな 何も
負ければ結局ただのキレイ事だ
時間のムダだったね
言う通り眼中にないよ
チカラも言葉も」
「テツヤ… 具合はどうだい?」
「だめだ…医者に安静にしていろと言われている
大人しく寝ているんだ」
「わかっている 荻原君だろう?」
「先ほど廊下で会ったよ
絶対にまたやろう そう言っていた」
「なんだ?」
「…いいのか?どんな点差になっても」
「………
わかった 思い知らせてやろう
帝光の力を」
「大丈夫だ 別状はない
残念ながらこの試合出ることはできないが…」
「そうだね…ところで
さっきは何を話していたんだ?」
「……フム
いいじゃないか
ただの点取りゲームよりはるかに楽しめそうだ
それに 今からの相手にもうってつけだ」
「なぜ…?どちらにしろ戦力差は圧倒的だった
どうやっても結果は変わらなかっただろう」
「試合をコントロールしただけだ
漫然と点を取り続けるより よほど選手達は集中していたよ」
「詭弁に聞こえるならそれでもかまわないが
手を抜くなと言うならなぜ他の試合では何も言わなかった?
自分と関係のない相手の時は目をつぶり
友人とやる時だけそれらしい事を言うなど
それこそが詭弁だと思うがね」
「今ここではっきり代弁しよう
皆ほぼ同じ気持ちのはずだ
そもそも僕らは『キセキの世代』などとひとくくりに呼ばれることを嫌悪している
もし戦えば必ず優劣がつくはずだし
自分より上がいるはずがない
それを証明するために
自分以外を淘汰しなければ気がすまない
理屈ではなく本能が」
「……いや 目指すものはまったく違うが
テツヤも必ずこの戦いに加わるはずだ
答えがまだすべて出たわけではない
だがそれでも決めたようだからね
自分のバスケを曲げない覚悟だけは」
「なまじ光ることを覚えたばかりに お前はもはや影にもなれなくなった」
「見るに耐えない愚行だよ
唯一最大の長所を自ら手放すとは
幻のシックスマンでなくなったお前では
すでに並の選手の価値もない
こうなることに 今になるまで気づけなかったなんて
失望したよ テツヤ」
「……おっと 少し甘かったか」

『黛さんですか?どうも』
『?つい先日まで同じバスケ部だったでしょう』
『ああそれは…知り合いにあなたとよく似た人がいるからかもしれませんね
ところでそれは何を読んでるんですか?』
『ラノベ?』
『面白いんですか?』
『…フッ』
『いえ… つくづく知り合いに似ていると思ったので』
『幻のシックスマン そう呼ばれていました』
『えぇ…そしてここからが本題
黛 千尋 あなたに 新しい幻のシックスマンになってほしい』
『あなたは彼とそっくりな資質を持っている
練習を見せてもらいましたが その能力も彼と同じかそれ以上です
僕が同じ技術を伝授して さらに退部取り消しと一軍推薦もしましょう
どうですか?』
『フッ』
『面白い 元から全く同じスタイルなど求めていない
なおさら気に入った お前ならテツヤを超える幻の選手になれる』
「もちろんそのつもりだよ玲央 存分にやるといい」
『もはや勝負は9割方決まった …だがまだ9割だ
誠凛はまだ完全には死んでいない
特に 4番(シューター)日向と10番(エース)火神
この二人を今 波に乗らせると万一の可能性がある』
僕が手を 緩めるとしたら
それはキミ達が完全に絶命した時だけだ」
「…そうか
頭は冷えたようだね
ならばいい
挽回まで大目に見よう」

「ヌルい」
「玲央 むこうは日向が出てくるようだ…だが
ファウルでも決して油断するな
永吉 木吉の眼はまだ死んでいない 玲央同様気をひきしめろ
小太郎 いつまでおとなしくしているつもりだ まだ点をとってもらうぞ」
「勝つのは洛山 絶対は僕だ」
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