〇はじめに
現在まんがタイムきららにて連載中で、2023年にアニメ化された「星屑テレパス」の聖地を紹介します。
本作の聖地はネットで調べても出てこず、作中で舞台について言及するシーンは皆無なので、特定は困難を極めました。
まだまだ未完成な部分が多いですが、ひとまず重要な所だけでもと思い、聖地巡礼して来ましたのでまとめます。
なお、無断転載となってしまうため、原作のコマとの比較等は行いませんので、予めご了承下さい。
また、本記事はネタバレを含みますので是非原作をご一読した上でお読みください。
○星屑テレパスについて
最初に本作について軽くご紹介します。
ざっくり雑に紹介すると、宇宙に憧れる女子高生小ノ星海果が記憶喪失の宇宙人明内ユウや副学級委員長の宝木遥乃、ツンデレ機械オタクの雷門瞬たちと一緒にロケットを打ち上げる話です。物理学や宇宙工学的観点から見てもかなり本格的な上に百合描写が充実しており、色々な視点から楽しめる作品です。
○作品の舞台
本作は静岡県静岡市を舞台としています。清水区周辺の描写が多いですが、区外のシーンもあります。
冒頭にもお話しした通り、作中において舞台がどこであるかは一切言及されておりません。それどころか、モデルとなっている場所や建物も、完全再現ではなく一部オマージュしているケースが多く、聖地の特定はかなり困難でした。また、登場人物たちの行動範囲に現実味がなく、平気で10km以上の距離を寄り道している計算になります。作中の場所単体にはモデルがあるものの、地理的条件はあくまでも架空のものとして取り扱っているものと思われます。(地名も架空のものに変えられています)
○聖地巡礼
ここからは実際の聖地を作中に登場する順番にご紹介します。
各聖地は本記事末に地図を掲載しておりますので、併せてご覧いただければ幸いです。
①灯台(静岡市清水区)
図1
作中で最も重要な場所です。
モデルは三保半島所在の清水灯台(三保灯台)です。
作中では廃止されていることになっていますが、実際の灯台は現役で使われています。
図1は灯台の裏側から撮影した写真です。正面側は、門に鍵がかけられていて入れない為、撮影不可です。
ただ、作中と実際で相違点が多くありますので以下に列挙します。
・所在
原作4話「白波コンフェション」では「南の岬の灯台」と呼ばれていますが、実際の所在は海岸沿いです。
そもそも岬が存在しません。
岬が存在しないことにより、再現不可能な描写も多いです。
例えば作中で海果が灯台に向かって走る描写がありますが、作中で描かれているような灯台(岬)に通じる道路が存在しません。
あくまでも灯台そのものがモデルになっているだけで、灯台周辺の描写は全て創作です。
また、アニメの放送が始まったことでわかったこともあります。OPの最後で4人が地上に落下するシーンで、一瞬空から陸を鳥瞰する描写があります。一瞬ですが、三保半島と思われます。そして雲を通って灯台上空に場面が移りますが、実際には存在しない岬があることがわかります。この描写から、実際の清水灯台の辺りから岬が突き出ているのが本作における架空の地形ということがわかります。
・灯台の構造
作中の灯台は正面側から見て右側に建造物(地下室入口)がありますが、清水灯台は正面側から見て左側にあります。また、建造物の反対側にある灯台を囲む半円状の壁(壊れかけ)も存在しません。
また、扉と2つの窓、その上にデッキという構造は共通していますが、扉と窓の間隔が異なります。というより、灯台そのものの縮尺が異なっていると言った方が正確です。
さらに、作中の灯台は水平断面が円形ですが、清水灯台は八角形になっています。
図2
撮影についてですが、図2で示す通り周辺は坂や柵、松の木(三保の松原の端に所在の為)等があり、画角の再現は難しいです。
図3
図3はアニメの第一弾キービジュアルの画角をできる限り再現したものです。
キービジュアルは水平方向からの画角になっており、地上から仰角での撮影では限界があります。
また、キービジュアルと見比べるとわかりますが、作品の灯台は清水灯台よりかなり大きいです。
図4
図4はコミック3巻の表紙の画角です(再現度はかなり低いですが)。
②ショッピングモール(静岡市清水区)
図5
原作9話「胸裏シークレットベース」にて、ロケットの材料調達の為に海果たちが訪れた場所です。
場所は清水駅から南に少し行った所にある「エスパルスドリームプラザ」です。
尚、原作ではエスパルスドリームプラザを彷彿とさせる描写は無く、アニメ4話「決戦シーサイド」の同一シーンにて明確にエスパルスドリームプラザの外観が登場しています。図5はアニメで最初に映るエスパルスドリームプラザと同じ画角です。
図6
海果たちが待ち合わせしていた場所が図6です。図5の撮影場所と同じ辺りです。
図7
待ち合わせのシーンでアップになる時計です。近くの建物との高さ関係がアニメの画角とは合わず、多少修正されているようです。
図8
図9
図8は海果たちがペットボトルを回収していた場所で、秋月彗が初めて登場する場所です。図8のように、実際にはペットボトル回収箱はありませんが、少し離れた所に図9のようなゴミ箱ならありました。
図10
図10が彗が去っていく時の画角です。
図11
図11は海果たちがハンバーガーを食べていた場所です。テーブルや椅子の並びがアニメとは異なり、映り込んでいた人形のようなものもありません。
図12
図13
図12はガンバリオンの映画のポスターが貼ってあった辺りですが、実際は何もありません。また同じ場所からアニメで登場した図13の画角も撮影可能です。
図14
図15
エスパルスドリームプラザには図14のようなゲームセンターもあり、作中で海果たちが遊んだゲームセンターはここと思われます。中には図15のようなプリクラ機もありました。
図16
余談ですがゲームセンター内のクレーンゲームには静岡が舞台のきらら作品の大先輩の景品ならありました(図16)
③海岸(静岡市清水区)
図17
原作10話「決戦シーサイド」と原作28話「再戦シーサイド」にて海果、ユウ、遥乃が瞬とロケット勝負をした海岸です。
場所は清水灯台からほど近い海岸で、天気のいい日は図17の画角でも富士山が見えます。ちなみに原作では富士山は一切出てきません(少しでも出てきていればかなり特定が楽だったのですが…)。
一方アニメ4話「決戦シーサイド」の同一シーンではガッツリ富士山が映り込んでいます。
図18
アニメ放送後に改めて同地を訪れた時は天気が良く、図18のように撮れました。図17は原作版、図18はアニメ版と思って下さい。
また、原作28話では消波ブロックが写り込んでいるコマが散見されますが、原作の消波ブロックは何故か海岸の内陸側に設置されており、消波ブロックとしての役目を全うできていません(実際は図17、18のように海とのスレスレの所に設置されるのが普通です)。恐らく作中では消波ブロックを背景として使っているだけで、実際の画角では再現不可能です。また作中のコマでは海岸の後ろに森がありますが、画角的に三保の松原と思われます(図19参照)。
図19
図20
「ルルエミネット」という名前の店です。
時間の関係で筆者は中まで入れていませんが、チラッと中を見た感じ、テーブルの配置なども原作と一緒と思われます。
尚、アニメ7話「大胆リーダーシップ」では店舗の外観が変わっているほか、周辺の街並みも異なるオリジナル背景となっておりますので、是非原作を履修してから訪れてみて下さい。
図21
原作3巻18頁2コマ目の画角は概ね図21のような感じです。ただ、この踏切も作中と実際でいくつか相違点があります。
・柵の形
道路脇の柵ですが、原作では支柱と鉄線で構成されているのに対し、実際の柵は鉄製のポールを組んだものになっています。
図21は原作3巻21頁2コマ目と同じ画角ですが、写真右奥の柵を見ていただければ、形状の違いが分かると思います。
図22
・左折標識
前述の3巻18頁2コマ目の踏切には左折標識が写り込んでいますが、実際にはありません。標識の場所そのものも作中より数十メートル奥にあります。(図23参照)
図23
原作では図23の標識に左折標識が追設されています。
以上のように相違点が多く、筆者も現地に赴くまで本当に正しいのか半信半疑でしたが、道路の幅や配置などから考えると、該当する踏切は浜田踏切しかないように思われます。そもそも、この辺りの踏切となると、東海道本線と静岡鉄道の2択に絞られるため、ほぼ間違いないと思われます。
また、アニメ10話「泣虫リスタート」では周りの建物が変わっているほか生垣が追加されていますが、歩道のコンクリートの色は同じです。
・おまけ
前述の通り、この踏切は作中で海果たちが瞬の家を訪問した帰りに通る踏切です。そこで瞬の自宅もこの辺りにあると推定されますが、近くに似たような建造物はありませんでした。そもそも瞬の家に何かモデルとなる建造物があるのかも不明ですが。
⑥竜岡科学技術高校(静岡市葵区)
作中にて海果たちのライバル的ポジションとして登場する秋月彗が在籍するモデルロケットの強豪校、竜岡科学技術高校にも行って来ました。同校とその周辺は明確なモデルが存在し、地理的関係も整合性が取れています。
まずは原作27話「約束ミッション」にて、海果たちが同校を訪問する際に待ち合わせていた場所からご紹介します。
図24
図25
待ち合わせ場所はJR東静岡駅北口です。図24は原作3巻38頁1コマ目の画角、図25は同巻同頁2コマ目の画角です。
本作の聖地が静岡市内であると特定できた理由は、東静岡駅の描写がやたら写実的だったお陰です笑 お陰様でこの画角だけは完璧です笑
作中ではこのあと彗の案内で竜岡科学技術高校へ向かうことになります。
尚、アニメ11話「再戦シーサイド」では北口ではなく駅構内で集合しています。
図26
図27
図26、27がアニメ11話「再戦シーサイド」での待ち合わせ場所です。実際に待ち合わせていた場所は図27の所です。
図28
図28が竜岡科学技術高校のモデル、静岡県立科学技術高校です(3巻40頁1コマ目と同じ画角で撮影したつもりでしたが、逆光でよく見えず、若干ズレました)。
作中でモデルロケット選手権大会に出場しているのは竜岡科学技術高校の宇宙研究開発部ですが、静岡県立科学技術高校のHPを見たところ、宇宙研究開発部に該当しそうな部活はありませんでした。
ちなみに前述の通り、海果たちは東静岡駅で待ち合わせて同校へ向かっていますが、実際の静岡県立科学技術高校の最寄駅は静岡鉄道長沼駅です(東静岡駅からでも十分近いですが)。
長沼駅を出ると目の前にバンダイホビーセンターがあります(図29参照)。
図29
この建物のすぐ裏が同校です(図30参照)
図30
この道をまっすぐ行くとすぐ左側に高校が見えてきます。
作中で海果たちのクラスメイト(モブ)が「竜岡って…駅の近くの高校?」と聞いているシーンがありますが、この駅が東静岡駅か長沼駅かは不明です(このシーンのお陰で東静岡駅周辺の高校に絞って特定することができました)。
⑦鯛焼き屋(静岡市駿河区)
ここからはアニメでは描かれていない話に登場する聖地です。是非原作を読んでからご覧下さい。
まずは原作37話「灯台ビタースイート」で遥乃と瞬が訪れた鯛焼き屋です。作中では同話の扉絵でのみ登場し、鯛焼きそのものは灯台で食べていますが、店内での食事も可能です。
図31
扉絵ではここで瞬が二輪車を停めて遥乃とソフトクリームの交換をしています(尊い!!!)。
鯛焼きですが、作中で遥乃が食べていたアボカドみかんは無く、瞬が食べていた抹茶大納言は「抹茶クリーム」というのが小豆を使用しており最も近かった為、筆者はこれを注文しました。
頭から尻尾までクリームが詰まっていて美味しかったです(どうでもいいですが、瞬は鯛焼きを頭から食べる派のようですね)。
ちなみにこの鯛焼き屋は、④で紹介したケーキ屋「ルルエミネット」のすぐ近くで、多分徒歩30秒くらいです。
⑧瞬が解いた暗号の座標(静岡市清水区)
原作40話「交信X」で海果たちが交信した宇宙人が最後に残した暗号を原作41
この座標についてもGoogleマップにプロットの上、
図32
瞬が「灯台からそう遠くない場所」と言っていましたが、
図33
これは作中で瞬が言っていた世界測地系の平面直角座標を、Goo
座標の変換には国土地理院が公開している計算式を用います。
しかし、国土地理院という行政機関は存外親切で、
計算ツール↓
https://vldb.gsi.go.jp/
このサイトに載っているツールを使えば、
図34
まず、今回計算する座標は一点だけですので、「一点毎の計算」
「座標値の入力方法」は数値入力を選択します。
「測地系」は瞬の言った通り世界測地系を選択。
次に「平面直角座標系」ですが、ここの系番号は「8系」
そもそも、
平面直角座標系↓
https://www.gsi.go.jp/LAW/
最後に「座標値の入力」で原作40話で宇宙人が残した座標を入力し
図35
ここからは余談ですので、読み飛ばしてもらって構いません。
原作42話「暗闇ハレーション」で瞬は明一の手帳から暗号の正体が座標であることをつ
しかし、
これは世界測地系の計算に欠かせない「準拠楕円体」
世界測地系の計算では、地球の形状を考慮する必要がある為、
楕円体にも色々あり、日本では長いこと1841年に考案されたベ
星屑テレパスの具体的な時間軸は定かではありませんが、
座標計算において、
話は戻りますが、
以上、長くなりましたが、勝手な考察を記載させて頂きました。
また、
⑨温泉(静岡市清水区)
原作44話「黎明ゴースト」で4人が学校をサボって訪れた温泉施設「やませみの湯」です。
図36
ここに関しては44話が掲載されたきらら8月号発売時に原作者の大熊らすこ先生がTwitterで紹介して下さっていた為、特定の手間がかからなかったです。
図36は入浴後施設を出た最初のコマの画角です。
図37
そして図37は原作44話最後のコマの画角です。
この辺りはかなり山奥でやませみの湯以外は何もありませんが、とても綺麗な場所でした。
あまりに山奥すぎて聖地巡礼には車があった方が断然楽です。
ちなみに筆者は無免許の為、バスを使って来ましたが、参考程度に清水駅からのバスのルートを⑨'という形で後述します(めちゃくちゃ面倒なので免許をお持ちの方は絶対車がいいです)。
話を戻します。作中では温泉内(風呂場)の描写が多いですが、当然温泉内では撮影はできません。ですので、ここでは筆者が見てきた温泉内の様子を説明します。
図38
図38は上が北側です。東側に入口があり、風呂場は建物の北側です。作中では室内風呂の描写しかありませんが、風呂場の北側には露天風呂もあります。
また、男湯は東側、女湯は西側です。建物についてですが、建物を南北に縦断する中心線によって線対称となっている為、男湯と女湯の建築構造と内装はおおよそ左右対象です。筆者は男ですので男湯に入りましたが、構造は作中の描写と線対象でした(作中では女湯が描かれる為、大熊先生は取材時女湯を重点的に見たのでしょう)。
ちなみに温泉についてですが、お湯の温度は施設設置の温度計によると38〜39℃程度(筆者訪問時は9月)でぬる目です。
⑨'やませみの湯バスルート
ルートはざっと以下の通りです。
図39(時間は参考)
乗り換え2回で片道約1時間、しかも事前予約が必要です。
清水駅から行く場合、通常の路線バスは但沼車庫という所までしか出ておらず、それより先のバスは予約があった時のみ運行するデマンド路線という仕組みになっています。ですので、聖地巡礼の前にデマンド路線「ココバス」を電話予約する必要があります。詳細は以下のリンクをご参照ください(電話番号も記載されています)
デマンド路線予約詳細↓
https://www.city.shizuoka.lg.jp/000889045.pdf
やませみの湯HP↓
そしてこのデマンド路線ココバスですが、どういうわけか但沼車庫から一旦和田島車庫まで行き、ここで別のデマンド路線に乗り換えて、やませみの湯がある西里温泉という経路になります。かなり面倒な乗り継ぎですが、電話予約時に「清水駅から西里温泉に行きたい」と言えば親切に教えてくれましたので、まあなんとかなります。
一応、以下にバスの乗り継ぎを写真を混じえてご説明します。
・清水駅前
図40
1番乗り場から発車する250系統但沼車庫行きに乗ります。終点但沼車庫まで片道550円です。各種IC使用可能です。
・但沼車庫
図41
但沼車庫でバスを降りると図41のような乗り場があります。ココバスを事前予約していれば、ここに「ココバス」と書かれたバス(というよりは大型車)が来ます。料金は片道200円です。
このココバスが和田島車庫に着くと、あとは案内されるがままに別のココバスに乗り換えさせられます。乗り換えたココバスで西里温泉まで行きます。この料金が片道100円です。
図42
従って、清水駅から西里温泉までは計850円です。
帰りも同じルートになりますので、事前予約の際に帰り分の予約も済ませると良いです。
予約バスとはいえ運行時間は決まっている為注意して下さい。特に西里温泉は本当にやませみの湯以外何もないので、時間が来るまで延々と温泉に浸かりましょう。
それにしても、車のない高校生が学校をサボって訪れるにはあまりにも遠いです。
また、余談ですが、ココバスにはそれぞれ名前が付いているようで、何故か全て野鳥の名前になっています。星屑テレパスと同じまんがタイムきららで連載中の神作「しあわせ鳥見んぐ」を読んでいれば、知っている野鳥の名を冠したバスに気付けます(筆者は「オオルリ」というバスに乗りました。いつか飛島に聖地巡礼に行きたいです)。
〇おまけ
聖地とは直接関係ありませんが、原作29話「熱々コールコール」にて、海果の母が水族館勤務であることが判明しています。
静岡市清水区周辺にある水族館は上記清水灯台からさらに北へ行った三保半島の先端にある東海大学海洋科学博物館くらいです。
恐らく海果の母の勤務先は東海大学海洋科学博物館と推測されます。
○まとめ
以上が今回特定できた聖地の概要です。そのほかにも作中の舞台である可能性がある場所はいくつか周りましたが、間違いないという確証が得られなかった為、ここでは割愛しています。
また、原作を読んでいると「ここは絶対にモデルがあるはず」という場所や建物がまだまだあるのですが、残念ながら全てを特定するには至っていないのが現状です。
この記事を読んで下さった方は是非ここから更に発展させて、筆者が特定できていない聖地を探してみて下さい。聖地特定は多くの人の協力により、精度が高くなっていきますので、宜しくお願いします。
そして何より、「星屑テレパス」という作品がより多くの方々に親しんでもらえることを心より祈っております。
長々と失礼しました。
〇マップ
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