紅山文化と遼河文明 | 大学受験の世界史のフォーラム ― 東大・一橋・外語大・早慶など大学入試の世界史のために ―

大学受験の世界史のフォーラム ― 東大・一橋・外語大・早慶など大学入試の世界史のために ―

東大・一橋・外語大・早慶など難関校を中心とする大学受験の世界史の対策・学習を支援するためのサイトです。


新課程の世界史(世界史探究)の教科書・用語集で新たに採用された語句を順に紹介していきます。


今回は,中国の新石器時代の文化として新たに教科書・用語集に登場した,「紅山文化」を紹介します。また,それとあわせて紅山文化に代表される遼河文明にも言及します。


紅山と紅山文化

紅山文化は,中国東北部の遼河流域で発見された新石器時代の文化である。


中国文明の起源


かつての歴史学では,中国文明の起源は黄河流域で生まれた黄河文明であるとする黄河中心の見方がとられていたが,しだいに黄河流域以外の地域にも別系統の文明が存在していたことがわかってきた。


現在では,先史時代の中国で生まれた文明としては,黄河文明のほかに,長江流域で生まれた長江文明もよく知られているが,さらに近年は中国東北部の遼河流域で生まれた遼河文明も注目されるようになっている。


その遼河文明の発見のきっかけとなったのが,紅山で発見された紅山文化である。


発見


遼河文明は,遺跡そのものは20世紀前半からすでに発見されていたものの,20世紀後半になってからようやく独自の文明として認知されるようになっていった。


まず,清朝末期の1908年に現在の内モンゴル自治区の赤峰近郊の紅山(紅山後)で遺跡が発見されていたが,中華民国時代の1935年に発掘調査が行われて新石器時代の文化が存在していたことが明らかになり,そして,中華人民共和国成立後の1954年に遺跡の名にちなんで紅山文化と命名された。


この紅山文化の発見を契機として,以後は遼河の流域での発掘と研究が進み,さまざまな遺跡と文化が発見され,この地域に独自の文明が存在していたことが判明した。


このようにして発見された,紅山文化に代表される遼河流域の文明を遼河文明と呼ぶ。


特徴


紅山文化は,前4000年頃から前3000年頃に遼河流域に存在した新石器文化である。


この文化では,農耕が主な基盤となっていたが,並行して牧畜・狩猟も行われていた。


遺跡からは,打製石器と磨製石器などの石器や,紅陶・灰陶などの土器が発見されている。しかし,最も特徴的なのは玉(翡翠などの石)を使用してつくった玉器で,動物をかたどったものが多く,特に龍をかたどった玉器が出土しており注目される。


中国において,龍は力や運を象徴する伝説上の生物として尊重されてきたが,紅山文化はそのような中国の龍の文化の一つの源流ではないかと考えられている。



意義


紅山文化を初めとする遼河文明の発見と研究によって,今では,遼河文明は黄河文明・長江文明と並ぶ中国文明の一つの源流ではないかと考えられている。


このように,中国文明は,黄河文明だけを起源とするのでなく,黄河文明・長江文明・遼河文明など各地で生まれた文明がそれぞれ個性をもちながらも相互に交流を行うなかで,中国文明が育まれ,形成されてきたという説が主流になってきている。