「ウルのスタンダード」 | 大学受験の世界史のフォーラム ― 東大・一橋・外語大・早慶など大学入試の世界史のために ―

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新課程の世界史(世界史探究)の教科書・用語集で新たに採用された語句を順に紹介していきます。


今回は,古代メソポタミア文明の範囲で新たに追加された用語,「ウルのスタンダード」を紹介します。以前から大半の教科書で本文外の資料として掲載されていましたが,今回は用語集の見出し語句としても採用されました。


「ウルのスタンダード」の「戦争の場面」

<「ウルのスタンダード」の「戦争の場面」>



「ウルのスタンダード」の「平和の場面」

<「ウルのスタンダード」の「平和の場面」>



「ウルのスタンダード」は,シュメール人の都市ウルの遺跡から発見された,側面に絵が描かれた箱状の工芸品である。


ウルの発掘と発見


紀元前3000年頃から古代メソポタミアで栄えたシュメール人の文明は,19世紀後半から欧米の学者による発掘作業によって発見されていったが,その過程でユーフラテス川下流に位置するシュメールの主要都市ウルも発見された。


そして,1922年からは,大英博物館とペンシルヴェニア大学の共同プロジェクトとして,イギリス人考古学者レオナード・ウーリーを隊長とするウルの本格的な発掘調査が実施され,多くの画期的な発見が行われた。


この発掘作業では,王族のものとみられる墓が発見され,そこからは,王族などの遺体のほかに,数々の金属製品・宝石・工芸品などの副葬品が発見されたが,そのなかに「ウルのスタンダード」があった。


「ウルのスタンダード」


ウルの王墓から発見された「ウルのスタンダード」は,側面に絵が描かれた箱状の工芸品である。


この工芸品は,サイズが高さ22cm、幅50cm、奥行4.5cm程度の四角柱の形状で,前後左右のそれぞれの側面に絵が描かれており,またラピスラズリや貝殻がはめこまれて装飾されている。


なお,名称の「スタンダード」(standard)とは,ここでは「標準」の意味ではなく,「軍旗」,すなわち軍において使用される旗を意味する。これは,発見者ウーリーが軍旗であると考えたことから命名されたものだが,実際には用途は不明のままである。


「ウルのスタンダード」の絵画


絵の描かれた各側面のうち,前後2つの大きな側面には,それぞれ「戦争の場面」と,「平和の場面」(あるいは「饗宴の場面」)と名づけられた絵画が描かれている。


「戦争の場面」では,上段中央に王と見られる人物が君臨し,各段には武器を持つ兵士,ロバらしき動物に引かれた戦車と,倒された敵などが描写されている。


「平和の場面」の方は,上段では王などの支配層と思われる人々が飲食を行っており,中段および下段では人々がさまざまな各地からの貢納品を運んでいる。


この「ウルのスタンダード」の「戦争の場面」および「平和の場面」は,王のもとでのウルの勝利や繁栄を描いたものであるとみられ,当時のウルの力やシュメール人の国家や社会を知るための貴重な記録となっている。