メフテルハーネ(オスマン帝国の軍楽隊) | 大学受験の世界史のフォーラム ― 東大・一橋・外語大・早慶など大学入試の世界史のために ―

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新課程の世界史(世界史探究)の教科書・用語集で新たに採用された語句を順に紹介していきます。


今回は,オスマン帝国史の範囲で新たに追加された用語,「メフテルハーネ(オスマン帝国の軍楽隊)」を紹介します。なお,用語集の見出しでは「軍楽隊」となっており,説明のところにメフテルという語が載っています。


メフテルハーネ(オスマン帝国の軍楽隊)

<メフテルハーネ>


メフテルハーネは,オスマン帝国の軍隊に随行して演奏活動を行った音楽隊である。


メフテルとは


オスマン帝国では,ペルシアやアラブなどの西アジアの音楽を継承しつつ,それに中央ユーラシア出身のトルコ民族の伝統音楽も融合させて,独自の音楽が発展した。


帝国内では音楽がさかんで,宮廷・社交場・式典などさまざまな場面で音楽の演奏が行われていたが,そのほかに,軍隊に属する独自の軍楽隊が生まれた。


このようなオスマン帝国の軍楽隊の隊員または軍楽そのものをメフテルと呼び,軍楽隊のことはこのメフテルに「ハーネ」(「家」の意味)をつけてメフテルハーネという。


構成や役割


メフテルハーネの構成についてみると,主にオーボエやトランペットのような管楽器と大太鼓やティンパニーのような打楽器から成っており,ほかには歌などがつくこともあった。


この音楽隊は,オスマン帝国の軍隊に随行し,戦闘の際に勇壮な曲を演奏して自軍の士気を鼓舞するとともに敵軍を威嚇することによって戦闘に貢献した。このほか,平時には宮廷の儀礼などの際に演奏を行うことなどもあった。


影響


16・17世紀には,オスマン帝国がウィーン包囲を敢行するなどヨーロッパを脅かしたが,このようにオスマン帝国軍と対峙するなかでヨーロッパの人々はメフテルハーネの演奏を実際に体験し,強烈な印象を与えられた。


これをきっかけに,ヨーロッパではオスマン帝国の軍楽が知られるようになり,そのような軍楽を導入しようとする動きも起こった。そして,17世紀頃からはヨーロッパ諸国で,オスマン帝国の音楽や楽器も取り入れつつ,軍楽隊が編成されていった。


さらに,メフテルハーネの音楽は,軍楽以外の西洋音楽にも強い影響を与えた。オスマン帝国の楽器や演奏はヨーロッパのブラスバンドやオーケストラにも取り入れられ,またモーツァルトなどの音楽家によってトルコの軍楽の影響を受けた「トルコ行進曲」と呼ばれる曲が制作されている。


こうして,ペルシア・アラブなどの音楽を継承しつつトルコの民族音楽を融合させて高度な音楽を確立したオスマン帝国は,その音楽をヨーロッパへともたらして,音楽の東西交流や発展に寄与することになった。