日本円の実質実効為替レートの推移 | 大学受験の世界史のフォーラム ― 東大・一橋・外語大・早慶など大学入試の世界史のために ―

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前回の記事では日本円/米ドルの通常の為替レートの推移を紹介しましたが,今回は日本円の実質実効為替レートを紹介します。


実質実効為替レートとは


実質実効為替レートは,端的に言えば,ある通貨の強さ・競争力を示す指標です。

この実質実効為替レートという用語は,為替レートに「実質」と「実効」が付いてできたものです


まず,「実効」為替レートというのは,2国間の通貨だけではなく多くの国の通貨を対象とし,貿易量などを反映させて,相対的な通貨の強さの変動を指数で表したものです。

次に,「実質」というのは,各国の物価変動を考慮に入れて調整しているという意味です。

そこで,両者を合わせた実質実効為替レートとは,多くの国の通貨について,各国の物価変動も考慮に入れながら,相対的な強さの変動を示したレートということになります。


やや複雑ですが,要するに,ある通貨の世界の通貨のなかでの価値・競争力がどのように推移したのかを把握するための目安ということです。

つまり,この実質実効為替レートの推移をみることで,日本円など特定の通貨の強さの変動を見ることができます。


日本円の実質実効為替レート


日本円の実質実効為替レートの推移を表したグラフを掲載します。

通常のドル/円レートと異なって,グラフの上の方が円が強く(価値が高い),下の方が円が弱い(価値が低い)ことを示すという点に注意してください。


日本円の実質実効為替レート

このグラフを見ると,ドル・ショックを契機に変動相場制に移行した頃から,日本円は急速に強くなり,その後,プラザ合意の頃に再び大きく上昇しています。そして,1995年に最高となりました。


しかし,そこを頂点として急速に下降が始まり,リーマン・ショック後に一時盛り返した頃に,2013年からの日銀の異次元緩和によって急激な下落が再開され,そして2020年のコロナウイルス流行以後にも下落がつづいて今年2022年にはついに1970年代初めのドル・ショック時の指数をも下回りました。


まとめ


日本円の競争力が,変動相場制の開始以降で最低となったということは衝撃的です。


現在2022年10月には円安が進行して1ドル約150円となりましたが,通常の為替レートを基準に考えれば,戦後のドル/円レートは1ドル75~360円の範囲で推移してきたので,1ドル150円という水準はそれほど激しい円安水準ではないように見えます。


しかし,実質実効為替レートから見るならば,現在の日本円の強さ・競争力は現在の為替体制が始まって以来となる記録的な水準にまで低下しており,日本の通貨,そして経済力がこれまでとは大きく変わってきていることが感じられます。