東大世界史の2013年第2問⑶⒜の問題・解答・解説です。
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問題
フランク王国以外のゲルマン人の王の大部分は,当時どのような宗教を信仰していたのか,2行(60字)以内で説明しなさい。
解答
解答例
「⒜ニケーア公会議で異端とされて以降ゲルマン人の間で広まった,イエスの人性を重視するキリスト教のアリウス派を信仰していた。」
解答のポイント
他のゲルマン人の多くが信仰していた宗教としてアリウス派キリスト教の名を明示しておく。なお,伝統的な異教・土俗信仰を信仰していたゲルマン人もいたが,それには触れなくてもよいだろうと思われる。
どのような宗教であったかが聞かれているので,アリウス派がどのようなものであったのかも説明しておきたい。ローマ帝国で異端とされたことは,この設問の本質に関わり,またゲルマン人の間に広まった背景にもなるので,必ず指摘したほうがよい。また,残りの字数で教義面の特徴などにも触れるとよいだろう。
解説
アリウス派キリスト教
アリウス派は,アレクサンドリアの聖職者アリウスが唱えた説にもとづくキリスト教の宗派で,イエスは神の被造物であり神とは異質なものであるとして,イエスの人性を重視することを特徴とする。
このアリウス派は,ローマ帝国のコンスタンティヌス帝により325年に開催されたニケーア公会議において異端とされたが,この結果,アリウス派は北方のゲルマン人へと布教されることになった。
<キリスト教の正統派と異端派>
ゲルマン人の信仰
原始ゲルマン社会におけるゲルマン人の信仰は明確にはわかっていないが,彼らはもともと神々を崇拝する多神教の信仰をもっていた。
しかし,4世紀以降,ローマ帝国で異端とされたアリウス派キリスト教の伝道が行われたことからゲルマン人の間ではアリウス派が広まり,大移動の頃には東ゴート・西ゴート・ブルグントなどゲルマン人の部族の多くがアリウス派を信仰するようになっていた。