正月にテレビ放映されていた黒澤明監督の「用心棒」「生きる」は、見ていただけたでしょうか?。もう何度も見ている作品ですが、何度見ても興奮します。いつか黒澤作品を全部レビューしたいのですがそれが寂しいような気がして先延ばししています。それを全部書き終えた時、映画のレビューは止めるつもりでいます。そうは言っても今までレビューしたのは「用心棒」「椿三十郎」だけです。まだまだ何十本もありますが、たくさんの人に黒澤映画を見ていただきたいです

 

 

 

今日の映画は、以前「ワンダが選ぶ映画音楽ベスト30」のラストの番外で少し紹介した「プリシラ」。ディスコミュージックに乗せて砂漠の中を行く三人のドラァグクイーンのロードムービー。30年近く前の映画ですが当時はかなり話題になった映画です

 

 

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プリシラ

1994年/オーストラリア

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オーストラリア映画で、3人のドラァグクイーンが真実の愛を求めて旅する姿を描いたロードムービー!

 

 監督・脚本

ステファン・エリオット

 音楽

ガイ・クロス

 キャスト

テレンス・スタンプ/バーナデット

ヒューゴ・ウィーヴィング/ミッチ

ガイ・ピアース/フェリシア

ビル・ハンター/ボブ

 

監督は、本作が監督2作目のステファン・エリオット。ユアン・マクレガー主演のサスペンス「氷の接吻」を撮っています。主演の3人は「唇からナイフ」「テオレマ」「ワルキューレ」など数多くの映画に出演しているテレンス・スタンプ。何と言っても彼の名を聞いて真っ先に浮かぶのは「コレクター」(65年版)ですね。そして、「ロード・オブ・ザ・リング」「マトリックス」シリーズのエージェント・スミス役で有名なヒューゴ・ウィーヴィング。さらに、この映画の3年後に「L.Aコンフィデンシャル」で一躍人気を博し「メメント」「タイムマシン」「プロメテウス」など大活躍のガイ・ピアースが出演しています。初めて見たときは全く分からなかったです

 

 

テレンス・スタンプ/バーナデット

ヒューゴ・ウィーヴィング/ミッチ

ガイ・ピアース/フェリシア

ビル・ハンター/ボブ

 

ショウガールの仕事で結ばれた、誇り高い性転換者バーナデット(テレンス・スタンプ)とバイセクシュアルのミッチ(ヒューゴー・ウィーヴィング)そして、若く世間知らずなフェリシア(ガイ・ピアース)の3人のドラァグクイーンは、オーストラリア中部の砂漠の真ん中にあるリゾート地でショーを行うため、大都会シドニーから「プリシラ号」と名付けたバスに乗り、3000キロに及ぶの旅に出たのだが・・・

 

3人の主人公たちのド派手なファッションや全編に流れる70年代ディスコ・ヒット曲の数々が印象的

 

 

  ドラァグクイーンのロードムービー

 

まだ社会的に性的マイノリティだった90年代前半に、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの総称)映画の先駆的な映画の一本!

 

LGBT映画という枠にとらわれる必要がないほど映画としては一級品。一般的にLGBT映画というと、外にも「パレードへようこそ」「アデル、ブルーは熱い色」「マイ・プライベート・アイダホ」「ブエノスアイレス」「リリーのすべて」など良作がたくさんあります。それにしてもテレンス・スタンプにもびっくりですが、ガイ・ピアースが「L.Aコンフィデンシャル」の前に、この怪演にはびっくりでした

 

道中に様々な出会い、トラブルなどに見舞われながらも、彼らの過去や悩み、希望が明らかにされていきます。一見無軌道に見えながらも確たる信念を貫いた作品。旅の途中での砂漠の荒涼とした風景と、彼らのド派手な出で立ちの対比が見事です。それはまるで、外見と内面を対比しているかのようにも見えます。キングズ・キャニオンの山頂でスパンコールのドレスとハイヒールで立つ姿は目を見張るほど美しい!

 

自分も十分に理解しているわけではないので「ドラァグクイーンとは」について書かれている記事を一部抜粋させていただきました_

 

”ドラァグクイーンは、クィアカルチャーで歴史の長いパフォーマーの一種。ゲイのクラブなどが発祥とされていて多くの場合、ゲイのパフォーマーが派手なメイクと「女装」でステージで踊ったり口パクをしたりするパフォーマンスが定番です。一説によると長いドレスやガウンを引きずる(ドラァグ/Drag)姿が由来とも言われています。口パクが定番とはいえ、ドラァグクイーンの中でも生で歌う人やシンガーソングライターをしている人もいますし、トークショーなどのコメディーを主にする人、アート系のモデルを専門にするドラァグクイーンもいます。このように多様な形があることをご理解いただきたいと思います”

 

 

  懐かしのディスコサウンドが彩る

 

多種多様な価値観を与えてくれるLGBT映画は、ヒューマンドラマはもちろん、ラブストーリー、コメディ作品など幅広くありますが、共通して音楽とセンスの良さが際立っています

 

オープニングがいきなり、シャーリーンの「愛はかげろうのように」。そして次々と登場するディスコミュージックの数々が、無機質な砂漠の中で彼らの悲しさと悔しさと嬉しさを叫んでいるようです。一本道を走るバスの上で目一杯着飾って歌い上げるフェリシア(ガイ・ピアース)や原住民の前で踊って見せる「愛のサバイバル」は最高です。ストーリーは若干弱い気がしますが、音楽と彼らのパフォーマンスで十分カバーしています。ABBAの「ウ〇コ」のくだりや大空に舞うダッチワイフのくだりなどインパクトも強烈です。砂漠の中をドラァグクイーンの三人を乗せて走るというシチュエーションもいいです

 

観終わって、少し元気になれる映画です!

 

 

「都会はイヤだと さんざん グチったけど 、私たちには都会しかないのよ。都会という壁がわたしたちを守ってくれているのよ!」

社会からの冷たい視線の中で、逆境にも負けずそれを生きていくパワーに変えていこうとする力強いテーマの叫びを、私などにはとうてい汲み取ることはできないでしょうが、見終わって少し寄り添えたと思います

 

是非ご覧ください