やっぱり今年も忙しい(笑)

 

先日、2年前にブログを立ち上げた時から交流のあるブログ友から、「黒澤映画」のレビュー要望のメッセをいただきました。大好きな「黒澤映画」ですから何度も観ておりますが、書いてしまうのが惜しいような寂しいような(笑)ですから、ちょっとづつレビューしていきます

 

「黒澤映画」

 

第1回が*「用心棒」

次は何を選ぶか迷いましたが、やはりコレでしょう!

 

 

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「椿三十郎」

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1962年/96分

 

 

すご腕の浪人が、上役たちの不正をあばこうと立ち上がった若侍たちに助太刀する痛快アクション時代劇!

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椿三十郎/三船敏郎

室戸半兵衛/仲代達矢

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井坂伊織/加山雄三

見張りの侍木村/小林桂樹

 

睦田夫人/入江たか子

千鳥/団令子

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次席家老黒藤/志村喬

用人竹林/藤原釜足

大目付菊井六郎兵衛/清水将夫

城代家老睦田弥兵衛/伊藤雄之助

 

守島隼人/久保明

河原晋/太刀川寛

広瀬俊平/土屋嘉男

保川邦衛/田中邦衛

関口信伍/江原達怡

寺田文治/平田昭彦

黒藤家三太夫/小川虎之助

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最初から最後まで飽きさせない娯楽時代劇の傑作!

ある夜、朽ちかけた社殿に集まって、何やら深刻な相談をしている9人の若侍たち・・内容は家中の不正をあばくものだが、そこに浪人が現れて・・・

人生の辛酸を舐め尽した三十郎と、世間知らずの若侍たちとのやりとりが軽妙で楽しく冒頭から引き込まれます

 

「こうなったら、死ぬも生きるも我々9人!」

「10人だ!てめーらのやることは危なっかしくて見てられねえ」

 

この物語は、山本周五郎の「日日平安」をベースに、黒澤明らによって書かれたシナリオを、この前年の「用心棒」のヒットにより続編的な設定にさらに替えられたものです。したがって、三十郎の風貌などは似ていますが、前作より饒舌でコミカルなキャラクターであり、より娯楽性が高い時代劇となりました

 

「用心棒」と「椿三十郎」のどちらがいい映画か?

 

このクラスの映画だと、もう好き嫌いの問題ですが、この映画には「用心棒」のような殺伐とした緊張感がない代わりに独特のユーモアがあります。なんと言うか映画全体に安心感がありますね。

両作とも数えきれないほど繰り返し観ていますが、「用心棒」「七人の侍」「天国と地獄」「生きる」「赤ひげ」は黒澤映画でも別格だと思います。もし観たことがないのでしたら是非観るべきです!

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映画全体の流れるような「静と動」の表現がすばらしい!

 

庭に咲く椿と小川、三十郎と若者たち、奥方と娘、そして善と悪などの対比が面白いですね

 

万事おっとりした奥方(入江たか子)のセリフがいいです

 

「すぐ人を斬るのは悪いクセですよ」

「あなたは(三十郎は)なんだかギラギラし過ぎてますね、ヌキ身みたいに」

「あなたはサヤのない刀みたいな人。よくキレます!でも、本当にいい刀はサヤに入ってます」

 

奥方と三十郎の二人が、お互いに対極にあるからこそ信じあい認め合っているセリフです。このセリフがあとになって効いてきます

 

「用心棒」の時は山田五十鈴、この映画では入江たか子のお約束?の名前を尋ねるシーン(笑)

 

「あなた、お名前は?」

「私の名前は・・・」

(庭を眺めると全員つられて庭を見ると椿が満開)

「椿・・・三十郎!もうそろそろ四十郎です」

「面白い方ね」

 

ちなみに「用心棒」の時に名乗る名前は「桑畑三十郎」でした

 

エンターテイメント性が高く、ストーリーもわかり易く、二転三転する内容を96分でまとめたのが凄い!

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キャラクターの描き方も文句のつけようがありません!

 

最後にしか出てきませんが、なかなかタヌキの城代家老役の伊藤雄之助

人質にとったとぼけた侍役の小林桂樹

加山雄三をはじめとする若侍9人

志村喬を中心とした重役三人衆

そして、室戸半兵衛役の仲代達矢ですが、ちょっと損な役で気の毒な気がしました。「用心棒」では強烈でしたねえ!

 

なんといっても入江たか子団令子の奥方と娘の二人が良かったですねえ。砂漠にあるオアシスのようにこの映画に潤いを与えており、スピーディな展開の中で、二人が出るシーンの間がち密に計算されつくしていたと思います

 

この二人が、相手側に乗り込む合図を流す椿の色を、赤にするか白にするか楽しそうに話している間、じれったそうに襖に書かれた「や」の文字をなぞるシーンは笑えます

 

 

「さっきの見張りは三人だが猫だ」

「今の見張りは一人だが虎だぜ」

 

それにしても三船敏郎の殺陣は凄いのひと言です!

 

桑畑三十郎から椿三十郎・・・

できれば、なにがしの四十郎、五十郎と観続けたかったですねえ

 

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以前、「用心棒」の紹介にも書きましたが、黒澤映画の面白さはずば抜けた脚本の面白さにあります

 

さらに、構図の見事さです!

 

この映画にも随所にあります!

冒頭の古い社殿の中で9人の若侍をかくまったあと三十郎のアップから、後ろの床からひとりづつ顔を表すシーン、さらに土下座して三十郎に礼を言うシーンなど横に広がる構図が美しい

 

9人の若侍たちを横に並べるシーンもいくつか出てきますが、横一線に並ばせることで、彼らの未熟さというかバカっぽさが強調されて、先生と生徒のような関係性が一目でわかります

 

白黒なのに椿の赤と白の対比の美しさ

小川に落ちた「一片の椿」と合図の「大量の椿」の対比のたのしさ

 

この美しい構図と対比は、もう感動すら覚えます

 

 

有名なクライマックス!

 

まさに息を呑むシーンです

あれこれ言うより、じっくり本編をご覧ください(笑)

 

対決する二人も凄いですが、後ろの9人の息を呑み、肩で息するリアルさが見事です

 

「お見事!」

「バカヤロー!聞いた風なことをぬかすな!」

 

「こいつはオレとそっくりだ。抜き身だ!」

「奥方の言う通り、本当にいい刀はサヤに入ってる」

「お前らもおとなしくサヤにおさまってろよ!」

 

「あばよ!」

 

音楽と共に立ち去る三十郎!

あまりに見事なラストでしたねえ~

 

絶対に観るべき映画の一本です!