windance の亜米利加放浪記 -2ページ目

プロトタイプの製品化

最終プレゼンテーション

僕はこの建築家に何度も会って徹底的にインタビューし、様々な実例についてディスカッションしながら、構造モデルと照明モデルから導き出される因果関係について整理していった。


それぞれの条件と結果が互いに矛盾無く整理できれば、あとはプログラミングするだけだ。ベースにしたレンダリング・モジュールがC言語で書かれていたため、プログラミングにはC言語を使用した。ガラス製の半球と立方体から成る簡単なモデルを作成し、照明の方向と強さを変化させながら、半球のガラス面における反射と透過がどのように表現されるかを、いくつかのレンダリング結果でプレゼンテーションすることにした。

 

プロジェクトの最終プレゼンテーションが終わった時、クラスの一部からはどよめきが起こった。質感に神経質なまでの美的こだわりを持つ建築家の卵たちを唸らせたのは実に爽快だったが、残念ながら僕のアルゴリズムは汎用性に欠けた。最終プレゼンテーションを成功裏に終わらせるためモデルに工夫を凝らしたので、任意の形状で同じ結果を得るためにはまだまだ多くのハードルを残したままだった。


ただし、プレゼンテーションを成功させたのは立派な成果だった。ビルゲイツだって、「ショーストッパー」と呼ばれる致命的なバグを無数に抱えたままのシステムを満場の聴衆の前でデモンストレーションし、さも「完成されたシステム」かのように見せかけることに長けていたからこそ、マイクロソフトの現在がある。(ちなみにビルゲイツは、「デモの天才」と呼ばれていた。)

建築家の経験知

ガラス面の質感表現

話がかなり横道に逸れたので、もとに戻そう。Independent Study (自主課題)の話しだったと思う。

 

後期の Independent Study は、単なる「色塗り」の域を脱していなかったコンピュータ・グラフィックスのシェーディング・アルゴリズムに、人間の経験知を組み入れることがテーマだった。


もちろん、無限の反射・屈折回数を許したレイトレーシングに、光の拡散をシミュレートするラジオシティを組み合わせれば、かなり高精度な画像は生成できるはずだが、そんなことをしていてはコンピューティング・パワーがいくらあっても足りない。光が拡散する通常の素材の場合はまだ「色塗り」でも我慢できるが、ガラスなどの透過と反射が複雑に変化する材質を高速にレンダリングするのは至難の業だ。


僕のアルゴリズムの特徴は、簡略化された擬似シェーディングであるスキャンライン方式に人間の経験からなる「知恵」を加え、光の透過と反射を「本物らしく」再現しながら高速レンダリングを可能としたことだ。僕はこの論文を、「Glass Surface Rendering using Empirical Algorithm」と名づけた。

天才的芸術家

芸術家と科学者

Independent Study: 結果

Independent Study: ツールの選択

作図ツールとしては、建築業界ではダントツの人気を博しているAutoCADを使用することにした。AutoCADはもともと2次元CADの製品だったため、3次元モデリングが可能となった今でも「2.5次元ソフト」と呼ばれることが多い。建築家は、立面図や平面図を見ながら頭の中で3次元の構造物を組み立てることに長けた人種であるから、そもそも3次元ソフトなんて必要ないわけだ。マシンが自動的にデザインしてくれた3次元モデルを、直接AutoCADでいじりながら微調整できるようにしたいと考えた。


プログラミング言語には、LISPを使用した。AutoCADAutoLISPと呼ばれるLISP言語を採用していたからだ。LISPは2番目に古い高級言語であり(最古はFORTRAN)、その表現力と柔軟性によって人工知能のコミュニティでよく利用された。ただし、ちょっと複雑な式を書くと括弧だらけになって訳がわからなくなるという特徴があり、構文チェックのついた専用のエディターでコーディングするのが普通だ。


LISPでナレッジ・ベースを構築するというのはなかなか大変だったが、ルールをどんどん増やしていけば、僕の「建築デザイン自動生成システム」は、どんどん賢くなっていくはずだった。システムが自己学習するフィードバック機能は入れてなかったので、LISPで多くの関数を定義し、デザイナーがひたすら自分の感性をルール化してインプットしていく作業を繰り返した。

Independent Study

何とか1学期生存

ビジネス・スクールの3科目ではとにかく息をつく暇も無く、毎日、ケースを読んではポイントを押さえて自分の考えをまとめておき、教室では発言の機会を捕えようと一瞬のスキを突くべく、緊張の連続だった。


試験は論文形式だったので慣れてはいたが、ケーススタディの事例ばかりが思い出されて論理展開に苦労した。教授の理論をもっと勉強しておく時間があったならば、より意味のあるものになっていたと思う。


成績はあまり良くなかったものの、僕はなんとか生き残った。