アウトレットを後にして、私たちは旧軽井沢へ。  
夜の空気は昼間の暑さを忘れさせてくれるほど涼しく、  
車を降りた瞬間に
「やっぱり避暑地なんだなぁ」と思わず深呼吸した。  




選んだのはドイツ料理のお店。  
案内されたテラス席に並んで腰を下ろすと、  
木々の間を抜ける風が頬をなでていく。  
その心地よさに
「贅沢ってこういうことなんだ」と思った。  




アウトレットでもいろいろつまんでいたからか
生ハムやソーセージなど、軽やかなおつまみを選んだ。  
私はスパークリングワインを、彼はノンアルビールを。  
彼はいつも車だから飲まないのに、毎回私には
「飲みなよ」と勧めてくれる。
選んだワインがまためちゃくちゃ美味しくて
この日の一杯はいつもに増して
ただのワイン以上に感じられた。  
口に含むと、爽やかな泡立ちと豊かな味わいに驚き、
思わず笑みがこぼれた。  




初めての旅行のこと。長すぎた渋滞のこと。 
 会話は自然と弾んだ。 
そして、昼間アウトレットで迷っていたかごバッグの話。  




「あのカゴバック似合ってたし、
明日の朝、もう一度行って買おうよ」  




彼の言葉に、続いていく時間への安心感が
ふっと広がった。  




横に並んで座る彼の横顔。  
風に揺れる木々の音。  
遠くで響く軽井沢の静かな夜の気配。  
その全部が、私にとってかけがえのない瞬間。




いつもなら「そろそろ帰らなきゃ」と思う時間。  
でもこの日は違った。  
「このまま一緒にいられるんだ」と思うだけで、  
心がふわっと軽くなって、幸せが
胸いっぱいに広がっていった。  




食事を終えて外に出ると、街灯の少ない道が
闇に溶け込んでいた。  車を走らせると
真っ暗な山道が続いていて「ちょっと怖いね」
と笑い合いながら進むその道の先に、 
 初めてのお泊まりの夜が待っていた。