長い渋滞を抜けて、「もうすぐ着くよ」
と言われた瞬間。
窓の外に広がったのは、夏の光を浴びた山並みでした。
緑の匂いが風に混じり、胸の奥がぎゅっと高鳴る。
あぁ、本当に来られるんだ。
ここが、軽井沢なんだ──。
近くまでは何度も行ったことがあるのに、
なぜか軽井沢だけは一度も
足を踏み入れたことがなかった。
自分でも不思議に思うくらい。
でも今になって思う。
きっとこれは、彼と来るために──
今までご縁がなかったのかもしれない、と。
時計を見れば、すでに14時を過ぎていました。
「到着が遅くなっちゃったね」と
彼は笑って言ったけれど、
私にとっては待ち望んだ景色が
目の前に広がることの方が、何倍も嬉しかった。
はじめて足を踏み入れた軽井沢。
彼にとっては幼い頃から馴染み深い、
家族の思い出が詰まった場所。
その日常に、今の私は一緒にいる。
そう思うだけで、胸がいっぱいになった。
最初に向かったのはアウトレット。
日差しは柔らかく、空気はひんやりと澄んでいて、
真夏なのに日傘も必要ないくらい。
「さすが避暑地だね」なんて、
何度も口にしてしまった。
5年越しの夢が、いま確かに叶っている。
それなのに不思議と現実味がなくて──
歩く足取りさえ、夢の中みたいに軽かった。

