5年越しの夢だった二人旅。
その始まりは、想定外の“大渋滞”だった。
目的地まで3時間のはずが──
渋滞の列に飲み込まれ、到着予想は5時間後。
それでも私は、助手席でずっと笑っていた。
彼は、いろんな話をしてくれた。
これから行く場所の話、仕事の話、
本当に他愛のないこと。
でも、その全部が愛おしかった。
車内には、彼が準備してくれた音楽が流れていた。
ミスチルや、彼が選んだ色々な曲。
「この曲、知ってる?」なんて言葉を交わしながら、
窓の外の景色も、時間の長さも、
なんだか全部が心地よかった。
途中のサービスエリアで、トイレ休憩を何度か挟んだ。
お昼は遅めに、彼がいつも
立ち寄って食べるという釜飯を。
夜ごはんに響かないようにと、半分こして食べた。
「大丈夫?疲れてない?」
そう聞くと、彼は
「大丈夫」と笑ってくれる。
でも、長時間の運転で疲れているはず。
それでもハンドルを握り続ける彼の横顔に、
胸の奥で静かに「ありがとう」を重ねた。
彼は、渋滞で予定が変わってしまう事を心配していた。
行こうと思っていた場所に
行けなくなるかもしれないと。
そんなふうに、旅のことを考えてくれる気持ちも、
やっぱり嬉しかった。
5時間の道のりは、確かに長かった。
でも、私にとっては──
それすらも、かけがえのない時間だった。
