厚生政策情報センター  5月23日(木) 配信
産業競争力会議(第9回 5/22)《首相官邸》

 政府は5月22日に、産業競争力会議を開催した。

 この日は、菅内閣官房長官から「健康・医療戦略」に関する報告を受けたほか、成長戦略とりまとめ(6月予定)に向けた論点を整理している。

 菅官房長官は、「健康・医療分野は、各省にまたがる問題であり、関係府省が一体となった戦略的な取組みが必要である」点を強調し、大きく(1)新技術の創出(研究開発、実用化)(2)新サービスの創出(健康寿命伸張産業の創出)(3)新技術・サービスの基盤整備(4)国際医療協力の推進―という4つの柱で、健康・医療関連市場を拡大していくことを報告している(p4~p5参照)。

 (1)では、医学・医療を含めた科学技術研究の指令塔となる「日本版NIH(National Institutes of Health)」創設などを、(3)では、医療のICT化推進などを、具体的内容としてあげている。

 とくに医療のICT化推進については、次のような策も提示している(p6参照)(p10~p14参照)。

●医薬品の副作用データシステム

●地域でのカルテ・介護情報の共有

●レセプト等データの利活用推進

●臨床研究・治験のデータベース構築

●特定健診・保健指導や医療技術等の効果分析

●電子化した、お薬手帳・母子健康手帳(予防接種歴など)の活用

 これらの施策は、それぞれが複数の機能を持っている。たとえば「カルテ・介護情報の共有」を進めれば、「患者情報(既往症や禁忌情報など)を共有して、適切かつ効果的な医療提供」が可能になるとともに、「重複投薬・検査の是正、情報連携に裏打ちされた医療機能の分化」も行うことができよう。

 また、(4)の国際化に向けては、「メディカル・エクセレンス・ジャパン(MEJ)を中核組織とする、国際医療事業の推進」や、「熱帯病等に対する医薬品の開発・供給」などを例示している(p22参照)。

 さらに、この日は、東京都の猪瀬知事から、「国家戦略特区(仮称)」に関する提案も行われた。その1例として、「外国人医師(日本の医師免許なし)による医療行為」を認める特区などがあげられている(p68参照)。ちなみに、日本の医師免許を持たない外国人医師は、「臨床修練制度」により指導医の監督の下で医療行為を行うことが可能だ。

 

医師臨床研修部会

研修医募集定員の「激変緩和措置」、2013年度末廃止へ

2013年5月23日 橋本佳子(m3.com編集長) 

 厚生労働省の医道審議会医師分科会の医師臨床研修部会医師研修部会(部会長:桐野高明・国立病院機構理事長)が5月23日に開催され、都道府県および各研修病院の研修医の「募集定員の上限」に関する「激変緩和措置」を2013年度末で廃止することで合意した(資料は、厚労省のホームページに掲載)。例えば、2011年度実績で見た場合、受入実績が都道府県の募集定員上限を超えている東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、兵庫県、京都府の6都府県では、「激変緩和措置」の廃止で募集自体の削減を余儀なくされる見込み。

 「募集定員の上限」は、(1)都道府県別の人口、(2)都道府県別の医学部入学定員数、(3)地理的条件(面積当たりの医師数や離島の人口などの条件)――という要素で設定されるが、今後は、人口当たりの医師数や、高齢者割合なども加味する方針についても、ほぼ合意が得られた。さらに、医師の地域偏在解消のために、新たな仕組みを導入するかについては今後の検討課題となる。桐野部会長は、「激変緩和措置を外すと、相当な影響が出てくる。都市部には我慢してもらわなければいけないことが相当ある」との見通しを示したが、岩手医科大学学長の小川彰氏は、「激変緩和措置の撤廃は従来から決まっていたこと。撤廃するだけでは、医師の地域偏在解消にあまり効果はない」と述べ、見方が分かれており、今後、議論を呼びそうだ。

 また「地域枠」で入学した学生については、マッチングとは別枠で、研修先を決めるべきとの意見も出ていたが、多くの委員は現状通り、マッチング内で研修先を決めるべきと指摘。桐野部会長も、「地域枠の学生が、最初から最後まで“エスカレーター”に乗せることにより、どんな影響が及ぶかが心配。マッチングの段階で、他の学生と同じ土俵の載せる方が健全ではないか」と述べ、別枠にはしない方針で決定。

 医師臨床研修部会は、6月、7月は月1回、8、9月は月2回のペースで開催する予定。厚労省は9月中には最終的な取りまとめを行う方針。

  募集定員と研修希望者数、どこまで近づける?

 「募集定員の上限」は、2004年度の臨床研修必修化が、医師の偏在を招いたとの指摘を受け、2010年度に導入されたもの。基本的には、東京都など都市部で上限が減らされる仕組みだが、都道府県の募集定員の上限は前年度の受入実績の90%を下回らないように、各病院の募集定員も前年度の内定者を下回らないように、それぞれ「激変緩和措置」が導入されている。

 23日の会議で議論になったのが、「激変緩和措置」の撤廃後、募集定員と研修希望者数をどこまで近づけるかという点。両者のかい離が、研修医の地域偏在につながる一因とされている。現在の募集定員は、研修希望者数の1.23倍だ。

 小川氏は、「大都市のマッチ率は80%台後半。一方、地方で人口が少ない地域では当然募集定員も少ないが、マッチ率も50%台。人口が少ない地域は、どんどんマッチ率も低くなってしまう。ここを埋める工夫をしないと、地域偏在は解消しないのではないか」などと述べ、できるだけ募集定員を研修希望者数に近づけるよう提言。2012年度の実績を基に、1.23倍よりも圧縮した場合に、各都道府県の上限がどのくらいになるか、シミュレーションするよう求めた。

 山形大学医学部長の山下英俊氏も、「募集定員と受入実績の差を縮めていくシステムを作る必要がある。今までの仕組みは、どこにも痛みが伴わない制度設計になっているが、完全に公平にするのは難しい」とコメント。また初期の臨床研修だけでなく、後期研修も視野に入れて地域で病院群を設定していくなど、地域に医師が定着する仕組み作りが必要だとした。

 桐野部会長は、2004年度の臨床研修必修化以降、6都府県(東京・神奈川・愛知・京都・大阪・福岡)では研修医の受入実績が減少傾向にある点を挙げ、「大都市部が研修医を独占しているわけではない」と指摘。募集定員と研修希望者数の比については、「1.23から、1.3や1.4にする議論はないが、一方で、1.0(募集定員数と研修希望者数の数を一致させる)には現実的にできない。1.0と1.23のどこか適切なところに置かなければいけない。現状より少し下げた方がいいと思われるが、あまりに低い(1.0近い)とアンマッチ(マッチングで研修先が決まらない例)の数が増えて、(研修希望者数が)右往左往することになる。あらかじめ値を設定するのは難しい」と述べ、諸条件を勘案しながら、慎重に検討していくことが必要だとした。

 小森氏は、桐野氏の意見を支持、「激変緩和措置については、当初の予定通り廃止。また医師数の西高東低を補正するためには、シミュレーションをした上で決定すべき」と述べた。「日医では、偏在解消のために医師の募集定員と研修希望者の数をおおむね一致させることを主張しているが、1.0にすると、アンマッチ数が増えるのは問題なので、その点は考慮すべき」(小森氏)。

 日病と全日病にヒアリング

 23日の臨床研修部会では、日本病院会の臨床研修委員会副委員長で、聖路加国際病院院長の福井次矢氏と、全日本病院協会医療制度・税制委員会委員(医師臨床研修指導医講習会担当)の公益財団法人星総合病院理事長の星北斗氏へのヒアリングも行った。

 福井氏は、(1)基幹型臨床研修病院の指定要件である、「年間入院患者数3000人以上」の根拠は不明であり撤廃すべき、(2)研修プログラムの必修化は、2004年度の制度開始当初の7診療科に戻すべき、(3)到達目標の達成度について、より厳密な第三者評価を行うべき――の三つを提案した。「狭いテーマもしくは臓器別にしか診ない医師であっては困り、できるだけ幅広い研修を受けて、どんな病気でも取りあえず診る医師になってほしい、という声が日病内から出ている」と福井氏は説明。また(2)の提案根拠として、必修化を3診療科に減らした「弾力化プログラム」では、臨床研修プログラムの到達目標を達成していない研修医がいる可能性を挙げた。

 これに対し、日本医師会常任理事の小森貴氏は、多くの大学や臨床研修病院が導入している、EPOC(オンライン臨床研修評価システム)では、弾力化プログラムが必ずしも悪いというデータは出ていないとし、慎重な検討が必要だとした。

 星氏は、星総合病院や福島県全体の臨床研修の現状を説明。星総合病院では、地域の病院、さらには福島県立医科大学とも連携を組み、多様な研修ができる体制を整えているとした。ただし、福島県全体では、2012年度マッチングの場合、募集定員に対する充足率は50%で、前年度比8.2ポイント増だが、全国43位にとどまっている。「地域の病院の多くは、それぞれの個性を生かして、何とかいい研修をすれば、(後期研修で大学に戻っても)いずれは自分のところに戻ってくれるかもしれない、病院のレベルを上げていきたいと考え、必死に研修に取り組んでいることを理解してもらいたい」。星氏は、こう語り、地域の現状を踏まえた臨床研修制度の見直しの必要性を指摘した。

共同通信社  5月24日(金) 配信


 政府は24日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを使った再生医療を安全かつ迅速に利用するための制度を盛り込んだ、薬事法改正案と再生医療安全性確保法案を閣議決定した。今国会に提出する。

 安倍政権は再生医療を成長戦略の重要な要素に位置付けている。新しい医療技術に関する早期承認制度やリスクに応じた規制の仕組みなどを具体化することで、産業応用に向けた環境を整えるのが狙いだ。

 薬事法改正案では再生医療で移植する細胞などを「再生医療等製品」と定め、従来の医薬品や医療機器とは別の承認制度を導入する。新制度では症例数が少なくても安全性が確認できれば、使用できる医療機関を限定して最大7年の期限付きで早期に承認し、市販後に有効性を検証できるようにする。厚生労働省によると、承認までの期間が2、3年程度短縮されることが期待できる。

 一方、再生医療安全性確保法案では移植する細胞を種類や使用法による患者へのリスクで3分類。iPS細胞や胚性幹細胞(ES細胞)は最も慎重に取り扱う「第1種」に分類される見通しで、利用するには公的な第三者委員会の審査や厚労省の検討を経る必要がある。

 移植用の細胞の培養や加工には専用の設備や高度な技術が必要なことから、医療機関は国の許可を受けた企業に委託できるようにする。

 再生医療をめぐっては、普及を迅速に進める責務が国にあることを明記した「再生医療推進法」が4月に成立している。

 再生医療以外でも、薬事法改正案では、国の承認が不要で民間機関が認証する医療機器の対象を拡大。透析器や人工呼吸器などが含まれる、リスクの高い「高度管理医療機器」の一部にも適用し、実用化までの手続きを簡略にする。

 法律が医薬品にとどまらず医療機器にも関係することを明確にするため、薬事法の名称を「医薬品医療機器法」と施行時に改めることにした。

※再生医療

 培養・加工した細胞や組織を移植し、病気やけがで失った体の機能を修復する医療。筋肉や神経など限られた種類の細胞になる体性幹細胞のほか、ほとんどの細胞になる人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)を使った治療法の研究などが進んでいる。経済産業省の研究会は、2030年に再生医療の国内市場規模が1兆6千億円に達すると予測している。

15年度以降に数百億円規模へ
 
2013年5月16日 化学工業日報  カテゴリ: 一般外科疾患・検査に関わる問題

 シャープは14日に発表した3カ年の中期経営計画の中で、持続成長を目指すために医療・健康分野に本格参入する方針を打ち出した。医療機器メーカーや大学・病院との提携・連携を通じ、中計の最終年度となる2015年度以降に数百億程度の事業規模に育成する。

 
 同社は16日付で、水島繁光副社長(技術担当)が統括する新規事業推進本部を発足。その傘下組織の1つとして健康医療事業推進センターを設置し、同分野の事業開発・商品開発に取り組む。

  
 具体的には、シャープの持つセンシングや化合物半導体の技術を応用して、新たな診断用医療機器を生み出す。X線検出器の素材としてIGZOなどの半導体化合物を用いることで、高感度で被ばく量の少ないデジタルX線画像診断装置(DR)などの開発に取り組むとみられている。

 
 14日に会見した高橋興三次期社長は「当社の持つ技術と、提携先の持つ販路を組み合わせることで相乗効果を生み出し、新規事業を拡大させていきたい」と強調した。

 

島田 昇(m3.com編集部)  5月16日(木) 配信
 厚生労働省の「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」(座長:遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)は5月16日に第9回会議を開催し、月内の報告書取りまとめに向け、厚労省が前回会議で示したたたき台について議論した(資料は、厚労省のホームページに掲載)。引き続き、医薬品のネット販売を推進する委員と慎重な委員との主張が平行線を辿る場面が多かったものの、一般用医薬品の第1類については、原則、購入者は使用者本人のみで、代理購入を認めないとする案が浮上した。

 複数の委員が前回会議から、リスクの高い第1類をネット販売する場合、厚労省のたたき台からはテレビ電話の活用を条件にしようとする意図が読み取れると指摘している(『医薬品ネット販売、第1類にテレビ電話活用、厚労省たたき台』を参照)。今回の会議でも同様の意見交換が展開され、推進派委員は「テレビ電話の文言を削除すべき」(新経済連盟顧問の國重惇史氏)、慎重派委員は「削除する必要はない」(日本薬剤師会副会長の生出泉太郎氏)とお互い譲らなかった。

 一方、ライフネット生命保険代表取締役副社長の岩瀬大輔氏は、別の角度からテレビ電話の必要性に疑問を呈した。たたき台では、対面でもネットのいずれの販売でも「リスクの高い品目は使用者の状態を専門家が確実に確認すること(目視、接触など)」としており、これが「第1類のネット販売の条件はテレビ電話」の根拠になっている。しかし、岩瀬氏は「代理購入を認めないとするなら理解できるが、このままでは合理性に欠ける」と指摘。専門家の目視などが条件であるなら、それは代理購入の禁止と同義であるとの主張だ。逆に、代理購入が認められるのであれば、専門家による目視などが必須ではなくなり、テレビ電話活用をネット販売の条件にする合理性が消える。

 この点について、慎重派の日本医師会副会長の中川俊男氏と、日本チェーンドラッグストア協会理事の森信氏は「第1類は代理購入禁止でいい」と発言。その他の委員からも反対意見はなく、第1類の代理購入禁止が了承されたものと見られた。しかし、会議後半に森氏は子どもや体が不自由な人の代理購入の需要も相当程度あることなどを理由に、「代理購入の禁止を認めるという意見は撤回する」と前言を撤回。テレビ電話の活用をネット販売の条件にするかの議論は、次回以降に持ち越されることになった。

 今後、5月内に2回会議を開く予定で、厚労省は「月内に取りまとめまでいきたい」(医薬食品局総務課)としている。

毎日新聞社  5月16日(木) 配信

子宮頸がんワクチン:副作用、未報告例も調査 厚労省方針、健康被害を把握

 

 厚生労働省は、4月から定期接種を始めた子宮頸(けい)がんワクチンを巡り、現場の医師が副反応(副作用)だと認めず国に未報告になっているケースについて調査に乗り出す方針を固めた。接種後に重い健康被害に苦しむ中高生らが出ていることを受けた措置で、副反応の範囲についても医療機関や医師向けに症例を詳しく例示して、報告の徹底と接種のリスクを十分説明するよう求める。【桐野耕一】

 ワクチンの接種で発疹やけいれんなどの症状が出ることを薬の副作用と区別し、副反応という。被害女性の保護者らでつくる「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」が先月、接種中止を求める嘆願書を厚労省に提出したのを受け、被害実態を広く調べる必要があると判断した。既に被害者連絡会を通じて未報告の事例を複数確認しており、専門家による16日の検討会の審議を経て調査を始めるとみられる。

 同省によると、子宮頸がんは性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が原因とされる。感染からがんになるまでは数年から十数年間かかるが、年間約2700人が死亡している。近年、発生・死亡率とも若年層で増加傾向にあるため、厚労省は2010年11月から自治体に補助金を出してワクチン接種を推進。予防接種法を改正し、4月から原則無料の定期接種にした。

 薬事法などに基づく医師や製薬会社の報告によれば、子宮頸がんワクチンの副反応は09年12月の販売開始から昨年末まで計約340万人(推計)が接種して1926人。このうち重い障害が残るなど重篤なものは861人に上る。副反応との因果関係は不明とする報告もあるが、重篤の報告数はインフルエンザワクチンの約40倍とされる。重篤な症例も海外の発生頻度に比べ多いという。

 厚労省の幹部は「ワクチン成分による副反応の他に筋肉に注射するため神経が針で傷ついた可能性もある。副反応の情報を見落とさないよう医師にも呼びかけたい」としている。

 ◇「国はしっかり検証を」 不明の痛み残った14歳、やるせない母

 「ワクチンで防げるものなら娘にとっても良いと考えた末の接種でした」。東京都杉並区の主婦、松藤美香さん(46)は、そう2年前を振り返る。

 松藤さんの中学3年生の長女(14)は2011年、ワクチンの「サーバリックス」を自宅近くの診療所で接種した。決められた接種回数は3回。異変が起きたのは同年10月、同じ診療所で2回目の接種をした時だった。

 左腕に注射をしている時、「手がおかしい」と訴え、直後に左腕が痛み出した。夜には腕の腫れや足、肩の痛みを感じた。翌日、同じ診療所を訪れたが「うちでは診られない」と断られた。その後受診した総合病院では10日間の検査入院後、痛みの原因が分からない「慢性疼痛(とうつう)症候群」と診断された。

 その後も薬を服用しながら病院を転々とした。症状が激しい時は足が勝手にばたついたり睡眠中に無意識に起きて歩き回ったりした。1月に症状が改善して登校を再開したが、再び痛み出したため3月中旬から休学。歩行時は車椅子が必要だ。

 全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会代表を務める松藤さんは「治療法を把握できる医師がおらず、患者は病院を転々としている。こうした患者は増える一方であり、国はしっかり検証をしてほしい」と話す。【細川貴代】

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 ■ことば

 ◇子宮頸がんワクチン

 2009年12月発売の「サーバリックス」と11年8月発売の「ガーダシル」の2種類があり、ヒトパピローマウイルス(HPV)のうち発がん性の高い2タイプの感染を防ぐとされる。感染後は接種しても効果がないため、定期接種の対象は小学6年~高校1年。1人計3回接種を受ける。欧米各国でも公的接種として導入されている。

中医協専門部会、日欧米3団体から意見聴取
 
2013年5月16日 化学工業日報  カテゴリ: その他

 厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)保健医療材料専門部会は15日、2014年度の保険医療材料制度改革に向け、日本医療機器産業連合会(医機連)、米国医療機器・IVD工業会(AMDD)、欧州ビジネス協会(EBC)医療機器委員会の3団体から意見を聴取。業界側は3団体の統一見解として、機能区分内複数価格帯制度の新設や外国平均価格制度(再算定制度=FAP制度)の廃止などを求めた。

 
 現在、特定医療保険材料は約700の機能区分で評価する機能区分別収載制度がとられている。業界側は同制度では、同じ機能区分内に市場から評価が大きく異なる製品が混在するため、償還価格の予見可能性が低く、イノベーションに向けた企業の開発投資が難しくなっているとし、同じ区分内に実勢価格帯に応じた複数の償還価格を設定する新制度に変更することを提案した。新制度は、実勢価格が低い製品についてはより低い償還価格が設定されるため、医療費の適正化につながるとしている。

  
 イノベーション評価の要望としては、前回改定で採用された迅速保険導入インセンティブ策の継続、申請時に提出する財政影響試算を直接的に保険上の評価につなげること、CT、MRIなどで新たな技術料を設定する場合の具体的な評価項目を設定することなどを挙げた。

 
 また、為替の変動だけで償還価格が下がる現行の再算定制度の廃止も提案した。もし継続する場合でも、現行の対象国や、価格調整のための比較水準を1・5倍に維持することを求めた。

   

厚生政策情報センター  5月15日(水) 配信

田村大臣閣議後記者会見概要(5/10)《厚生労働省》

 田村厚生労働大臣は5月10日の閣議後記者会見において、一般用医薬品のインターネット販売等についてコメントしている。

 田村大臣は、一部に「リスクの高い第1類医薬品も含めて、テレビ電話を用いることでネット販売を解禁した」旨の報道があると指摘。そのうえで、「厚労省としてそのような案(本紙既報)をお伝えするつもりはない」と断言。さらに「薬の安全性というもの、これは十分確保していかなきゃいけないわけでありますから、一般用医薬品を売る場合にその安全性が確保していける、そういう売り方でなければならない」との考え方を改めて強調している。

 また、5月10日に医政局総務課に設置された「医療国際展開戦略室」の任務について、(1)諸外国の医薬品・医療機器等に関する規制・制度の研究(2)医療機関の認証制度(質の担保)の検討(3)医療の海外展開に向けた後方支援―などを例示している。


 

共同通信社  5月16日(木) 配信


 前回参院選で打ち出した民主党重視路線と決別し、医師会と歯科医師会は自民党回帰をしたたかに進める。狙いは医療行政への発言力拡大だ。日本医師会(日医)の政治団体、日本医師連盟(日医連)は昨年末の衆院選直後、自民から組織内候補として日医の羽生田俊(はにゅうだ・たかし)副会長の擁立を決めたが、戦略は半年以上前から練っていた。一方の民主は離反を嘆くばかりだ。

 「環太平洋連携協定(TPP)で心配をいただいたが、国民皆保険は守るとあらためて約束させていただく」

 都内のホテルで14日に開かれた日医のパーティー。拍手で迎えられた安倍晋三首相が「今年は特別な年。参院選で当選できるよう全力を挙げる」と、ひな壇の羽生田氏にエールを送った。

 対照的に、民主の海江田万里代表のあいさつは拍手がないまま始まった。「民主の議員は多くないが、お招きいただき感謝申し上げる。ここに集まった人の気持ちは一つ。国民の医療を守ることに尽きる」と、精いっぱい秋波を送ってみせた。

 日医では昨年4月の会長選で親民主の原中勝征(はらなか・かつゆき)氏が破れ、横倉義武(よこくら・よしたけ)会長が誕生。横倉氏は「与野党双方との対話」を掲げたが、同12月の衆院選で自民が勝利すると、3日後には自民からの候補擁立の意向を表明した。

 電撃的な擁立劇に見えたが、布石は打ってあった。昨年6月、都内のフランス料理店。自民の医療関係幹部議員とテーブルを囲み、日医役員が見守る前で「組織内候補を育てたい」と"復縁"を申し出ていた。

 日医連は2010年の参院選で民主候補を推薦。自民、みんな両党の候補も支援したが、3人とも落選した。07年も組織内候補が敗北している。「3連敗は許されない」(日医連関係者)との覚悟で、今回は候補を1人に絞って総力を傾ける。

 日医連幹部は「診療報酬改定やTPPに関し、与党の中で意見を反映させたい」と意気込む。

 民主の閣僚経験者があきらめたように解説する。「地方の医師会は自民系の首長や地方議員との関係が深く、民主党政権でも自民寄りのままだった。当然の帰結だ」

 日本歯科医師会(日歯)の政治団体、日本歯科医師連盟(日歯連)の場合、自民回帰はより鮮明だ。政権交代前の昨年10月、早々と自民現職の石井みどり氏の推薦を決定。さらに神奈川選挙区の自民候補に前理事長の島村大(しまむら・だい)氏を送り込む。

 日歯連の支援で3年前に当選した民主の西村正美氏は「次の改選期に組織内候補として出たいが、選ばれるかどうか」と不安を隠せない。

読売新聞  5月16日(木) 配信


 【ワシントン=中島達雄】同じ遺伝情報を持つ細胞を作る「クローン技術」を使って、様々な細胞に変化する能力を持つ、人のES細胞(胚性幹細胞)を世界で初めて作製したと、米オレゴン健康科学大の立花真仁(まさひと)研究員らが15日、米科学誌セルに発表した。

 患者と同じ遺伝情報を持つ心筋や神経細胞などを作り出せれば、山中伸弥・京都大教授が作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)と同様に、再生医療に応用することが可能になる。

 研究チームは、健康な女性が提供した卵子から、遺伝情報の入った「核」を取り除き、別人の皮膚細胞の核を移植。150個ほどまで細胞分裂させた「胚盤胞(はいばんほう)」という状態に育て、ES細胞を作製した。マウスやサルでは成功していたが、人では核移植した卵子を胚盤胞まで育てるのは難しかった。既存の手法を改良し克服した。

 クローン技術を応用したES細胞は、2004年に韓国ソウル大の黄禹錫(ファンウソク)教授(当時)が作製に成功したと論文を発表したが、のちに捏造(ねつぞう)と判明した。

          ◇

 今回作製した胚盤胞を子宮に移植すれば、クローン人間が生まれる可能性がある。しかし動物実験の場合、胚盤胞まで育てても流産率は高く、胎児の奇形も高頻度で見られる。国立成育医療研究センター幹細胞・生殖学研究室の阿久津英憲室長は「クローン人間作りは胎児だけでなく、妊婦も危険にさらすことになる。倫理的に許されないだけでなく、技術や安全の面でもクローン人間は現実的ではない」と指摘する。