池田宏之(m3.com編集部)  5月15日(水) 配信

 日本医師会は5月14日、公益社団法人移行記念祝賀会を都内で開き、医師や国会議員ら、約1000人が参加した。日医会長の横倉義武氏が、国民皆保険の堅持を訴えたのに呼応して、安倍晋三首相は「国民皆保険を守ることは、改めて約束する」と述べた。

  横倉氏は、冒頭のあいさつで、TPP(環太平洋経済連携協定)などを巡る動きを踏まえて、「国民皆保険制度が揺らぎ、脅かされている」と述べた。さらに、皆保険の堅持に加え、地域医療の再興を課題として挙げ、「課題解決のためには医療職等が大同団結しなくてはいけない。結びつけるのは、日医の社会的責任」と話し、日医が中心的な役割を果たしていく認識を示した。その上で、「安全な医療提供の推進、国民の健康確保などのために、公益活動を深化させていく」と述べた。

  続いて、あいさつに立った安倍首相は、国民健康保険について「世界に冠たる制度。TPP等で心配をかけているが、皆保険制度をしっかり守ることは、改めて約束する」と強調すると、会場から拍手が沸いた。一方で、安倍首相は、ゴールデンウィーク期間中の外遊にも触れ、「ロシアでは、日本の高い医療技術を提供してほしいという、強い熱意を感じた。トルコでもアラブ諸国でも同じ」と紹介。医療について「まさに成長分野。皆保険制度とともに、医師会の会員が維持する医療技術が、成長に資する新しい道を考えたい」と述べ、経済成長に向けての医療の貢献に期待感を示した。

 田村憲久厚労相は、皆保険を守ることに加え、医療や皆保険における持続可能性の重要性を強調。医療提供体制の強化や、病床の機能分化などの「医療の適正化」については「質が落ちるわけではなく、必要な人に必要な医療を提供すること」と話し、理解を求めた。

 祝賀会では、7月の参院選に出馬する日医副会長の羽生田隆氏への応援も目立った。安倍首相は、「当選できるように、全力を挙げていく」と断言。衆議院議長の伊吹文明氏、公明党の山口那津男代表も、羽生田氏の応援を明言した。

 そのほか、祝賀会には、民主党の海江田万里代表、日本維新の会副政調会長の片山虎之助氏、東京選挙区から出馬する武見敬三氏、医療界からは日本医学会会長の高久史麿氏らが出席、あいさつした。

2013年5月16日
「例会挨拶13・05・16」
【要旨】
● ご存知のように、昨日、平成25年度予算が成立した。夜遅くまでかかったが、いろいろとお世話になり感謝申し上げる。

● これで、いわゆる「3本の矢」の2本目である財政までは、実行に移せるところにきた。今、一部で景気のいい話があるが、まだ皆さんの地元など地方にまでは確実に届いていない。(昨年度の)補正予算が先に成立しているが、それが現実に回り始めたのが今月の初めくらいの感じで、さらに広まっていく為にはあと1~2カ月の時間がかかる。

● その間、地方で景気についてどう感じてもらえるかということは、参議院選挙に影響してくる。従って1日も早く、この(今年度)予算が執行できるようにしていかねばならない。

● 幸いにして、きょう発表された1-3月期のGDP速報値は、年率換算実質で3.5%、名目で1.5%増となった。株価はきのう15,000円代を回復。この流れを更に加速していかねばならない。そうしないと、景気のいいのは大都会、就中、東京だけということになりかねない。

● 今回の参院選に立候補される方がここにお見えだが、この参院選で自由民主党が公明党と共に過半数(の議席)を得れば、「これで衆院で通った法案が参院でも確実に通る」となり、政治の安定性、経済政策の持続性が目に見えてくる。それで初めて、地方の中小企業経営者にも投資意欲が出てくるはずだ。

● 衆議院の各先生方も参議院の自民党候補者に、必ず力を貸す、自分の選挙だと思ってやっていただくことを心からお願いする。

● 参議院では「0増5減」の法律が残っているが、これは憲法違反と言われているものであり、確実にやってもらわねばならない。既に参議院に送付されて3週間も経っている。ここはきちんとやってもらわねばならない。

● まだ、マイナンバー法案やハーグ条約関連法など残っているものがあるが、いずれにしても、経済再生を果たし、「自民党政権になったら公約通り経済が良くなった」という実感が浸透すれば、自民党の政権基盤を安定したものにし、それが結果として、日本の国益に繋がると確信している。
 
 

厚生政策情報センター  5月13日(月) 配信

第3回 レセプト情報等の提供について(平成25年2月8日~2月15日受付分)(5/8)《厚生労働省》

 厚生労働省は5月8日に、第3回のレセプト情報等提供(平成25年2月8日~2月15日受付分)について発表した。

 レセプト(診療報酬明細書)は、医療機関が保険者(一次的には審査支払機関)に医療費の請求を行う際の明細書であるが、高齢者医療確保法において「医療費適正化のために用いる」ことが認められている(法第16条第2項)。また、レセプトは医療政策研究の重要資料でもあるため、厚生労働大臣が特別に認めた場合には、研究者等がレセプトデータを活用することも可能である。

 ただし、患者の機微に富んだ個人情報が含まれるため、安易なデータ活用は許されず、仮にデータを保有する厚労省が行う研究事業であっても、厚生労働大臣は有識者会議の意見(情報保護体制の整備状況や、研究内容の公益性など)を参考に、慎重に判断しなければいけない。

 今般、(1)厚労省健康局疾病対策課長および雇用均等・児童家庭局母子保健課長による「難病指定研究及び小児慢性特定疾患指定研究」(2)厚労省保険局医療課長による「ナショナルデータベース(レセプト情報のデータベース)を用いた癌治療の費用対効果評価」―の2つの研究に対し、レセプト情報を提供することが決定された。

 

厚労省に要望、無過失補償制度の整備拡充も

2013年5月14日 橋本佳子(m3.com編集長) 

 日本外科学会は5月8日、「医療事故に係る調査の仕組み等に関する第三者機関」 http://www.jssoc.or.jp/other/info/info20130508.html に関する要望書を厚生労働省に提出した(資料は、同学会のホームページに掲載)。

 厚労省では現在、「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」 http://www.m3.com/iryoIshin/article/170536/ で、医療事故調査などを行う第三者機関の設置などを検討しているのを受け(『“事故調”の創設法案、今秋国会の提出目指す』を参照) http://www.m3.com/iryoIshin/article/140998/ 、「早急に意見をまとめていただき、制度化が速やかに行われ、引き続いて現在産科のみで実施されている無過失補償制度が医療全般に整備拡充されることを要望する」としている。

 要望では、医療事故調査の制度設計について、以下のように提言している。調査の目的は、原因究明と再発防止にあるとし、「全ての医療関連死」を対象とするよう求めている。調査を行う組織としては、現行のモデル事業を発展させた第三者機関や、外部委員を加えた院内事故調査委員会を想定。公的病院には、制度への参加を義務付け、第三者機関には、立入調査などの権限を持たせるとした。第三者機関が行う調査については、遺族からの届出も可能としている。

 さらに刑事司法との関係については、(1)第三者機関が介入した事例については、警察の届出は必要ない運用を目指す、(2)故意の犯罪性が否定される場合、調査において事実を明らかにすることを条件に免責され、個人の責任を問われないことが担保される運用を目指す――とし、関係機関と協議するほか、異状死体の届出を定めた医師法21条の改正を求めている。日本外科学会では、4月の定期学術集会で、厚労省に要望を出すことを明らかにしていた(『外科学会、医師法21条の改正を要望』を参照)。

共同通信社  5月14日(火) 配信


 中国で感染が広がっている鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)について、日本政府の新型インフルエンザ等対策有識者会議の尾身茂(おみ・しげる)会長が13日、東京都内の日本記者クラブで会見。限定的な人から人への感染の可能性を指摘しながらも、鳥の殺処分など中国当局の対策で世界的な大流行には至らず「収束に向かう可能性もある」と期待を示した。

 尾身氏は、鳥と接触していない人や感染者の家族が発症した例などから、家族内など「限局的な人から人への感染が起きている可能性がある」とする一方、大流行につながるような「効率的な感染の証拠はない」と述べた。

 H7N9型が鳥に対して低病原性のため「鳥の感染がどこまで広がっているかが分からず、コントロールを難しくしている」と分析。「感染が鳥の間で静かに続いている可能性を否定できない」とした。

 また「ウイルスの駆逐は難しい。高齢者が感染すると重症化しやすいと考えられ、感染した人を早く発見することが一番大切」と話した。

 世界保健機関(WHO)と中国の衛生当局はこれまで、人から人に感染したと結論付けるまでの証拠はないとの見解を示している。(共同)

共同通信社  5月13日(月) 配信


 脱法ドラッグ対策強化の一環で、製造や販売が禁止されている「指定薬物」の捜査権限を麻薬取締官に与えることなどを盛り込んだ改正薬事法と改正麻薬取締法が10日、衆院本会議で全会一致により可決、成立した。

 先に参院で審議され、4月26日に参院本会議で可決された。法改正により、指定薬物の疑いがある商品を自治体職員が強制没収することも可能になる。拒んだ場合は50万円以下の罰金とする罰則規定を設けた。

 厚生労働省によると、これまで麻薬取締官は指定薬物の捜査ができず、店頭などで指定薬物の疑いがある商品を発見しても、買い上げたり任意提出を求めたりしていた。

共同通信社  5月13日(月) 配信


 厚生労働省は医療事故の実態把握のため、国内すべての病院・診療所計約17万施設を対象に、診療行為に絡んで起きた予期せぬ患者死亡事例の第三者機関への届け出と、院内調査を義務付ける方針を決めた。関係者が12日、明らかにした。

 現在、届け出義務があるのは高度医療を提供する大学病院など約270施設だけ。新制度では中小病院や診療所も含め、死亡事例を網羅的に収集できるようになる。

 厚労省は専門家による検討部会の議論が近くまとまり次第、医療法改正に向けた作業を進め、秋の臨時国会への改正案提出を目指す。

 新制度の対象は約8500の病院と、約10万の有床・無床診療所、約6万8500の歯科診療所の計約17万7千施設(2月末時点)。診療所など小規模施設では十分な院内調査ができない可能性もあり、地域の医師会や医療関係団体、大学病院の支援を受けられる体制も構築する。

 第三者機関は行政から独立した民間組織と位置づけ、現行の「日本医療機能評価機構」や「日本医療安全調査機構」の機能を統合・一元化する案が浮上している。

 厚労省によると、事前にリスクが分かっている手術の合併症による死亡などのケースを除き、予期せぬ患者の死亡事例があった場合、医療機関は速やかに第三者機関に届け出るとともに院内調査を実施。結果を第三者機関に報告し、遺族にも開示する。

  医療機関の対応や院内調査結果に納得できないケースなどでは、遺族が第三者機関による調査を申請することも可能。医療機関側からの調査申請も受け付ける。

 第三者機関は医療機関から寄せられた調査報告の内容を分析。共通する事故要因を洗い出すなどして注意喚起し、再発防止につなげる。必要に応じて個々の医療機関への助言もできるようにする方向だ。

 新制度は医療事故の原因究明と再発防止を主眼とするため、第三者機関から警察への通報はしない。

「薬剤師外来」の導入を求める声も

2013年5月2日 池田宏之(m3.com編集部)
 
 「チーム医療の一環として、今後薬剤師と看護師の業務拡大の余地」について聞いた質問で寄せられた、具体的な意見を紹介する。

【薬剤師関連(回答者:医師)】
・手術室内の薬剤管理をしてほしい。
・温度版の薬の情報を薬剤師が管理してほしい。
・他院処方薬との調整。
・禁忌併用薬のチェック。
・約束処方のオーダー。
・持ち込みの処方の調査。
・点滴調剤。
・ジェネリックなどの同作用だが、商品名の異なる薬を明確にする。
・薬剤師はもっと臨床の手助けをすべきである。処方の間違いを指摘するだけではだめ。
・服薬指導をさらに展開すると、患者さん、医師、看護スタッフみなに益する。
・外来診察における医師の処方への助言等の援助。

【薬剤師関連(回答者:薬剤師)】
・バイタルサイン、放射性医薬品の調製作業。
・服薬指導以外の病棟業務。
・処方計画、副作用モニタリング、TDM、外来化療室での服薬指導。
・高カロリー輸液のミキシング。
・全ての薬剤の1回量のセッティングを任されるようになる。
・手術前の薬剤は全て薬剤師に任せた方がよい。外来で医師が確認しているのは不十分で、手術をした方が効果的。
・持参薬管理の実施。Do処方の支援。
・入院前の処方調整。
・副作用の早期発見。
・副作用を疑った時の検査オーダー。
・手術室専任薬剤師業務。救急室専任薬剤師業務。集中治療室専任薬剤師業務。
・老人ホームなどのグループホームでの服薬指導や薬剤師視点のフィジカルアセスメント。
・定期処方の代行処方。
・まだまだNSTなど緩和医療などへの進出を積極的にできると思う。回診やカンファレンスへの参加がまだ不十分で情報を得るのが遅れている。
・病棟回診で患者を診ながら行い、適正な薬物療法が行われているかを、処方提案を行う。
・薬剤師外来の施行(入院・検査前の薬剤チェック、副作用等薬剤に関する相談外来等)。
・症例カンファレンスへの参加、回診参加。
・業務的には拡大するが、人員不足は変わらないと思う。
・薬全般について薬剤師が責任を持つ。

【看護師関連(回答者:医師)】
・糖尿病外来や糖尿病教育入院患者の教育など。
・医師の監視下での、採血などの検査の自主的施行。
・動脈血採取。特に細菌培養をやってくれると感染症対策が進歩する。
・医師の指示・指導のもとに行える医療行為を普通にやってほしい。尿道バルーンや末梢ルート確保など。
・褥瘡管理。
・介護の質、ターミナル・ケア。
・ポート穿刺など。
・カテーテル交換。
・専門看護師(例えば、関節リウマチ、自己血輸血等)。
・看護師の業務は拡大すべきでなく、パラメディカルを増強すべき。
・特定看護師を目指すくらい仕事をしてほしい。
・看護師の看護以外の業務が多すぎるためクラークの導入は必要。

【看護師関連(回答者:看護師)】
・在宅介護に当たっての看護師の処置行為等の拡大。
・ターミナル期の看取り、疼痛コントロールや不眠時の約束指示施行における判断、静脈注射の実施等。
・離床や早期退院に向けた援助行動の計画と実践・指導など。
・CV挿入、挿管、胃管カテーテル挿入。
・専門職種間の調整能力。
・ムンテラや病棟内リハビリ。
・酸素療法や輸液療法におけるルート確保。
・地域連携関連や相談事業。
・地方の民間病院・診療所の場合実務ではかなり踏み込んだ業務や法律すれすれの業務まであるため、「業務拡大」というより「法の解釈の拡大・追認」が実際だと思う。看護師の静脈内穿刺が良い例。
・専門看護師・認定看護師の立ち位置を適切に構築できれば、業務は拡大できる。やる気のない、できない医者より、よほど患者に必要な業務を効率的にできるようになる。
・特定看護師の役割や責任の所在が曖昧。無医村などに限定し置くならいいかもしれないが。
・拡大余地はないが、黙っていても看護師の業務が拡大するのは目に見えている。仕事の割には待遇面が低いのでは。一般社会的に看護師の給与と地位が低いと思う。
専門看護師・認定看護師の活動が院内全体の活動にできる。医師同様にもっと専門性を持たせてもよいのではないか。
・事実、看護師はチームを運営し活動の中心である。

【薬剤師・看護師共通(回答者:医師)】
・専門外来に、専門のスタッフを配置する。
・呼吸器患者の管理など、特殊な医療を行っている重症患者の治療。
・NSTやICTなどの枠組みの仕事が増えるかもしれない。
・感染管理、抗生剤使用のチェック、糖尿病患者さんの療養指導。
・医師のしている業務で誤りもあるので、薬剤師も看護師も常に注意をする必要がある。
・臨床経過の情報を収集して、治療内容に助言したり、討論する業務もできるようになると良い。
 ・薬剤師、看護師の医療チームへの参加が医師の業務を大きく軽減してくれる期待が持てる。
・抗癌剤治療などはもっと積極的に治療方針などの議論に参加してほしい。
・時間外対応。
・もっともっと多くの業務拡大を目指して週に1回話し合いの機会を持っている。知らない一面を教えてもらい、大変参考になっている。

化学工業日報  5月2日(木) 配信

 医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、新薬の承認審査報告書の英訳化などを進める「国際ビジョン・ロードマップ」を策定した。新薬の世界同時開発が活発化するなか、国民皆保険制度の下で医薬品の普及が海外に比べて早い日本では最初に安全対策を講じる事例の増加が予想され、欧米アジアの各規制当局と緊密に連携しつつ、国際化に対応できる人材を育成・充実させ、日本の薬事行政の現状を世界に積極的に発信していく。

 国際ビジョンでは、(1)最先端科学技術分野への対応(2)国際事業基盤の整備(3)承認審査分野における情報発信(4)安全対策分野における情報発信と国際協力(5)日本薬局方の国際展開-の5分野で重点的に国際活動の強化に取り組む。向こう2年間に取り組む目標や2015年度以降の長期課題などを掲げた。

 最先端科学への対応では、先進的な解析・予測評価手法を導入して審査の効率化や高度化に対応するとともに、海外当局との連携によって国際的な医薬品・医療機器の開発につなげる。

 国際事業基盤の整備では14年度までに特別な英語研修プログラムを策定し、国際人材を育成。国際会議で海外当局と連携しながらガイドラインや論文を作成できる人材を育てる。海外当局との交流機会を増やすために、大学や研究機関への留学制度も創設する。

 承認審査情報の海外発信では、13年度に年20品の審査報告書の英訳を目指す。海外への情報発信を強化・充実する最も重要な方策の1つと位置付ける。翻訳担当部門の拡充や外部リソースの積極活用、英文ウェブサイトの拡張を進め、将来的には重要品目をすべて英訳する計画だ。

 

専門医制度の総論は決まるも各論の課題多々

2013年5月1日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) 


――卒前教育まで話を広げると、この辺りも見直す必要が出てくるのでしょうか。

 卒前の臨床実習の目的は、基本的な診療能力を身に付けることであり、医学部の5年と6年の2年間、あまり濃淡を付けずに全科を回り、臨床実習をすれば良い。そして初期研修で実践的なことを学び、将来目指す専門も一部取り入れていくのが良いと思っています。

 

 しかし、以前から言われてきたことですが、国家試験対策のために臨床実習が疎かになり、医学部の最後の1年はほとんどやらない大学もあります。そうなると臨床の能力は落ちる。国家試験を見直すことも必要です。臨床実習前に、CBTやOSCEをやっているので、国家試験では、臨床実習をきちんとやらないと解けないような問題を出すと思います。また、体調が悪かった人や、つい考え間違いをして落ちてしまった人などにチャンスを与えるために、CBTのように問題をプールして、2月と3月に2回試験しても良いと思います。1回失敗したために、1年間待つのは無駄だと思います。

――その辺りは、医療界と厚労省が話し合い決めればいいことかと。

 そうです。ただ、ややこしいのは、CBTやOSCEの担当は文部科学省で、国家試験の担当は厚労省。ただ、両方とも、実際に問題を作っているのは、大学の先生ですから検討の余地はあるでしょう。さらに、各大学で卒業試験を行い、国家試験をやる現状も見直しの余地がある。

――イギリスには医師国家試験がなく、各大学の卒業試験があるだけです。

 そうです。卒業試験がなくなると、各大学の独自性が失われる一面もあるかもしれませんが、国家試験とAdvanced OSCEくらいをやって、卒業試験に変えれば良いという発想もあります。ただでさえ、大学の先生は忙しいのですから、ある程度、負担が軽減される方法を考えた方が良いでしょう。

――医師養成全般を考えると、改革すべきことはたくさんあり、並行して多くを改革していかなければいけない。

 そうです。これまでは、やや変えなさすぎだったのではと思います。

――CBTとOSCEはここ10年で定着しましたが、専門医制度については変えてこなかった。

 はい。ただ、初期研修はだいぶ変わりました。大学から市中病院に研修場所が大きく変わり、大学が相当ダメージを受けた。しかし、悪いことではなかったと思います。大学偏重だと、専門家の集団のところだけで初期研修を受けることになり、総合的な診療能力を身につけるのには余り良くないと思います。

――最後に改めて専門医制度のことをお聞きしますが、今後、第三者機関を作り、2017年度から新制度に変えていくために、一番の難しさ、ハードルは何だとお考えですか。それともほぼコンセンサスが得られ、スムーズに物事が進むとお考えでしょうか。

 基本領域については、日本専門医制評価・認定機構で、さまざまな調査もしています。やはり難しいのは総合診療医の養成プログラムを作ること。また各専門医を養成する研修施設の認定をどのように行うかという問題もあります。今の日本専門医制評価・認定機構は養成プログラムの認定だけを行い、施設認定まではやっていないと思います。サイトビジット、つまり実際に研修施設を訪問して審査するのは容易ではありません。

 (日本医療機能評価機構の)病院機能評価事業の際は施設を訪問しています。一方、研修施設の認定は、施設認定基準を作り、どのくらいの医師がいて、どんな症例を診ているかなどのデータを見れば、書類審査でもある程度、分かると思いますので、この辺りをどんな方法で進めるかが検討課題です。

 そのほか、第三者機関の在り方や、既に専門医を取得している先生方の移行措置なども検討課題です。例えば、既に開業しているけれども、専門医を持っていない医師をどう扱うか。あるいは(サブスペシャリティの専門医は取得していても)、内科認定医を更新していない医師も結構いるようです。専門医や認定医を取得・更新している医師は良いのですが、そうでない医師への対応が難しい課題です。

――厚労省の検討会の議論の終盤になって、「医師会」というキーワードが全面に出てくるようになったように思います。

 それはやはり入れざるを得ないでしょう。日本医師会は医師を代表する集団ですし、歴史もあります。

――専門医の認定・更新に当たって、日医の生涯教育制度を活用するよう求めています。

 福井先生(編集部注:聖路加国際病院院長の福井次矢氏)が、かなり詳しい生涯教育制度を作っています(日本医師会生涯教育カリキュラム2009)。ただし、この制度では、自己申告制で単位が取得できます。詳しい実情は分かりませんが、運用の在り方を検証することが必要でしょう。

――お話をお聞きしていると、今後の検討課題は多く、総論および基本的方向性は多くが支持していても、各論で意見が分かれてくる場面も多いと思います。その中で、第三者機関の在り方がカギになってくると思います。誰がイニシアチブを取っていくことになると見ておられますか。

 個人的には、日本専門医制評価・認定機構の方々が中心になられたら良いと思っているのですが。

――ところで、先生ご自身は専門医を更新されているのでしょうか。

 私は内科と血液内科が専門ですが、継続していないかもしれません(笑)。もう20年以上も、患者さんを診ていませんから。

 ――専門医は、第一線の臨床現場で仕事をされる先生方が取得、更新していくもの。

 そうです。ただ、外科系の先生などは、手術をしなくても、コンサルテーション的な役割を担うことがありまます。こうした先生方に対する評価があっても良いかもしれません。