共同通信社  5月13日(月) 配信


 厚生労働省は医療事故の実態把握のため、国内すべての病院・診療所計約17万施設を対象に、診療行為に絡んで起きた予期せぬ患者死亡事例の第三者機関への届け出と、院内調査を義務付ける方針を決めた。関係者が12日、明らかにした。

 現在、届け出義務があるのは高度医療を提供する大学病院など約270施設だけ。新制度では中小病院や診療所も含め、死亡事例を網羅的に収集できるようになる。

 厚労省は専門家による検討部会の議論が近くまとまり次第、医療法改正に向けた作業を進め、秋の臨時国会への改正案提出を目指す。

 新制度の対象は約8500の病院と、約10万の有床・無床診療所、約6万8500の歯科診療所の計約17万7千施設(2月末時点)。診療所など小規模施設では十分な院内調査ができない可能性もあり、地域の医師会や医療関係団体、大学病院の支援を受けられる体制も構築する。

 第三者機関は行政から独立した民間組織と位置づけ、現行の「日本医療機能評価機構」や「日本医療安全調査機構」の機能を統合・一元化する案が浮上している。

 厚労省によると、事前にリスクが分かっている手術の合併症による死亡などのケースを除き、予期せぬ患者の死亡事例があった場合、医療機関は速やかに第三者機関に届け出るとともに院内調査を実施。結果を第三者機関に報告し、遺族にも開示する。

  医療機関の対応や院内調査結果に納得できないケースなどでは、遺族が第三者機関による調査を申請することも可能。医療機関側からの調査申請も受け付ける。

 第三者機関は医療機関から寄せられた調査報告の内容を分析。共通する事故要因を洗い出すなどして注意喚起し、再発防止につなげる。必要に応じて個々の医療機関への助言もできるようにする方向だ。

 新制度は医療事故の原因究明と再発防止を主眼とするため、第三者機関から警察への通報はしない。