先日の記事、「ロシアの軍事基地爆撃:「外国人傭兵の居場所は把握」と警告/逃げ出した傭兵の証言」の続報になります。
別の記事でご紹介していたゴンザーロ・ライラ氏の軍事面での考察が興味深かったので、同氏の動画から一部抜粋・翻訳しました。
その後も、この攻撃と同様にロシアによる外国人傭兵の拠点への攻撃は継続して行われていますが、こちらの記事では前回の基地へのミサイル攻撃その後のNATO・ウクライナの姿勢の大きな変化に関する彼の考察と、それに関する補足情報をまとめてあります。
(同氏によるその他の国内の内政・戦況のまとめについても、別の記事にする予定です)
3月16日 「5つのランダムなテーマについて(Five Random Topics)」
【ゴンザーロ・ライラ氏】
★情報確認が難しい戦争
・今回の戦争では、霧に包まれた戦争と言えるほどに情報を確認することが難しい状態だ。
しかし実際に何が起きているかをできるだけ正しく理解することと、そこから将来にどのような方向に向かうかを理解することが重要になってくる。
今から話すことは私の考えにすぎず、判断は各自でご自由にして欲しい。
★ヤーヴォリウ基地(国際平和維持・安全保障センター)の攻撃について:
ポーランドとの国境まで20㎞にあったヤーヴォリウ基地は、(今回の紛争前は)NATOによるウクライナ兵の訓練施設として使われていた。攻撃のあった時点では、NATO加盟国の市民を中心に、世界中から集まった約1000人の外国人傭兵の拠点となっていた。
3月13日の夜中、ロシアから発射されたミサイル攻撃30発により、被害は当初は35名の死者、135名の負傷と言われていたが、攻撃から3日後の現在では死者数は200名になっている。(訳注:うち、外国人傭兵の死傷者は100人という話も)
ロシア政府はウクライナ国内にいる外国人傭兵に対しては単純に犯罪者として扱うこととし、攻撃するものとすると警告を発していた。
・また、逃げ出した傭兵の多くの証言ビデオが拡散され、より多くの人がとてもおぞましいウクライナ軍内部の実態を垣間見ることになった。その多くはウクライナから国外に逃げ出した。私のテレグラムのページにそういった動画をシェアしているが、彼らの経験をまとめると「決してよいものではなかった」ことが共通していると言えるだろう。中にはブラジル出身の傭兵の動画で広く拡散されたものもある。
仮説的推論にすぎないが、この攻撃はNATOの大きな方向性を考える上で、非常に重要なできごとだったことが考えられる理由は次の通りだ。
⇒この攻撃に対する本当の驚きを隠しきれない西側
この攻撃直後の西側メディアによる反応をみると、この攻撃に対する西側のショックがニュースから読み取ることができた、という意見を多く聞いた。経済紙Financial Timesからも西側が本当に「ショック」を受けていたことを示すサインがみられた、とDuran(地政学的分析が人気の情報発信グループ)のうちの一人である友達が教えてくれた。
そして実際、この攻撃の直後から、NATO各国による「自国の市民をの兵士としてウクライナに送りこむ」ことを目的とした西側の広報が目に見えて静かになっている。
・しかしそれだけでなく、このロシアによるミサイル攻撃の強力さ、さらにその有効性にNATOがかなり深刻に驚き、脅威を感じたように思われる。
⇒NATOを震撼させたロシアのミサイル攻撃の恐ろしさ
目撃者の証言によれば、
・ロシアの攻撃に対する警報システムがまったく作動せず、警報もなかったため、現場の兵士たちをとても驚かせた。もちろん夜中の攻撃だったいう要因もあるだろう。
・この攻撃は、数百Kmは離れたロシア領空から発射されたと考えられている。使われた兵器のは極超音速ミサイルではなく通常の巡航ミサイルだったが、そのため、その距離を飛行するのにかなり時間がかかる(訳注:一部では1時間は滞空していたと考えられていますが、それでもNATOの防空システムはまったく検知できなかった、ということです)。
・ポーランド国境のすぐ隣にあったこの基地は、当然NATO軍による対空攻撃検知システムでカバーされていたと考えるのが妥当(下記の補足情報参照)。しかしそれでもロシアのミサイルを検知できていなかったこと。
・警報が作動しなかった理由として、NATOの対空攻撃検知・警報システムがミサイルを確認できなかったか、あるいはロシアによる妨害工作があった可能性が考えられる。どちらにせよ、「ロシアからの多数のミサイル攻撃をNATOがまったく検知できなかった」、という事実をNATOは初めて認識し、現NATOには対応策のない深刻な脅威と感じただろう。
・それを証明するように、NATOがウクライナの加盟や全面参加に対して慎重さをみせるなど、公の情報源(ニュースなど)にあった西側の強硬な姿勢が急に静かになっている。
NATOの関与という点に関して、あの訓練基地の攻撃が大きな転換期になったと考えられる。他の人は現時点ではあまり気にしてないようだが、これは非常に大きな出来事だったように思う。
動画はこちらから↓
テレグラムページに貼り付けた新しい動画(右)を見ると、この彼が車内で、『いや、本当に武器も渡されないまま、キエフ市内のパトロールに配置されそうだったんだ!』と説明しています。最初の動画で見た彼は、表情や話し方からひどいショック状態だったことがわかりますが、その後の動画ではかなり元気になっている様子でした。
(画像:テレグラムのスクショ)
動画はこちらから↓
NY Timesの記事(動画を観るには会員登録が必要)↓
上記のNY Timesの記事より:
i一部翻訳:
3月14日【Washington Post】
「アメリカ国防総省:ウクライナ基地への攻撃はロシア国内の戦闘機から発射されたものと発表:飛行禁止区域の限界が浮き彫りに」
ヤーヴォリウ基地はご覧の通り、ロシア本土からはウクライナ全域を横断するほど離れた場所にありました。
同じ頃には、イギリスのボリスもウクライナに対して一歩引いた姿勢を見せる発言をしています。
⇒ 3月16日 ロシアとの和平交渉できる可能性があるウクライナがNATOに加盟する可能性は「絶対に」ないとボリス首相
ウクライナとロシアの間での和平交渉が可能で、現実味を帯びてきたとゼレンスキーは考えていることを理由に、ボリス首相は「ウクライナがNATOにすぐに加盟する可能性はまったくない」と発言していました。
⇒3月16日 フィンランドがNATOに加盟した場合、同国にプーチンが「ハイブリッド戦争」をしかける可能性があると警告