先日の記事、「ロシアの軍事基地爆撃:「外国人傭兵の居場所は把握」と警告/逃げ出した傭兵の証言」の続報になります。

 

 

別の記事でご紹介していたゴンザーロ・ライラ氏の軍事面での考察が興味深かったので、同氏の動画から一部抜粋・翻訳しました。

 

その後も、この攻撃と同様にロシアによる外国人傭兵の拠点への攻撃は継続して行われていますが、こちらの記事では前回の基地へのミサイル攻撃その後のNATO・ウクライナの姿勢の大きな変化に関する彼の考察と、それに関する補足情報をまとめてあります。

 

(同氏によるその他の国内の内政・戦況のまとめについても、別の記事にする予定です)

 

 


3月16日 「5つのランダムなテーマについて(Five Random Topics)」

 

https://youtu.be/h6XvLVAuhgo

 

 

 

 

【ゴンザーロ・ライラ氏】

 

★情報確認が難しい戦争


・今回の戦争では、霧に包まれた戦争と言えるほどに情報を確認することが難しい状態だ。

 

しかし実際に何が起きているかをできるだけ正しく理解することと、そこから将来にどのような方向に向かうかを理解することが重要になってくる。

 

今から話すことは私の考えにすぎず、判断は各自でご自由にして欲しい。
 

 

 

 

★ヤーヴォリウ基地(国際平和維持・安全保障センター)の攻撃について:

 

ポーランドとの国境まで20㎞にあったヤーヴォリウ基地は、(今回の紛争前は)NATOによるウクライナ兵の訓練施設として使われていた。攻撃のあった時点では、NATO加盟国の市民を中心に、世界中から集まった約1000人の外国人傭兵の拠点となっていた。

 

3月13日の夜中、ロシアから発射されたミサイル攻撃30発により、被害は当初は35名の死者、135名の負傷と言われていたが、攻撃から3日後の現在では死者数は200名になっている。(訳注:うち、外国人傭兵の死傷者は100人という話も)

 

 

ロシア政府はウクライナ国内にいる外国人傭兵に対しては単純に犯罪者として扱うこととし、攻撃するものとすると警告を発していた。

 

★「ロシアの軍事基地爆撃:「外国人傭兵の居場所は把握」と警告/逃げ出した傭兵の証言」より

「 月曜日の声明で、ロシア軍報道官のイゴー・コナシェンコフ少将は

「ウクライナ国内にいる外国人傭兵の居場所について、ロシア側はすべて把握しています」
「もう一度、警告させてください。ウクライナ国内のどこであっても、
傭兵に対して容赦はしません」
と述べている。

 

 

・また、逃げ出した傭兵の多くの証言ビデオが拡散され、より多くの人がとてもおぞましいウクライナ軍内部の実態を垣間見ることになった。その多くはウクライナから国外に逃げ出した私のテレグラムのページにそういった動画をシェアしているが、彼らの経験をまとめると「決してよいものではなかった」ことが共通していると言えるだろう。中にはブラジル出身の傭兵の動画で広く拡散されたものもある。

 

仮説的推論にすぎないが、この攻撃はNATOの大きな方向性を考える上で、非常に重要なできごとだったことが考えられる理由は次の通りだ。

 

 

⇒この攻撃に対する本当の驚きを隠しきれない西側

 

この攻撃直後の西側メディアによる反応をみると、この攻撃に対する西側のショックがニュースから読み取ることができた、という意見を多く聞いた。経済紙Financial Timesからも西側が本当に「ショック」を受けていたことを示すサインがみられた、とDuran(地政学的分析が人気の情報発信グループ)のうちの一人である友達が教えてくれた。

 

そして実際、この攻撃の直後から、NATO各国による「自国の市民をの兵士としてウクライナに送りこむ」ことを目的とした西側の広報が目に見えて静かになっている。

 

 

・しかしそれだけでなく、このロシアによるミサイル攻撃の強力さ、さらにその有効性にNATOがかなり深刻に驚き、脅威を感じたように思われる。

 

 

 

⇒NATOを震撼させたロシアのミサイル攻撃の恐ろしさ

 

目撃者の証言によれば、

 

ロシアの攻撃に対する警報システムがまったく作動せず、警報もなかったため、現場の兵士たちをとても驚かせた。もちろん夜中の攻撃だったいう要因もあるだろう。

 

・この攻撃は、数百Kmは離れたロシア領空から発射されたと考えられている使われた兵器のは極超音速ミサイルではなく通常の巡航ミサイルだったが、そのため、その距離を飛行するのにかなり時間がかかる(訳注:一部では1時間は滞空していたと考えられていますが、それでもNATOの防空システムはまったく検知できなかった、ということです)。

 

ポーランド国境のすぐ隣にあったこの基地は、当然NATO軍による対空攻撃検知システムでカバーされていたと考えるのが妥当(下記の補足情報参照)。しかしそれでもロシアのミサイルを検知できていなかったこと。

 

・警報が作動しなかった理由として、NATOの対空攻撃検知・警報システムがミサイルを確認できなかったか、あるいはロシアによる妨害工作があった可能性が考えられる。どちらにせよ、「ロシアからの多数のミサイル攻撃をNATOがまったく検知できなかった」、という事実をNATOは初めて認識し、現NATOには対応策のない深刻な脅威と感じただろう。

 

・それを証明するように、NATOがウクライナの加盟や全面参加に対して慎重さをみせるなど、公の情報源(ニュースなど)にあった西側の強硬な姿勢が急に静かになっている。

 

 

NATOの関与という点に関して、あの訓練基地の攻撃が大きな転換期になったと考えられる。他の人は現時点ではあまり気にしてないようだが、これは非常に大きな出来事だったように思う。

 
 
 
(動画翻訳ここまで)
 
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【補足説明】
 
逃げ出した外国人傭兵による証言動画とされるもの
 
 
まず、「この訓練基地攻撃後、ウクライナから多数の外国人傭兵が逃げ出した」という話については、こちらのサイトにまとめられています(RTの記事にリンクがあったもの)。

 

 

アメリカのパスポートを持つ幸運な兵士のほとんどが、この戦争は「これまで見たこともないもの」だと主張している。 (すべて機械翻訳)

 

 
外国人傭兵の証言ビデオとされる動画のうち二つは、こちらにご紹介してあります。
 
 
⇒最も有名?な動画のアメリカ人傭兵(画面左)のその後
 
 
先日の記事でご紹介していたアメリカ人元傭兵の証言に対し、多数の疑惑的な意見が寄せられたのでしょう。
 

テレグラムページに貼り付けた新しい動画(右)を見ると、この彼が車内で、『いや、本当に武器も渡されないまま、キエフ市内のパトロールに配置されそうだったんだ!』と説明しています。最初の動画で見た彼は、表情や話し方からひどいショック状態だったことがわかりますが、その後の動画ではかなり元気になっている様子でした。

 

 

 
 
⇒「ブラジル出身の傭兵の動画」
 

(画像:テレグラムのスクショ)

 

 

ブラジル出身の傭兵:「みんな死んだ。外国人部隊は全滅だった」

ウクライナの外国人戦闘員部隊の一員だったブラジル出身のティアゴ・ロッシ氏は、ロシアによるヤヴォリブの基地への攻撃で、彼が所属していた外国人部隊のほとんどが全滅したと言った。

フランスなどヨーロッパ全土、韓国、チリ、アメリカ、カナダ、世界各国の傭兵がいた。みんな死んだ。もう終わりだ。軍団全体がミサイル1発で駆逐された。それがどんなことか、あなたにはわからないでしょう。私はかろうじて助かった」

この攻撃の後、ロッシ氏はウクライナ国内でロシアと戦うという考えを改め、ポーランドに逃げることにした。

 

 
 
★同基地でのミサイル攻撃直後の動画が公開される(NY Times)
 
・ヤーヴォリウ基地はまた、外国人傭兵の部隊の拠点となっていたため約180人の外国人傭兵がミサイル攻撃によって死亡したとロシア国防省が発表

・NY Timesが攻撃当時の動画を公開しているが、この動画では背後にパニック状態のアメリカ人の声が聞こえる

 

 

上記のNY Timesの記事より:

 

 

i一部翻訳:

この攻撃の際に基地にいた兵士は、恐ろしいありさまだったという。

 

スウェーデン出身の傭兵は、「地獄でした」と言い、

彼ら(ロシア)はまさにどこを狙うべきか、正確に知っていました。

彼らは何をしているのか、正確にわかっていました。

彼らは私たちを狙っていたのです。

私はみんなに、私たちが出て行かなかったら1時間も経てば終わるからと伝えました。
それをみんなに伝えると多くの人が私の考えに従ってくれ、そのおかげで助かりました」

 

元ウクライナ政府大臣で銀行家の Volodymyr Lytvyn 氏の発言から、この基地はNATOの対空防衛システムの範囲内で、ポーランド国内に配置されたパトリオット対空防衛システムが範囲内に飛行するものをすべて撃ち落とす、という認識をウクライナ・NATOは抱いていたがそれは幻想だった、ということがわかります。

 

 

また、「ロシアが罰せられない限り、ウクライナやヨーロッパにいる人はすべて安全ではない(“For as long as Russia is not punished, no one in Ukraine or in Europe is safe.”) 」という近隣の市長の発言は、まさにNATOやゼレンスキーが感じていることでしょう。プーチン大統領(ロシア)は、決してアメリカのように気軽に、あるいは「うっかりと」大量の市民を攻撃したりはしないのがせめてもの救いです。

 

 

 

★予想を超えた飛行距離:ミサイル攻撃はロシア本土から行われていた
 
 

3月14日【Washington Post】

「アメリカ国防総省:ウクライナ基地への攻撃はロシア国内の戦闘機から発射されたものと発表:飛行禁止区域の限界が浮き彫りに」

 

 

ヤーヴォリウ基地はご覧の通り、ロシア本土からはウクライナ全域を横断するほど離れた場所にありました。
 
 
ロシア国防総省の公式発表では、この攻撃で使われたのは「高精度・長距離の兵器high-precision long-range weapons)」とのこと。
 
「飛行禁止ゾーンを採用すれば、ウクライナ国内への攻撃を緩和できるはず」とNATOは考えていたものの、国の反対側まで正確にミサイルが届くのであれば「飛行禁止地域」の有効性も確かに「限定的」ですね。

 

 

 

★西側の想像をはるかに超えた精密度
 
この基地への攻撃に関し、前回の記事も含めて聞いた限りの情報をまとめると、
 

 

元イギリス特殊部隊(SAS)3名は即死するも、1000人いたとされる外国人傭兵のうち死亡したのは100名という情報も
 
・外国人傭兵の多くは、施設敷地内の大型テント(20名以上収容、暖房つき)に寝泊まりしていた(つまり、建物内にいたのはNATOの職員や上層の兵士、ウクライナ軍などが中心か?)
 
・基地内にロシアの工作員がいた可能性が高い
 
 
これらの情報がすべて正しいと仮定した場合、ロシアの攻撃は建物内の兵器や軍装備、ウクライナ兵や実戦経験の豊富な傭兵・NATO諸国の訓練官へは「壊滅的」なダメージが与えられた一方で、外国人傭兵への被害は相当に少なめであったことになります。上記のNY Timesの記事の、スウェーデンの兵士は、その恐ろしいまでの正確さを感じていたようです。
 
たしかにロシア国防省は、繰り返し自国の兵器について「長距離・高精度の兵器」という表現を使っていますが、この訓練基地爆破でみられた、想像を上回る長距離で、かつ異常な高精度だったとすれば、(さらにロシアがスパイを使って把握していた基地内の具体的な内部情報の正確さもあわせ)NATOが心底脅威を感じるのも当然でしょう。
 
 
★攻撃直後のNATOの衝撃・方向転換を示す多数のニュース
 
 
この攻撃から2日後の3月15日、ゼレンスキーは姿勢を一転し、ウクライナのNATO加盟を諦めざるをえない」、と発表していました。(Yahoo! News
 
 
 
同じ3月15日には、NATOの首脳会談の召集がかけられた様子。
 
⇒3月15日 ロシア・ウクライナ戦争に関するNATOサミットに出席するためバイデンが欧州へ

 

 

 

 

同じ頃には、イギリスのボリスもウクライナに対して一歩引いた姿勢を見せる発言をしています。

 

⇒ 3月16日 ロシアとの和平交渉できる可能性があるウクライナがNATOに加盟する可能性は「絶対に」ないとボリス首相

 

 

ウクライナとロシアの間での和平交渉が可能で、現実味を帯びてきたとゼレンスキーは考えていることを理由に、ボリス首相は「ウクライナがNATOにすぐに加盟する可能性はまったくない」と発言していました。

 

 

 

⇒3月16日 フィンランドがNATOに加盟した場合、同国にプーチンが「ハイブリッド戦争」をしかける可能性があると警告

 

 

 

 
中でも次のニュースは特に、ロシアの最新兵器の脅威をNATOが深刻に受け止めていることが読み取れます。
 
 
⇒3月20日【RT】 ウクライナの近隣国にNATOの防空警備システムが配置される
・NATO加盟国のスロバキアに、米国製のパトリオット(Patriot)地対空システムがドイツ・オランダから送られた。
 
・スロバキアはウクライナ政府の要求に応じてS-300システムをキエフに輸送する準備が整えられてたが、ロシア側の「ウクライナに先進の対空防衛システムを送る国は敵国とみなす」「輸送されるものは標的とし、破壊する」という警告を受け、保留状態となっていた。
 
 
 
 
 
★その他の最新兵器も「おそロシア」
 
最近ではこういった兵器なども話題になっていました。
(私のテレグラムページには、関連の動画などもいくつかあります。ご参考まで)
 
 
3月19日【RT】ウクライナ国内でロシアが「極超音速」ミサイルを発射
 
 
 
 
最近のキエフの(ネオナチが兵器の保管場所にしていた)ショッピングセンターへのロシアによる攻撃だったと思いますが、空から垂直に落とされた攻撃の映像を見ました(すいません、動画は保存していませんでした)。
 
夜間だったため、光となって軌道がよく見えたのですが、びっくりするくらい垂直落下していました。通常のミサイルであれば、普通は斜め上からきますよね。
 
あれは過去に噂で聞いていた、衛星などからの兵器で通称「神の杖」と言われる兵器だったんでしょうか。
 
【神の杖について】
 
 
 
 
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