高田崇史さんの「神の時空シリーズ」

実は、5作目の『厳島の烈風』をシリーズの中で最初に読んだのが去年の秋のこと。

シリーズ最初から読んでみようと思い、今回6作目の『伏見稲荷の轟雷』とあわせて感想を書いてみようと思います。

 

これまでの感想は以下の通りです。

 

 

 

 

 

情報量が多く濃い内容はシリーズ、いや高田先生の著作通して一貫しています。

ところが、作品の中の時間の流れは信じられないほどゆっくり。

6作目「伏見稲荷の轟雷」まで5日しか経ってない!(驚愕)

 

 

 

天変地異が続く宮島。突風、竜巻、地震に襲われ、厳島神社の大鳥居が大きく揺らぐなか、社務員が刺殺される。この異変は怨霊を目覚めさせようと企む者たちの仕業だと感じた辻曲彩音は、現地に急行する。宮島が「神の島」と呼ばれる所以とは?封印された大怨霊とは何者なのか?歴史の暗部を照らし出す。

 

 

世界的に有名な京都・伏見稲荷大社の千本鳥居に吊るされた四人の遺体。狐憑きの家筋である樒祈美子は、お山の気の歪みを感じて巡拝するが、千本鳥居が次々と倒れはじめる。鳴り止まぬ雷鳴のなか、稲荷山へ入ろうとする辻曲彩音らを狐たちが襲う。「お稲荷さん」と狐はなぜ縁が深いのか?稲荷神の正体は?

主人公・辻曲彩音はシャーマン的性質の家系の長女で、三女の巳雨、巳雨の親友でもある猫のグリザベラ(グリ)と、ヌリカベの陽一たちとともに、十種神宝を探しつつ、日本中で起こっている天変地異の源である大怨霊を鎮めるために飛び回っています。

 

元凶は髙村皇という正体不明の人物で、『厳島の烈風』では初めて彩音と直接対峙します。

 

結界が壊れる → 天変地異が頻発 → 怨霊を鎮めるために祀られている神の本当の姿を知る → 神を慰める

 

というパターンもだいたい同じ。

ヌリカベである陽一が、文字通り縁の下の力持ちとなり、危ない場面を救うのも安定の展開。

 

毎回、堅物で口の悪い作家の幽霊・火地晋の深い知識に助けられますが、火地さん少しずつ優しくなってきているような気がします。

 

「厳島の烈風」では、時の政権に葬られ封印された神に思いを馳せ、「伏見稲荷の轟雷」では、本来、稲荷山に祀られていた神と、歴史の中で上書きされ消されてしまった事実などに思い巡らせることが出来ました。

よく考えてみれば、何故、稲荷神の眷属が狐なのか?そんなことすら深く考えてみたことありませんでした。

 

私たちがガイドブックなどで「知ったつもり」になっていた事柄も、歴史をたどれば争いや権力で元々の姿を変えられてしまったもののあるのでしょう。

本来の姿を隠されてしまった事例もきっとたくさんあるのだろうと思います。

 

書かれているストーリーは、筋が通っているように見えますが、それもまた歴史のすべてではないのかもしれません。

 

「伏見稲荷の轟雷」で巳雨と関わる子狐の行動が、切なかった。子どもとか、小さな獣とかが傷つくのは、それだけで胸が痛い…。

 

敵である髙村皇のやり方は別の問題として、人間が自分たちの都合で、好き勝手にしてきた太古の神、ひいては自然や精霊への感謝や尊敬をないがしろにしてきたかもしれないということは、心に停めておかねばならないですよね。

 

人の多さにゲンナリしてしまうため、脚が遠のいていた厳島神社や伏見稲荷大社ですが、また訪れてみたいな…と思いました。

 

彩音の妹・摩季のタイムリミットまであと1~2日。

でもシリーズはあと3作以上?

 

ここまできたので、シリーズを最後まで見届けたいと思います。