リチャード・デミング著『私立探偵マニー・ムーン』(新潮文庫/田口俊樹・訳)を読みました。
著者のリチャード・デミングは、1940年代から1980年代初頭にかけて多くの作品をものしたアメリカの作家さんで、『刑事スタスキー&ハッチ』『チャーリーズ・エンジェル』(懐かしい…!)などのノベライズも手掛けた”職人作家”。
本作は7つの中編が収録された1冊で、そのうち6作が本邦初訳となっています。
退役軍人である探偵・マンヴィル(マニー)・ムーンが、体を張って事件を解決する、アクションと謎解きが両方楽しめる作品です。
エラリー・クイーンを彷彿とする懐かしい香りのするミステリーでもあり、読書中、ワクワクが止まりませんでした。
こんな探偵に出会ったことがおありだろうか?戦場帰りのタフガイ、私立探偵マニー・ムーン。言い寄ってくる女性に事欠かず、ときに自らの義足までも武器に大立ち回りを演じたかと思うと、関係者一同を集めて名探偵顔負けの見事な謎解きを披露する――。E・クイーンの名も継いだミステリー職人が生んだ無二のアンチヒーロー。そんなムーンの活躍を集めた”本格推理私立探偵小説”決定版!
本作には7編の中編が収録されていて、明らかな連作というわけではなさそうですが、前話とリンクしている部分もあり、TVシリーズを見ているかのよう。
時は、1940年代末~1950年代初め。
舞台は、アメリカ中西部の大都市。
主人公・マニーは決して美男子ではない。女性からは”醜男”と評されているにも関わらず、何故か女性にモテる。
どうも男性的なフェロモンが溢れているタイプのようです。
戦争で負った怪我が元で、右足の膝から下が義足というハンデを持っていますが、時にその義足を利用して危機を乗り切ります。また、何度となく危ない目にあいますが、そのたびに瞬発力ともいうべき機転とアクションで切り抜けていきます。
アクションシーンを文章で表現するのって、難しいのでは?と思うのですが、まるで映画を見ているような感覚で捉えることができました。これは、原文がそうなのか。訳が上手いのか……わかりませんが。
マニーの周りの人物も個性的。
殺人課のダニー・ブレイクとその部下、ハネガンのコンビもさることながら、ダニーとマニーの、憎まれ口をたたきながらも相手をあてにしている関係性も面白い。
元金庫破りのジャッキー・モーガン、弁護士のエディ・ダンカンも”いい仕事”していますが、何といってもカジノのディーラーでマニーの元婚約者・ファウスタが、このシリーズのスパイス的な役割となっていて、魅力的。
独占欲が強いのか、マニーに未練があるのか、その両方なのか……?
出会った女性がマニーに色目を使うと、敵愾心をあらわにする、まあ、可愛いといっちゃ可愛い女性なんですが、ちょっと度が過ぎてるんですよね(笑)。
そのせいで話がややこしくなることもあったりするのですが、マニーもファウスタのことは(おそらく友人として?)気にかけている様子も伺え、なんだかルパンと峰不二子みたいだな…と思いました。
全体的にカラッとしていて、血なまぐさい場面であっても、それこそ映画のワンシーンのよう。
もしかしたらマニーの性格によるところも大きいのかもしれません。
クヨクヨせずに、今、全力で目の前のことに向かっていく姿勢、グイグイ乗り越えていくパワフルさは、ある意味、爽やか。登場人物の女性たちのみならず、読者としてもカッコよさを感じます。
交渉よりも行動の人、そんな印象です。
まさしく活劇なんですよね。
そんなワクワクに加えて、謎解きの面白さも抜群で、密室を見破ったり、隠された企みを探り真相を暴いたりと、飽きさせません。
エンタメとして非常に魅力的で、もっと本邦で翻訳されて欲しいと切に願います。
とにかく、面白かった!