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オンライン講座「歌塾」
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作品掲載
note企画
2021年4月分掲載
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檐盧橘
五月雨の雲ふきすさぶ夕風に露さへかをる軒のたちばな
二条為道
玉葉和歌集夏374
【現代語訳】
五月雨の雲、吹き荒ぶ夕風、
空も地上も吹きまぜるような
夕風に、
その風自体はおろか
吹かれ散り乱れる露さえ
香りの匂い立つようだ。
軒の橘が、
それよりこぼれる露に
花の香りを移して。
(訳:梶間和歌)
【本歌、参考歌、本説、語釈】
たちばな:昔を思い出すよすが
さつきまつ花橘のかをかげば昔の人の袖のかぞする
詠み人知らず 古今和歌集夏139
あからさまに恋を述べたり
連想させたりする
という詠み方ではなく、
しかし
和歌において「橘」と言う以上
なにかしら昔の事を
ほのかに匂わせる、
という上品な、節度ある
「橘」の用い方だと感じます。
『新編国歌大観』では、題が
「檐盧橘」、
岩波文庫『玉葉和歌集』では
「簷盧橘」の表記。
「檐」は「のき/ひさし」などと
読むそうです。
「簷」の訓も「のき/ひさし」。
「盧橘」は
橘を意味するそうですね。
和歌の題でも
「盧橘」というものがあるよう。
「檐盧橘」や「簷盧橘」も
「のきのろきつ」と読んで
よいのでしょうか。
二条為道は二条為世の嫡男、
将来を嘱望されましたが、
二十九歳で早世しました。
五月雨の雲ふきすさぶ夕風に露さへかをる軒のたちばな