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オンライン講座「歌塾」
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作品掲載
note企画
2021年4月分掲載
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(題知らず)
五月雨にあたら月夜をすぐしきてはるるかひなきゆふやみの空
承覚法親王
風雅和歌集夏369(359)
【現代語訳】
夏のそれも
澄んで美しいものだが、
五月雨に降り籠められ
もったいなくも月夜を
雨模様で過ごしてきて、
いやいや、いまさら
晴れてくれたところで
その甲斐のない夕闇の空よ。
晴れるなら
月の出る夜でなければ。
(訳:梶間和歌)
【本歌、参考歌、本説、語釈】
五月雨に:
「五月雨にすぐしきて」または
「五月雨に(五月雨のために)
あたら(もったいなくも)
……すぐしきて」。
あたら:
連体詞と捉えるならば
「あたら(もったいない)月夜」、
副詞と捉えるならば
「あたら(もったいなくも)
月夜をすぐしきて」。
価値あるものが
価値相応に扱われないことを
残念に、またいたわしく
思う気持ちを表す。
「惜(あたら)し」の語幹。
はるるかひなきゆふやみの空:
(月が美しく見える時間帯でないので)
晴れてもその甲斐のない
夕闇の空
夏の月や月夜を称美したり
描いたりした和歌は
少ないかと思いますが、
こうした歌も
探せばあるものですね。
承覚法親王が
どのような人物なのかは
こちらに少し書きました。
大覚寺統
後宇多天皇の第四皇子、
ふつうに考えると
二条派系の和歌を詠んだ
と考えられそうな出自。
彼について詳しく語ったものを
いまのところ
見つけていないので、
知っている2首から
「出自から見ると意外だけど、
京極派的な和歌も詠む人
なのだなあ」
と思うばかりです。
五月雨にあたら月夜をすぐしきてはるるかひなきゆふやみの空