少年マンガに必要な四大要素
ワタクシ事なのですが、引越し間近でして部屋の整理をしている時に
自分の過去の作品や漫画制作メモが出てきました。
少しずつそれを公開して行きたいと思います。
少年マンガに必要な四大要素
があるのでは、と考えています。
①作品を引っ張る主人公
②強大な敵・目標
③戦いのルール・上限と下限
④不安定要素
です。あくまで私が考える、ですけど。
私が少年漫画の中でも特に素晴らしいと思う「うしおととら」で説明しましょう。
- うしおととら (第1巻) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)/藤田 和日郎
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STORY
「寺に住む少年・蒼月潮は自宅の蔵の中で一本の槍に縫いとめられていた妖怪を解放してしまう。
うしおが「とら」と名づけたその妖怪は、かつて近隣一帯を恐怖のどん底に叩き落していた大妖怪であった。
また、とらを500年間縫い留めていた槍こそ、2000年以上も前の中国で妖怪を滅ぼすためだけに作られた
「獣の槍」であった。獣の槍の伝承者となったうしおは、とらと共に様々な妖怪との戦いを繰り広げる。
始めこそ、降りかかる火の粉を払うごとく、襲ってくる妖怪を退治していた潮達であったが、物語は次第に世界を滅ぼす大妖怪・白面の者との決戦を中心に廻りだす。」 @wikiより
①作品を引っ張る主人公
どんな漫画でも、私の場合は物語に入り込めるか込めないかの一番のポイントは
「主人公に感情移入できるか」だと思うのです。
主人公の性格が純粋っていうのは少年漫画に多いと思いますが、
性格はそこまで重要じゃなくて(物語に方向性を決めるのには重要ですけど)、
むしろ行動に対する明確な根拠があった方が感情移入できるのではないでしょうか。
「うしおととら」の主人公潮の場合は、
妖怪との戦争に巻き込まれてしまう。
↓
目の前の敵から逃げられない・人を死なせたくない
↓
自分の意志とは違うが戦わなければいけない
↓
物語が進むにつれて、当事者としての責任感・敵を倒さなくてはならない事を自覚
↓
自分の意志で戦う事に。
こういう過程を丁寧に描かれると、読み手は主人公と同調します。
②強大な敵・目標
ベタだと思うでしょうが、非常に重要です。
要は物語の指標・終着点になるので
これがフワフワしてると「旅はいつ終わるの」「この話、終わる気あるの」なーんて思ってドロップアウトしちゃうんですよね(私は)
「うしおととら」の場合は「白面の者」という禍々しい大妖怪でした。
ちなみに敵じゃない場合は
「ハンター×ハンター」→主人公ゴンの父親
「たっち」→甲子園優勝 などがあります。
③戦いのルール・上限と下限
これは非常に非常に重要です。
バトルもの・ファンタジーものになると常識で測れません。
たとえば、
「ドラゴンボールを7つ集めると願いが一つだけ叶う」
「ドラゴンボールで生き返らせることが出来るのは一度だけ」など。
このルールがフワフワしていたり、何度も覆ったりすると、シリアスな展開は難しくなる場合があります。
男塾や聖闘士星矢で「えぇー!死んでなかったんかい!」
名探偵コナン君で「小さな体で活躍しすぎ!」みたいな★
いわゆる「根性マンガ」はそれはそれで面白いのですが
人の生き死にに関わるルールは大事です。
その上限、下限ギリギリのラインを理解することで
読者はその世界に引き込まれ、ハラハラドキドキするのです。
「うしおととら」の場合は、獣の槍を使いすぎると使い手が人間じゃなくなってしまう、という上限がありました。
最近読んでる北方謙三の小説・水滸伝など
原作では無敵で死なない筈の108星がガンガン死にます。
ファンタジー色を極力殺す事を作者が選んだからでしょう。
余談ですがバトルものなら、強者→弱者のグラフを明確にしておく必要があります。
④不安定要素
これは③と少しかぶりがちなのですが、
物語の中で読者が予想しきれない部分です。
ある程度熟練した読み手なら、物語の構成があらかじめ読めてしまうのですが
それを、あえて裏切る。何度も裏切る。
「ギャー!どうなるの!?」と読み手は思う。
そんな漫画・・・ついて行っちゃうでしょう!GANTZなんかその連続ですね。
「え!こいつがこんな展開に!?」といざという時に裏切るのも手の一つですが、
「このキャラ、どうなっちゃうんだろう・・・」と裏切りの要素を匂わせてハラハラさせるのも一つです。
「うしおととら」は前者と後者の二つを巧みに使っています。
前述の「獣の槍を使いすぎると使い手が人間じゃなくなってしまう」は後者ですし、
前者は(ネタバレにつき反転:最終兵器である獣の槍があっけなく破壊されてしまう等)
こういった幾つかの要素を巧みに織り込み、面白い漫画が作られていく
と私は思っています。
少女漫画や青年漫画はこれ以外の楽しみがありますが、
あくまで王道の舞台である少年漫画にはこの四つの要素が必要だと私なりに考えます。
この四つを満たす(それ以外の要素も勿論素晴らしい)「うしおととら」は
少年が青年へと成長していく達成感(カタルシス)を持って、物語の終着点としています。
最終的に読み手も、主人公と同様に成長して行くのではないでしょうか。
長くなってしまいましたが、久しぶりのマンガ講座でした~