A'sW3-53 2つの年賀メール
2010年元日。徹は実家には帰らず、府中市にあるワンルームマンションで、正月を迎えた。
午前9時、山下茜からメールが届いた。
「

![]()

![]()


![]()
![]()
![]()


明けましておめでとうございます。
住所が分からなかったので、メールで失礼します![]()
昨年中は…いろいろお世話になりました。いろいろありましたね。
今年も、よろしくお願いします
」
デコメを使っていたが、けしてデザインも文章も派手になってない、茜の性格そのままの文章に、徹は笑った。
午後6時、徹の携帯電話が震えた。新城からのメールだった。
「あけましておめでとう。
昨年末、なんとか退院できて、正月は家族と迎えることができました。
【ANGEL's WINE】、第3ピリオドは『皇騎』を超えることができました。
小さな抵抗だったけど、俺としてはこれで満足です。
アイツが、ゆかりさんとどうなるかは、俺は関与しないつもりです。
瀬田さんは、元気ですか? もうお会いすることはないかもしれないけど、競馬に恋愛に、頑張ってくれたまへ。
それでは~ (^-^)ノ~~」
メールには写真が添付されていた。
写真には、赤いバラの花束を持った新城と、家族と思われる女性が3人、そして小杉の姿が映っていた。
5人は満面の笑みを浮かべていた。小杉は、ワインのボトルを持っているようだった。
「新城……写真の左端にいるのは、中原興樹のスパイだよ。まぁ永遠に知ることは、ないよなぁ」
小杉の真相については、新城には伝えない。それは、中原興樹との約束を守る、という意味ではない。
徹は、もし自分が新城だったら、という状況を考えた。盟友と考えていた小杉が、陰で長年に渡る裏切り……耐えがたい屈辱に違いない。
そして新城は、退院したばかりとはいえ、精神状態は不安定だろう。下手をすれば発狂するかもしれない。
中原興樹の思い通りになるのは納得いかない部分があったが、もう どうにもできない。
前に新城が言っていた「皇騎にはかかわらない方が良い」は正しかったのだ、と徹は感じていた。
馬か房13(JRA賞)
年度代表馬はウオッカの連覇。まぁ今回は文句無いところだろう。
ただ、投票者287名のうち、26票を集め2位だったのが、愛するドリームジャーニー
これは嬉しかった
そして最優秀4歳以上牡馬は、221対65でドリームジャーニーがカンパニーを上回った
(他エスポワールシチーが1票)正直嬉しいが、意外な大差が着いた印象。春秋GP制覇は、凄いことだからね。
で最優秀短距離馬は、ローレルゲレイロが圧勝。
(昨年)8歳の英雄・カンパニーは、特別賞におさまった。
カンパニーは、好きな馬である。毎日王冠では美味しい思いもした。
だが、腑に落ちないことがある。
「何故前回、ダイワスカーレットは特別賞も受賞できなかったのか
」一昨年のスカーレットはGⅠは有馬のみ。対して昨年のカンパニーは2勝してる。
だけど……それを言ったら、ステイゴールドのラストイヤーもGⅠは1勝のみ(当時のドバイシーマクラシックは国際GⅡ、後に格上げ)。
それでも特別賞を獲得した。
私が言いたいのは、ステイゴールドやカンパニーにケチをつけることではない。
ただ、伝説の秋天で2センチ差の2着となり、その後 有馬を制したダイワスカーレットは、誰が見たってステイやカンパニーの活躍と遜色ない(個人的にはステイへの思い入れは強いが)。
今更言っても仕方ないのは分かってる。
だが1年前、ダイワスカーレットに特別賞が無かったことは、未だに疑問である。
昨年の競馬界で個人的に一番の残念だった出来事は、ダイワスカーレットのリタイアである。
その事も、今更ながら こんなことを想わせる理由なのかな、なんて自問自答しております

A'sW3-52 extra battle(4)
大井競馬場は既にナイター仕様になっていた。
中原興樹と瀬田徹は、混み合う正門からタクシーに乗車した。
「ホントにホテルで貴方を降ろして良いんですか?」
「構わない。新宿はそれなりに土地勘があるから。1人で飲みながら、帰るよ」
タクシーは高速道路に入っていった。
「んー。やっぱり浜崎橋で渋滞になりそうですね」
「ところで、俺が聞いたら後悔するかもしれないことって、何か、そろそろ教えてくれないか?」
「フフ。では1つ教えてあげましょう。私は、やっぱり貴方のことをライバル、というか眼前の敵だと考えていた。その証拠が、ジャパンカップの後の出来事です。ジャパンカップの1週後、貴方はどこにいましたか?」
「ん? 俺は…土日は阪神競馬場にいて、月曜日は高知競馬場にいたけど…」
「フフフフ、高知まで行ったのは意外でした。しかし、土曜日に貴方を阪神競馬場まで呼び寄せたのは、誰です?」
「小杉さんだよ。あの…『ナイスです姉茶』。新城の状態を教えてもらったんだ」
「貴方は全く疑問に思いませんでしたかネ? こっちにいる新城さんの情報を、わざわざ関西まで自腹で行って聞いた、しかも翌日はGⅠ開催日にも関わらず、土曜日を指定した…」
「それは小杉さんが、関西勤務で、土曜しか時間を取れないからという話だったけど……おい、何が言いたいんだ?」
タクシーは渋滞部分に入り、ノロノロ運転をしていた。中原興樹は、いつものうすら笑いを浮かべている。徹は寒気を感じた。
「先ほどの賭け、ハナ差で私の指名馬が先着しました。それに免じて、これから言うことは、新城さんには内緒にしてくれませんか?」
「新城? うーん、分かった。内緒にする。話を聞かせてくれ」
「いいですかァ、実はですネェ、小杉さんと私は、今でも繋がっているんですヨ。小杉さんがあの日、貴方を阪神競馬場に呼んだのは、貴方を関東から遠ざける為だったんですヨ」
背もたれに寄りかかっていた徹は、上体を起こした。
「おい、な、何なんだ?? 分かんないことが2つ以上あるぞ?」
「マァマァ、順を追って話しましょう。まず、何故貴方を関東から遠ざけようとしたか。それはゆかりさんのお父さんが、ジャパンカップの2日後に入院したという情報を、貴方の耳に入れたくなかったからです」
「はぁ……」
「その時点では、2週間経たずに亡くなる状態であるとは思っていませんでした。しかし、入院となれば貴方だって心配するはずですヨネェ。貴方は平日は仕事に忙殺されているようだった。しかし週末は危険だと思った。そのために貴方を東京から遠ざける為に、小杉さんに動いてもらったんです」
「なんというか、随分、大がかりなことをしたんだなぁ」
「それだけ、私はゆかりさんの心を繋ぎとめたかったンですヨ。やはり貴方の存在は、邪魔と言うか脅威でしたからネ。あと、新城さんの状態を貴方の耳に入れて、心を掻き乱す狙いもありましたヨ」
徹は思っていた。阪神競馬場へ行ってから1ヶ月が経っていない。1ヶ月の間に、自分は脅威の存在から、随分格下げになったなぁ、と感じていた。
「アンタと小杉が繋がっている、というのは?」
「小杉さんは、大阪に左遷された、と言ってましたよね。半分合ってますが、彼は大阪で不遇な会社生活を送っているわけではありません」
「半分違う?」
「最初の会社では、私はまだ若かった。ンー、まだ『テクニック』が稚拙だったんですネェ。しかし私には社内に味方がいました。私の大学のOBだった、当時の経理部長です。彼が暗躍してくれたお陰で、新城さんが手がけたプロジェクトは、私の手柄になった。
ただ、どうしてもスケープゴートが必要になった。プロジェクトのリーダーだった新城さんに泥をかぶせるわけにはいきません。そこで、経理部長が人事とかけあい、小杉さんをその対象にした。でもネ、小杉さんには内密に伝えてあったんです。『貴方の将来を真っ暗にする転勤ではない』とね。
新城さんは社内で吠えましたが、吠え疲れて会社を去っていきました。その1ヶ月後、小杉さんは主任に昇格したんです。そしてその頃から、私と小杉さんは密接に連絡を取り合うようになったんです」
「でも、新城は小杉のことを全面的に信頼しているようだったけど…」
中原興樹は、うすら笑いと言うよりは、あからさまな笑顔に変わっていた。
「ンー、言わば、スパイのようなものですね。
私はこれまでの人生の中で、味方を多く作ってきました。と同時に敵も作ってしまった。だが、敵になる人を、いろいろな方法で懐柔してきました。新城さんは仲間から、私が間野家の葬儀に参加していると聞いたはずです。しかしその仲間も、実は私と繋がっているのですよ。
マァそうやって、私は世間を渡り歩いてきたのですが、新城さんだけは私と繋がることは無理だと判断しました。しかし新城さんも、可愛がっていて、大阪に左遷された弟分が、まさかスパイだとは考えないようでした。小杉さんも演技がうまい。新城さんの味方のフリをして、私にいろいろな情報をもたらしてくれましたからネェ」
タクシーは首都高・浜崎橋ジャンクションは越えたが、今度は飯倉のあたりで渋滞にはまった。
小杉……徹は1か月前の記憶を思い出していた。普通の30代中盤で、これと言った特徴はないように思っていた。
「そもそもォ」
中原興樹は大きな声をあげた。記憶をたどっていた徹は、驚いて我に返った。
「新城さんが【ANGEL's WINE】に参加していることを教えてくれたのは小杉さんでした。私は第1ピリオドの3戦目から、『皇騎』そして『次郎太』として参戦しました。新城さんは、純粋な遊びとして、ゲームにエントリーしたと思いますよ。
それを『皇騎』の正体が私であると告げたのも小杉さんのはずです。予想通り、新城さんは私に敵意を示した。貴方との戦いもスリリングでしたが、新城さんとの戦いもエキサイティングでしたネェ」
「そのせいで、新城は精神に異常を来たしたんだぞ」
「ンーー、それは私のせいですかね? 彼の異常なまでの執着心が故ではないですかァ?
でも、このゲームでゆかりさんと出会えたことは、本当に偶然です。競馬と一緒でしょう。いろいろな戦略を立てても、最後は偶然に左右される。競馬も人生も、面白いものです。ただし、人生にビギナーズラックはないですネ。智略があって、運は自分に傾く。私はそう考えているのですヨ」
徹は、あくびをして見せた。
「お前の人生と、競馬を一緒にするな」
「ハハハッ、マァそれはそうですね。いろいろな人生と、いろいろな価値観があります。否定しませんヨォ」
タクシーは赤坂トンネルを通過した。
「もうすぐ、新宿に着きますね。小杉さんについて、もう1つ教えてあげますよ。彼は今度の4月、管理職に昇進します。あの会社で、高卒の30代管理職は異例の出世です。これは…昔の経理部長、今の常務の力によるところが大きいんですがね」
徹は窓から代々木、そして新宿の街並みを見ていた。大きなあくびを、繰り返すフリをしていた。
それから10分後、タクシーは目的地のホテル前に着いた。
「次にお会いするのは…結婚式の披露宴ですかネェ。きっと、ゆかりさんは招待状を出すでしょうから」
「2次会だけでも行きづらいなぁ」
「茜さんと2人で来ていただけると、信じてますよ」
中原興樹はホテルの中に入っていった。
徹は、近くの屋台に入り、日本酒をひたすら飲み続けた。意識が飛ぶ寸前まで、1人で飲んでいた。
馬か房12(金杯で…)

小説部分は、まだ東京大賞典なんですけどね

仕事始めでもやりたい、東西金杯の予想。
PAT投票で購入できる……時間があると信じてます(^人^)
【中山金杯】
アクシオン(藤田)
ヒカルカザブエ(横山典)
トウショウシロッコ(吉田豊)
デルフォイ(藤岡佑)
サニーサンデー(吉田隼)
【京都金杯】
スマートギア(武豊)
レインダンス(藤岡康)
アーリーロブスト(武幸)
マイネルファルケ(和田)
タマモサポート(津村)
両方とも三連複ボックス。
現地観戦した鳴尾記念上位
、人気でしょうが、期待します(スマートギアの距離は微妙ですが、ここから武豊の巻き返しの1年が始まる……)。何気に京都金杯は一昨年、去年と連続的中

今年も穴激走を期待してるぜ、トゥ村

は見れないでしょうね、残念ながら。でもまず「金杯で乾杯」して、幸先良いスタートを切りたいものです

A'sW3-51 extra battle(3)
「ルールはジャパンカップのときと同じです。それぞれ単純に1着を予想します。両者の指名馬が2着以下なら引き分け、一方が1着でもう一方が6着以下、または5馬身以上差が開いたら、1着指名者の勝利。どうでしょうかネェ」
「何か賭けますか?」
「何か賭けたいところですが…ンン…『男のプライド』でいかがでしょう」
徹は失笑した。徹のプライドは、既にボロボロである。
「いいですよ。もう、俺の指名馬は決めています。ヴァーミリアンです」
「ウーン、私の指名馬は、馬券を購入してからで、よろしいでしょうかネェ」
「ヴァーミリアン以外を指名するってことなら、良いですよ」
2人はそれぞれ馬券を購入し、元の席に戻った。
「ンフフフ、決めました。私はサクセスブロッケン号です。⑭番です。瀬田さんは、⑬番指名ですね」
指定席から見下ろしていた2人は、下の観覧場所が人で溢れかえっているのが分かった。
長い長い『締切2分前』表示の後、投票締切の音が鳴り、しばらくして大井名物の生ファンファーレが鳴り響いた。
第55回東京大賞典(JpnⅠ)、スタート。レースは予定通り先行馬が前に行く展開になったが、向こう正面でゴールデンチケットが掛かり気味に前に出る。
最後の直線。ゴールデンチケットが失速し、徹の本命・ヴァーミリアン(武豊 騎乗)が先頭に立つ。その外から、中原皇騎の指名馬・サクセスブロッケン(内田博 騎乗)が急襲する。
「ユタカーーー! ここは意地見せろやーー!!」
僅差の勝負。2頭の好勝負になったのは、スタンドにいる全員が分かっていた。
写真判定。しかし、ジャパンカップのような「どっちが1着か全く分からない」という雰囲気ではなかった。
「内田がウイニング・ランをしていますネェ。」
中原興樹が満足げな笑顔を見せている。きっと、馬券も的中させたのだろう。
写真判定の結果が表示された。1着が⑭、2着が⑬と表示された。着差は「ハナ」。まだ審議中であり、確定はしていなかった。
「またハナ差ですか。貴方と私の差は、どこまで行ってもハナ差なのかもしれませんネェ」
「どこまで行っても逆転できない、ハナ差なんだと思うけど」
「ンー、うまいこと言いますネェ、ハハハハッ!」
中原興樹の乾いた笑い声が響いた。
着順はそのまま確定し、中原興樹は払戻窓口に向かった。徹は、ヴァーミリアンを1着固定にした買い方しかしていなかったため、馬券は不的中。
中原興樹が財布を小脇に抱え、戻ってきた。
「タクシー代くらい、稼ぐことができましたヨ」
「タクシー代?」
「申し訳ないのですが、私はもうすぐここを出なくてはなりません。あと2レースありますが、瀬田さんは残りますか?」
「どこに行くんだよ?」
「オヤ、敬語ではなくなってしまいましたね。マァ教えてあげますよ。今晩、新宿のホテルで会食があるのです。ゆかりさんのお母様と、お母様があってほしいと言う方がいらっしゃいましてネェ」
「ゆかりは知ってるのか?」
「ンー、私からは伝えてませんが」
「電話でチクってやろうか」
「ウーン、それは困りますネェ」
中原興樹は笑顔だった。困った様子はみじんもない。それを見た徹は笑うしかなかった。ただ、何故か笑い声が出なかった。
「電話はしないでいただきたい。その代わり…よろしければ新宿まで、一緒に行きませんか? まだ少々、お話してないことがあるので、ネ」
「行こう。もうあと2レースは当たる気がしない」
「では、そろそろ行きましょう。ただ、タクシーの中で話すことは、貴方が 聞いたことを後悔しなければ良いのですがネェ」
「安心しろ、何を聞いても会食には乱入しないから」

