2009年11月1日(日)14:00~

これまで「行きたいな!」と思いながらも一度も行ったことのなかった弦楽器フェア。
いつもポスターやチラシを見てどんなイベントかイメージを膨らませていましたが、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスといった弦楽器から、楽器ケース、製作用の木材や工具まで扱っているイベント(見本市)です。


今年は北の丸公園の科学技術館で10月30日から3日間開催されます。
糟谷さんに招待券をいただいたのと、都内に引っ越して近いから行ってきました。
通常は入場料が1,000円かかりますが招待券があるのでタダでした。


今日は最終日ということもあり、混雑していました。
出展者と客の見分けがつかないくらいの混雑。
何がどこにあるのかさっぱりわからないので、とりあえずブラブラします。
入り口付近にはクロサワバイオリン、ヤマハなどのよく名前を聞くメーカーが構え、奥に行くと日本人の個人の製作家の作品が。
園田信博さんや岩井孝夫さんなど一度は名前を聞いたことのある有名製作家のブースもあります。
以前、私の楽器を修理・調整していただいた栃木県の望月慎也さんのブースもありました。
国内の個人の製作家の楽器は一人につき1~3本程度が展示され、その場で試奏できます。
たいていブースを覗いていると「弓もあります」、「弾いてみますか」と声をかけられますが、弾けないので「趣味で製作をしているので見せてください」と言って手にとって触らせてもらいました。新作ですがオールド加工してあるものが多く、その製作者の個性や本来の質感を確認したかったので少し残念でした。


楽器ケース、製作用の木材や工具などはその場で販売されていますが、楽器はまちまちです。
ブースでのパンフ配布や製作家本人またはスタッフからの販売のPRはありますが、あくまでも見本市のため基本的に値段は付いていません。
量産品や一部の楽器はフェア用に値引きまでされてセール価格で販売されているものもありました。


日本人の製作家の楽器が見終わり、奥に進むと製作用の木材や工具のブースが。
私が木材を購入したタツノヤさんが出展していたので価格を確認しながら物色。
ちょうどペグを交換したい楽器があったので、ツゲのフィッティングを探しますが、種類が少なく、意外と価格が高いのであきらめます。


と、そのとき陳昌鉉さんのブースを発見。
「東洋のストラディバリ」と称され、華麗な音色と美しい外観の楽器を製作することで知られています。
2002年に「海峡を渡るバイオリン」と題した自伝を出版し、2004年には草彅剛主演でドラマ化されました。
本人が不在だったのが残念でしたが、一度は見てみたいと思っていたので、早速手にとって観察します。
細部まで丁寧に作られていて、雑なところは一切ありません。パフリングも滑らかで、緻密さを感じました。
ここでも値段は書いてありませんでしたが、有名な方だけに気になり、後でネットで調べてみようと思いました。


さらに奥へと進むとモラッシーファミリーのブースを発見。
世界に名だたる一流製作者だけに、楽器を一目見ようと多数の人が集まっています。
遠めに眺める人や、写真を撮る人、得意そうに試奏する人など、他とは違った雰囲気です。
ただ、教育ママが無理やり子供に弾かせているような光景や、バイオリンが彼女です的な独身おじさんのような人が多く、負のオーラが出ていてショックでした。


一通り一周して見たのでブラブラしていると、弦楽器専門店シャコンヌのブースを発見。
毎年、名器の写真を大きく取り入れたカレンダーを配布していることで知られています。
音楽教室や楽器店などによく貼られていて、「カレンダー欲しいなぁ~」と思っていたのですが、2010年版が置いてあったのでいただきました。
今年はガスパロ・ダ・サロです。
そしてシャコンヌの楽器を見ていると、ガラスのパネルが立てられ、そのうしろに大事そうにオールド楽器が展示されているのを発見。
「ガスパロ・ダ・サロ」、「アントニオ・ストラディヴァリ」と書かれています。まさかとは思い、スタッフに声をかけると本物とのこと。
試奏もOKとのことで、弾けないのですが記念にちょこっと弾いてみました。音は・・・わかりません。
最初に2010年のカレンダーに起用されているガスパロ・ダ・サロを弾き、次にストラディヴァリを弾きました。
その後、「楽器を製作している」とのことを伝えると、スタッフの方が丁寧に説明をしてくれたのでいろいろ触って観察しました。
両方ともf字孔の中にはラベルが貼ってありました。
ストラディバリはなかなか触ることができないので時間をかけて観察しました。
作りは丁寧で表板や裏板が薄く、スクロールの彫りも深くて繊細なイメージでした。
バロックバイオリンのため継ぎネックがしてあり、経年の痛みの修復がかなりされていました。
予想通りといった感じでした。
通常はお店に展示してあるのではなく、月30万円程度でレンタルしているということです。
ここで結構時間を費やし、疲れてきたので帰ることにし、いろんなブースでパンフをもらいながら出口に向かいます。


歩いていると国立音楽院の学生の製作した楽器が展示してありました。
自分がバイオリンの製作をしようと思ったとき資料請求した学校です。
2年間で最低2本を製作するとのこと。
杢の美しさに差がありましたが、時間をかけて丁寧に作ったという印象でした。


そんなこんなで結構いろんな経験をして帰宅しました。


ヨシミツのバイオリン製作日記

第38日目-2009年10月25日(日)15:00~


表板の形を眺めます。
次第に楽器の形に近づいてきましたが、まだまだ余分な部分が多く、粗どりをする必要があります。

もう表板はある程度の厚さになっていて、ここから先はアーチの形やf字孔の位置を確認しながら削っていかなくてはなりません。
まだf字孔に穴は開けませんが、位置や形を実際に表板に書き写して確認するために今日はf字孔の型作りをします。

f字孔は左右で同じ形を描かなくてはいけません。内型と同じようにプラ板で土台となる型を作成して書き写します。
まずは、どのようなf字孔にするかの検討です。
楽器の形はストラディバリのクレモネーゼからとっているので、ガルネリのf字孔を使用する訳にはいきません。
やはりストラディバリの形か・・・・似たところで差をつけるならオルナーティーの形か。
ストラディバリは直線が多く、すらっとスマートなデザイン。
オルナーティーはストラディバリに似ていてやや曲線を用いたやわらかい印象です。
いろいろ考えて無難にストラディバリのf字孔にすることに決定。
ストラディバリのクレモネーゼの実物大のコピーからf字孔を写し取ります。

まず、f字孔よりも一回り大きいサイズにプラ板をカットして長方形の形にします。
後に楽器の中心線に合わせて書き写すため、このとき、角は直角になるように注意します。
プラ板が薄く、ナイフで何回かなぞると簡単にカットできました。

さらに、このプラ板を表板にあてて、f字孔を書き写す際に、作業がしやすいように工夫をします。
単にプラ板にf字孔を書き写すのではなく、ケビキで●●mmのところにラインを引き、このラインを楽器の中心線に合わせて書き写します。
こうすることで、中心から均等の距離にズレなくf字孔を描くことが可能になります。

下準備が終わったら、実物大のコピーに中心線を引く作業です。
中心線を引くには、楽器本体の横の長さを計り、半分のところに点を打つ作業を2~3箇所で行い、それを結べば完了です。
ただ、いくつか問題があります。
楽器の画像は真上から撮影していても上部のネック付近と下部のエンドピン付近は若干の歪みが発生します。
また、ストラディバリのように古い楽器は経年の使用により楽器の角が擦り減ったり、欠けている事があり、単純に長さを計って半分にしても中心がずれることがあります。
歪みや楽器本来の形をイメージしながら上部1箇所、下部2箇所の長さを計って半分の位置に点を打ち、それを結んで中心線を引きました。

ここにプラ板をあててマスキングテープで固定し千枚通しでf字孔を書き写します。
フリーハンドで書き写すため、線がフニャフニャになったり、何度も線を引きなおして本当の線がどれかわからなくならないかなど不安がありましたが、意外とスムーズに書き写せました。

ここでマスキングテープを外し、f字孔の「f」の横を貫く横棒部分の作業をします。
この「f」の横棒部分はデザイン性を重視して曖昧に描かれているのではなく、両端のある地点から均等な場所に描かれています。
計算して決められた場所に刻まれているのです。
両端からプラ板にコンパスで半円を引き、交差した部分をつなぐと「f」の横を貫く横棒が引けます。

ここまでできたらプラ板に書き写した「f」の字をナイフで切っていきます。
最初は上下の丸の部分にハンドドリルで穴を開け、ナイフで穴を広げながら整形します。
「f」の中心を貫く太い直線部分は、最初は小さく切り込みを入れ、徐々に大きくしながら切っていきます。
はみ出したらおしまいなので削り過ぎないように慎重に作業をしながら完成形に近づけていきます。

いつも勢い余って余計な部分を切りすぎてしまうので、注意に注意を重ねて何とか綺麗に切り抜けました。
微妙なラインの歪みはヤスリで削って凹凸をなくし、滑らかな曲線に仕上げます。

自分で「よしこれで完成!」というところまでやったつもりで糟谷さんに確認をお願いしますが、次々とミスや削り足りない箇所が発覚。
何度も削っては確認しを繰り返し、3時間かかってf字孔の型が完成しました。

ヨシミツのバイオリン製作日記


ヨシミツのバイオリン製作日記

第37日目-2009年10月11日(日)14:00~

久しぶりのバイオリン作りです。


前回埋め込んだパフリングがニカワでしっかりと固まっていることを確認します。
プンタの部分の2本のパフリングが交わる部分の出来がいまいちのような気もしましたが、気にしていても仕方がないので今日の作業をスタートさせます。


今日は再度、表板の粗どりの作業です。
ケビキで表板の側面から削っていいラインを刻んでいましたが、まだ厚みがあるので全体的に横からノミを入れて削ります。

松は繊維が荒く、力を入れなくてもどんどん削れていくので、裏板のときのような苦労もなく簡単に薄くなっていきます。勢い余って削り過ぎないように注意しながらサクサクと作業を進めます。


これが完了したらパフリングの周囲のヘコミを作る作業です。
裏板のときにパフリングから外側にかけて丸ノミで削って緩やかな傾斜をつけましたが、完成したときに綺麗な見栄えになるように表板も同じように削っていきます。


この後の作業の順序や削り方も、ほとんど裏板のときと同じです。
一番厚みのある部分の高さを決めて削り、そこが決まったら、各部分を徐々に薄くしていき、次第に完成の厚さにしていきます。
そんなこんなで、同じように表板の頂点部分(一番厚みのある中央部分)の高さを調整します。
高さが出せたら、上部のボタンからエンドピンの穴を貫く中心線を引きます。
さらに、その中心線から左右4センチのところに中心線と平行な線を引き、中央の削らない部分と、これから削っていく部分を分けます。


左右のまだ削っても大丈夫な部分にノミを入れ、頂点部分から緩やかなカーブになるよう削っていきます。
木の正目、逆目の区別がつかず、削ってみて木がささくれて、逆から削りなおすことが多数。
表板らしい姿になってきました。

ヨシミツのバイオリン製作日記

ヨシミツのバイオリン製作日記

ヨシミツのバイオリン製作日記

第37日目-2009年10月8日(木)10:00~


代休を使って会社を休み、朝からバイオリン作りをする予定でしたが・・・
今世紀最大という猛烈な台風の影響で電車はストップ。
強風が吹き荒れていたためお休みにしました。
せっかく休んだのに残念。



ヨシミツのバイオリン製作日記

第36日目-2009年9月27日(日)15:00~


前回、パフリングの溝を掘る作業を行いましたが、今日は作業を残していたプンタの部分のパフリングの溝を掘る作業から開始します。

2本のパフリングが交わる部分が鋭く尖っているので折れないように注意しなくてはなりません。
まず、慎重にナイフで切れ込みを入れて、その間を彫り込んでいきます。
なんとか角を折らずに終了できました。
表板を一周するパフリングの溝を確認し、きちんと彫れていない部分がないかを確認します。

次に、パフリングの長さをメジャーで測り、一本の長いパフリングの棒を、6つのパーツに分けます。
このときはナイフで折るのではなく、繊維の向きを見てパキパキと手で折っていきます。

そして、熱したコテに水をしみこませたパフリングをあてて蒸らしながら曲げていきます。
簡単に曲がりますが、パフリングに使用されている黒檀の繊維は十分に蒸らしていないと割れやすいので注意しながら作業をします。
裏板でもやった作業ですが、完全に感覚を忘れていました。
ただ、3本目くらいになると勝手がわかって簡単に曲げることができました。
6つの全て曲がったら、実際に溝にはめてみます。
まだ完成より長めの長さなので上手くはめ込めませんが、なんとなく表板の雰囲気が出てきました。

さらにピッタリはめ込むために、プンタの部分の2本のパフリングが交わる部分をナイフで切って角度を調整し、完成の時点と同じように実際にはめ込みます。
ここで裏板と表板で大きく異なる作業の特徴があります。
表板は上部のネックの付け根の部分と、下部のテールピースの下の部分は見えなく、仕込みが入るので、この部分は切れていてOKなのです。
つまりプンタの部分は間違えても何度か調整可能・・・パフリングが短くなって、隙間があいても大丈夫・・・と思っていたら、角度を間違えてしまいました。
しかもCの部分・・・Cの部分だけは長さの調整ができないので間違えてはいけなかった場所なのですが・・・このまま使用するしかないと思っていましたが、糟谷さんのご好意で長さの半端なパフリングをいただき、コテを再度熱して、またパフリングを曲げてはめ込みました。

今度はばっちり!ですが、今度は他の部分が中途半端に見えてきてしまいました。
ただ、もう気にしても仕方ないので、このまま進めることにしてニカワを温めてもらいます。

まずはCの部分から作業を行います。
プンタの角はパフリングを抜かないようにして、他の部分を溝から外し、プンタの部分を指で押さえながら筆でニカワを溝に染み込ませていきます。
ニカワを塗ると木が水分を含んで膨張し、溝にパフリングが入らなくなるので、ニカワを塗ったらすばやくパフリングをはめ込みます。
はめ込んだらまんべんなくハンマーで叩き、パフリングを埋め込んでいきます。

Cの部分が終わったら、今度は上下の部分の作業です。
Cの部分と同じようにプンタの部分はパフリングを抜かないようにして、他の部分を溝から外し、プンタの部分を指で押さえながら筆でニカワを溝に染み込ませていきます。

そして、ここからがCの部分とは異なるのですが、プンタの部分を指で押さえながら、逆側からハンマーでたたいて埋め込んでいきます。
この逆側から埋め込むことで、余分なニカワが徐々にプンタの方向へと逃げていき、最後に手で押さえていてニカワを塗っていなかったプンタの部分にいきわたり、ここでも余ったものは、染み出て外に逃げます。

全てのパフリングか埋め込めた時点で、全体を確認し、浅くしか入っていない箇所をハンマーで叩いて微調整を行います。

これで表板のパフリング埋め込みの作業が一通り完了です。
ただ、表板は乾燥して割れやすいので、小口の部分に余ったニカワを水で薄めて塗りこみます。こうすることで強度が増し、割れを防げるとのことです。

きりがいいので今日の作業はここで終了です。


ヨシミツのバイオリン製作日記


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