村上龍の小説に「愛と幻想のファシズム」(中田英寿が大好きらしい)というのがありまして、10年位前に読んだきりなのでちょっと記憶があやふやなのですが、これに万田という政治家が出てきます。登場したての頃は意欲に燃える政治家という感じだったのが、首相になってからは意欲はあるがやたらアメリカに臣従する様な政策ばかり推し進め、主人公側のテクノクラートからは「万田は発狂しているとしか思えない。新しく準備している法案を読ませてもらったが、まあひどいものだ。」と言われるような法案を連発していました。
この話を思い出したのは、最近の安倍政権が出す法案が「発狂している」と考えられるものが多いためで、有機農業推進法もそうですが、言葉からは何のことかさっぱり分からないホワイトカラーイグゼンプション(以下WE)、そして昨日の日経新聞に取り上げられた入院費定額の新制度です。ここまでわけのわかんない政策群が乱れ打ちされるのはいったい何なんでしょうか。参院選は自殺に向かって邁進している様にしか思えない。もしかしたら安倍晋三は民主党の回し者なのか?昨日、経団連の会長が「WEは早期導入が望ましい」と発言していたのにもビックリしましたけど。
まあ、私はホワイトカラーにも残業にも縁のない(残業がないわけではない)、バリバリのブルーカラーなのでWEにはさっぱり興味がなく今までほとんど知らなかったわけですが、これだけ社会に影響を与えるにもかかわらず周知されてない制度ってのも珍しい(と思ったら去年のPSEがそうでしたね。全然珍しくない(^^;)ですが、簡単に紹介すると、ホワイトカラーとみなされる高額収入の正社員は今のような労基法の管理下にしなくてもいいだろって事で残業代も労働時間の縛りもなくなる・・・つまり無償の長時間労働し放題ってことです。今までもサービス残業が問題になっていましたが、労基法違反は明らかなので最終的には労働基準監督署にチクれば済むことではありましたが、WE導入後はサービス残業が合法化するってことです。WEの対象年収はまだ決まってないので、収入が無かったら関係ないんだろ?てことではありますが、雇用者側の主張は年収400万だそうで、400万のどこがホワイトカラーじゃと言いたいところですね。
さて医療費の話ですが、以下が日経新聞のリンクです。
入院医療費、1回あたり定額に・厚労省検討
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070109AT3S2801W08012007.html
まあまだ検討の段階ですが、しかし来年の4月に導入を目指すとはなんとも気の早い話です。と言うことはこれの導入はすでにほぼ決定済みということか?
制度を簡単に紹介すると、まあ表題のとおりで、現在はこの検査にいくら、この治療行為にいくらと言う積み立て方式の治療費を、入院に対してはその病気や怪我の種類に応じて一定の決まった額にしようということです。検査や治療、入院期間が違っても病気が同じなら治療費は同じと言うことで、入院期間を短く、検査などは少なくして医療費の抑制を狙うそうです。
ところでリンク先の記事はえらく短くなっていますが、本紙ではもっと長く、医療機関側の反論も載っています。この取り上げ方は明らかにフェアじゃないと思うんですがどうでしょうか日経さん。
医療報酬はどんどん切り詰める方向へ、不可逆的と感じるほどに進んでいますが、
現在の医療費は(中略)診療行為をすればするほど医療機関が受け取る報酬が増えるため、必要性の低い検査をするなど過剰診療になりやすい面がある。
と書いてしまうのはいかがなものか。マスコミ報道ではよくこのテクニックを目にしますが、必要性の低い検査をするなど過剰診療を行っている実態はあるのか?そして現在の医療費は本当に高すぎるのか?と言う観点を(おそらく意図的に)無視しているために、無駄な医療費をカットする制度として成立しているように見えます。
日経新聞本紙の記事には、
日本の医療費は04年度、32兆1千億円と過去最高となった。
とありますが、いかにも高いと思わせるテクニックにみんな騙されています。日本の医療費は、対GDP比で先進国最低です。イギリスではサッチャー時代にこのレベルの医療費まで削減され、そして医療崩壊が起きました。その後、医療費を1.5倍にしたにも関わらず医療は復活していません。現在のイギリスでは、高度な医療を受けられるのはお金持ちだけで、完全に医療格差が定着しています。
現在の日本の医療は、爪に火をともすような努力で成立しているわけです。そこに今回の定額制度です。これでは、必要ない医療を抑制するどころか、本来必要な医療すら出来ないことになります。本当はもっと入院してもらう必要があるが、この定額報酬では赤字になってしまうから、もう退院してくれと言うことになります。医者のくせに赤字がどうとか言うな!とはマスコミの常套句ですが、赤字が積み重なれば病院だって倒産しますよ。それとも医者は人並みの生活をする権利はないという意味でしょうか。
普通に考えて、検査・治療を少なく、入院期間を短くすれば、治療のレベルは下がるのが当たり前だと思いますが、おそらく医療のレベルは維持するようにと言うのは暗黙の了解なのでしょう。暗黙と言ったって誰と誰が了解しているのか知りませんが。
私はホワイトカラーでもないし、もともと残業などと言う概念のない仕事をしているからWEには直接の関係はありませんが、WE制度は雇用者と被雇用者の格差を決定的に広げる制度で、世の中には被雇用者の方が圧倒的に多いに決まっていますから、経済の更なる失速(と言うか墜落)は目に見えるので、反対します。
同じく、これ以上医療に負担を強いることは、せっかくの素晴らしい医療制度(日本の医療は世界一です)を崩壊させることになるのでやはり反対です。というかまあ、医療はすでに崩壊していると言う見方も、医療者には多いみたいですけど。
高齢化に加え、費用がかさむ高度な医療の普及により、25年度には65兆円まで増えると厚労省は予測する
と記事にはありますが、それまで医療が保っていると言うのんきな予測には哀れさすら感じます。20年後どころか、本年4月には医療制度は崩壊すると言う予測すら珍しくないのに。
#追記
新聞は毎日読むものですね(^^;今朝の日経で、ホワイトカラーイグゼンプションは先送りすると出てますね。廃止じゃないですけど。
関係ないけど医療関係の記事も載ってます。タイでは日本の半額で同レベルの医療を受けられるって・・・日本とタイの物価の違いはもっとあると思うんですけど、何であんな取り上げ方するのかなあ。まるで日本の治療費が高すぎるような書き方ですけどね。
#1・17さらに追記
ちょっと自分の文章を読んで感じたので追記しますが、WEが先送りされるからと言って安心しているわけではありません。これが参院選対策であることは明白で、それが済み次第提出されるであろうことは確実視しています。
koume





