4、テスト投稿・・・第三部、第一章 黙示録の秘密 | Violet monkey 紫門のブログ

Violet monkey 紫門のブログ

十字架の国  1998 不思議の国、ZIPANG

第三部  「救世主」から「仏陀」への道

第一章 黙示録の秘密

 

 

 

 

桃棲じいさんの暗号解読

 

 

「・・・『そもそもおじいちゃんが、こんな長い暗号解読法の話をはじめたのは、イエスのいう〈永遠の命の奥義〉とはなにか、ということを、探求するためだったね……』」

 

私が、雪の夜の追懐にちょっと区切りをつけ、なんとなく縁側に出ていると、思いがげないソフィアの声だった。やっと聞きとれる低声で、ゆっくりゆっくり読んでいる。会話はうますぎて気になるほどの日本語も、さすがに朗読となると、語調の伸縮がいかにも耳新しくて、なにか未知の文章をきく感じがする。

 

「……『ところが、それはモーセの五書の中に、暗号でかくされている、瞑想法らしい・・・という答えが、一応できた。

しかしこれは、あくまでも仮説にすぎない。これからさきは新約聖書に出てくるイエスの言葉や、イエスの弟子たちが書き残した文章の一句一句と照らしあわせて、はたしてそれがこの仮説を証明することになるかどうか、吟味してみないことには間題は解決したとはいえないのだ。そこで、その証明のためには、まず第一に』・・・」

 

ソフィアはそっと本を閉じて顔をあげた。

 

「・・・この、〈黙示録の秘密〉という本の中では、〈おじいちゃん〉のお話が、証明まで行っておりません。ここから、急に、別の話題になってしまいましたから・・・」

 

「あとは自分で考えろっていうんじゃないの?・・・」

 

いつの間にか曙生さんが、なにかカクテルらしきものをこしらえてきて、配りながら言った。

 

「昔から、そういうところあるものね、煙に巻くのが好きなんだ。やっとのことで、これが答えだったのか、と思うと、それがつぎの謎のはじまりっていう具合でね・・・だからソフィアに言ったのよ。直接、会って、なにか聞いてもダメだって。聞けぱ聞くほど、見えてたものまで見えなくなっちゃうんだから・・・」

 

「けれども、さきほどタデコロおばさまのお話のとき、エフライムに伝わっているのではないか、という秘密の教えと、この本に書いてあります〈永遠の生命のための奥義〉との間にはきっと関係がある、と、わたくし考えておりました・・・」

 

席にもどった曙生さんは、まるで、手にしたグラスの液体について語るようなしぐさで、自間自答する。

 

「・・・イエスは〈永遠の生命の奥義〉を、一部の弟子には教えたらしいけど、奥義の内容についてはすくなくとも福音書には書いてないというわけでしょう?

けれども、そのイエスが、自分自身でくりかえして言ってる奥義の秘密の手がかりは、新約聖書の一ぱん終わりにある〈ヨハネの黙示録〉の中にかくしてあるらしい・・・というのが、桃棲じいさんのアイデアよね。

・・・そして、その黙示録に出てくる666(13-18)という謎の数字の意味は、『モーセの五書に書いてある文章の中から神という主語が使ってある章、もしくは節だけを拾い出して、しかも終わりからはじめに向かって逆さまに読んで行け』と、指示している暗号文だ・・・と、桃棲じいさんは推理した・・・

旧約聖書という本が、ほんとうに永遠の生命に入る修行を、教えるという意図で書かれていた、としたら、その秘密を解く鍵を、誰かが、〈ヨハネの黙示録〉の中に暗号で書き込んでおいたっていわれてみれば、いかにもありそうな話じゃない?」

 

「その、いかにもありそうな、というのが不安なのよ。桃棲じいさんでも読みとれた謎ときの方法を、二千年もの間、世界じゅうの人が一度も間題にしなかった、なんていうこと、考えられる? 

その答えが、正しいんだったら・・・・まあ、それでも、万一? っていう気が、私にもあったものだから、そんな本にしたわげだけど、やっぱり、誰からも、ほとんど相手にされなかった、というほうが早いわね」

 

「桃棲じいさんのおっしゃりたいこと、もしかしたら、欧米人のほうが、わかる人、いるかもしれないな、もちろんわずかだろうげれど・・・。

日本人は幸か不幸か宗教的不寛容の問題で欧米人のように深刻な苦労しないで来たものね。宗教的自由の裏側は無関心、ということ、たしかにあると思う・・・」

 

「そのことから、わたくし思いました。もしも、わたくしの大叔父のアブラハムがこの本〈黙示録の秘密〉を読みましたならぱ、多分シヨックうけますでしょう。何千年ものあいだ、苦しみ、あったのですから。宗教の問題・・・で。

・・・けれども、それよりも、わたくし、もっと驚きました。先程のタデコロおばさまのおはなし・・・この〈黙示録の秘密〉の本に書いてあります永遠の命を自分のものにする奥義と、イエスが、彼の弟子にだけ、多分、秘密に伝えた奥義とが、もしも同じものであるならば、そして、その奥義が、ヨセフやヨシュアによって、エフライムの子孫に伝えられてきました、エジプトの、イクナトンの信仰であった・・・といたしますと・・・」

 

「それに、わたしとしては、それだけじゃないわ。もしかしたら、それは田道間守ともかかわっているかもしれないっていうことになってきたんだもの。彼がもってきたく幻の奥義書〉と・・・どうしても最後まで聞ぎたいわ」

 

「そう・・・やむをえません。ソフィアさんと曙生さんのために、もうすこし辛抱して〈桃棲じいさんの大法螺説法〉を、拝聴することにしますか」

 

私はグラスを空にしてから席に帰った。彼女たちも、あの雪の夜の中村博士の忍耐を共感すべく、せいぜいくつろいだ姿をとると、大きく息を吸った。

 

 

 

 

 

 

「耳ある者は聞くがよい」

 

「もう、何度もしゃべったと思うけれども、旧約聖書-中でもモーセの五書の文章のかげには『永遠の命の奥義』が、かくされていたんだ・・・」

 

桃襖じいさんの眼に、古代の預言者がご神託を伝えるふんいきを想像させるような、妖しい光が走る。こういう眼は正常の人間のものだろうか・・・・・・

 

「ただしその暗号の秘密を解読したのは、このおいぼれたじいさんじゃない。・・・二千年前の、ナザレびとイエスだった。

・・・もっとも、その前に、暗号の鍵は、洗者ヨハネが手に入れていたのかもしれない。しかしかりに、かりにそうだとしても、おそらく彼自身はその鍵で謎を解くことができなかったのだろう。そのかわり彼は自分の前に現われたイエスという青年が、自分よりはるかにすぐれた霊性を持っていることを見抜いた。だから、洗者ヨハネは、自分が秘蔵していた暗号解読のための鍵言葉が書いてある文書を、イエスに譲った。しかしいくら霊性に恵まれているイエスだって、そう無雑作に謎が解けたわけじゃない。荒野の中での40日の断食と瞑想が必要だったのだ。おそらく、例の666という鍵言葉の手がかりを掴むまでには、10日も20日もかかったのではなかろうか・・・」

 

「おい、ちょっと待ってくれ、その666の鍵っていうのはヨハネの黙示録の中にある、あれか? いろんなところで話題になるげれども」

 

「そうだ、とも言えるしそうじゃないとも言える」

 

「しかしいずれにしたって、ヨハネの黙示録は、イエスが死んでからあとで書かれたんだろう?」

 

「現在新約聖書の中に入っているものはたしかにそうだ。だが、その原型はどうやらイエスが生まれる前に書かれたものらしい・・・残念ながら、そのことを証明する古文書はまだみつかっていない。しかしカバラの学者の中にはヨハネの黙示録を、くわしく分析してみて、この本のもとになるテキストは、キリスト教がはじまる以前に、ユダヤ教徒の手によって書かれたものに相違ない、と主張している人が、どっさりいるんだ。そればかりじゃない。ルーテルをはじめとする無数のプロテスタントの聖書研究家たちが、『ヨハネの黙示録はキリスト教徒が書いたものではない』と断定して、新約聖書の正典として入れられていることに、今日でも強硬に抗議している。・・・だから、洗者ヨハネから譲られたかどうかはあやしいとしても、とにかくイエスが生まれる前から、あの、ヨハネの黙示録のオリジナルは存在していたらしい・・・。」

 

「じゃあ、まあ、百歩ゆずって、ヨハネの黙示録の原典はイエス以前からあった、としても、それをイエスが読んだという証拠はあるのか?」

 

「そのことに関連する話なんだがね、どうも初期キリスト教会の歴史には、不可解なことがありすぎるんだよ」

桃棲じいさんはそういってまたも、相手の質間とは、関連ないような話をはじめる。

 

 

 

「たとえば二世紀のなかばころに、マルキオンという人物が現われた。彼は徹底的にパウロ一辺倒の教義を説いて、『信者はパウロの書簡と、〈ルカによる福音書〉以外のものを読むべきではない』と主張した。また、それと同じころの、モンタニウスという人物は、これまたバウロの書簡や福音書の中で説かれている〈キリスト再臨〉が、目前に迫っている、といって、信者たちに、きわめて厳格な禁欲生活をすすめた。

・・・もしも、彼らの考えかたや行動が、それ以外に逸脱したり過激にエスカレートすることがなかったら、あるいは、後日、聖人として讃えられたかもしれないが、可哀そうにマルキオンもモンタニウスも、その当時の教会当局と正面衝突した結果、異端として破門された。

・・・それにしても、いま、ここで問題にしなければならないのはそのことの是非ではなくて、このマルキオンやモンタニウスの事件を契機として、教会が、信者を指導するうえで、どんな対策を講じたか? ということなのだ。もちろん、それはいろいろの粁余曲折があってのうえだが、教会は、いわゆる新約聖書の正典(カノン)なるものを制定せざるをえなくなった。ところが、なぜか、その中にはかならずしもパウロの思想とは一致しない内容のものが、相当ふくまれることになった。

・・・・このことはひょっとしたら、初期のキリスト教会には。パウロが主張する教義とは別の、イェスに関する秘密の伝承があった証拠といえるかもしれない。

・・・ことにその臆測を深めさせるのが、〈ヨハネの黙示録〉の問題なんだ。そもそも、マルキオンやそンタニウスのような、狂信的な騒動を重ねてひき起こさないために、厳選して制定されたはずの新約聖書の正典27冊の中へ、後世、カトリック教会以外の、ほとんどすべてのキリスト教の教派が、眉をひそめて無視しようとすることになるくヨハネの黙示録〉を、敢然と加えたというのは、なぜだろうか? このことにはよほどの根拠がなければならないはずだ」

 

「そこで桃樓じいさんは、〈ヨハネの黙示録〉というのは一般に言われてるような、世の終末やキリストの再臨を説く、いわゆる預言書ではなくて、旧約のモーセの五書のなかから、イエスの〈神の国の奥義〉をさがし出す手引書だと推定した・・・そういうことだろう」

 

「まさにそのとおりだ。

・・・もしそうでなかったら、バウロたちが『過去のもの』として否定している旧約聖書を、そっくり、神聖な正典として、認める理由があるだろうか」

 

「じゃあ、洗者ヨハネを通じてだな、暗号解読の鍵が組み込んであった〈黙示録〉の原典が・・・そうだ、一応、〈原典黙示録〉とでも言っておくか・・・その、〈原典黙示録〉が・・・イエスの手に渡って、しかも彼が、その謎を解くことに成功した、としよう・・・さてそこで、イエスはその奥義を、弟子たちに教えたのか、教えなかったのか・・・もし教えたとしたら、どういうふうに伝えたのか・・・・」

 

「おそらくは彼は奥義書を書いた巻物・・・つまり、いま仮りによぶ〈原典黙示録〉を、一人一人に、ただ読ませただけじゃないかと思うんだ」

 

「そんな想像が、どこからできるんでしょう?」

 

「理由の第一はね、福音書の文面では直弟子たちはあきらかに、奥義を伝授されているはずだろう? だが、どうみても、彼らが、イエスの生存中に、本格的な断食も瞑想もやった気配がない。

それどころか、イエスが永遠の生命と言っている言葉の意味も、あまりわかっていないようなのだ。

その反面、この世の終わりとか、神の裁きというようなことを、だいぶ気にしていたようすから判断すると彼らがイエスから伝えられた奥義というのは、具体的な瞑想のやりかたが書いてあったのではなくて、彼らが見たのは寓意物語ふうな、書きものだったのではないか、と思うんだ」

 

「なるほどな・・・禅の公案のごときものだったかもしれないね」

 

「読んでもわからない相手に、奥義を伝えるなんていうこと、考えられるでしょうか?」

 

「だからイエスは奥義の伝授を種まきにたとえて、『道ばたや岩の上や、いばらの中に蒔いても芽は出ない。そのかわり、良い土地に蒔けば、百倍の実をむすぶ』といっている(マタイ13-3~9、マルコ4-3~9、ルカ8-5~8)

ここで、共観福音書のいずれをみても、イエスが、『耳ある者は聞くがよい』と、念を押しているのが印象的だ。しかも、この『耳ある者は聞くがいい』という言葉は、〈ヨハネ黙示録〉の中の教会への手紙でも、正確に7回くり返されているんだ(2-7~3-22)」

 

「イエスの奥義と黙示録とはますます濃厚にひきあってくるな・・・」

 

「要するにイエスは、天国の楽しみをのぞんだり、地獄の責苦を怖れたりという損得ずくのヤツを相手にしていないのだ。

・・・『わたしを主よ主よとよびながら、なぜわたしの言うことを行わないのか』(ルカ6-46、マタイ7-21)と言っているのも、まさに悲痛な本音だろう」

 

「言葉で祈るだげで実践しない〈敬虔な信者〉に手を焼いたか・・・師たる者の孤独を感じるな、しかしそれにしても、今日の世界じゅうのクリスチャンは本当にそのイエスを神だと信じて礼拝しているのだろうか・・・」

 

中村博士は素朴に問いかけて、しみじみと、老友の顔をみる。

 

 

 

 

 

 

 

中村博士が『うんこ博士』だったと知って紫門は感動しました☺️

クロレラって聞いたことあるでしょう?

糞尿を有効活用して食物になる藻を研究した人です

中村 浩(なかむら ひろし、1910年〈明治43年〉1月20日[1]- 1980年〈昭和55年〉12月30日)は、日本の微生物学者。

別名「うんこ博士」。

人物

太平洋戦争後と朝鮮戦争の食糧危機から、微生物農業による、未来の食糧危機の回避、宇宙食の開発を提唱。糞尿を培養基として高たんぱく質のスピルリナを培養することに成功。食糧革命を構想する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注:紫門

以下に紫門のブログで取り上げた

松居 桃楼 (著)『黙示録の秘密 』

・・・神と一つになる方法・・・