鮨竹 ~ 銀座 | 下町風来坊の備忘録

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東東京下町在住のオッサン。食べ歩きや旅、ワンコの話題など、たわいもない日常やその時々に思うことを、童心で馬鹿正直に、また今の社会や風潮に対する心情を、ぼんやり本音でつぶやいてます。

銀座7丁目、西五番街通り沿いの雑居ビル4階にある、個人的に以前からちょっと注目していた、本格的な江戸前鮨店に初訪問。

 

鮨竹・・・まだ業界では珍しい女性が大将のお店です

 

清潔感あるカウンター8席のこじんまりとした店内

 

玄関の扉を開けると、さすがに坊主頭ではないものの、江戸前鮨の店主らしく、スッキリとした短髪の小柄な女性大将と、大将とは対照的に背の大きな男性のお弟子さんが笑顔でお出迎え。

寿司店を経営する親の跡継ぎという例はあっても、まだまだ女性が大将のお店は珍しく、ましてや多くの鮨店がひしめくこの銀座で、これほど有名な女性寿司職人は、たぶんこの鮨竹の大将だけでは?

ちなみに大将は、鮨通をも唸らせる江戸前鮨の名店・新ばししみづにて、親方の元、長年本格的に修業された方です。

 

サッポロ赤星中瓶から・・・料理はおつまみありのお任せコース。

お通しは東京ではちょっと珍しい、福岡産かつお菜のお浸し

 

最初はおつまみタイム・・・まずは平目

 

ミル貝

 

個人的に、大将の修行先である新ばししみづには、まだ伺ったことはありませんが・・・。

実は一昨年の京都在住中、大将の兄弟子が経営する、京都祇園の名店・鮨まつもとにはお邪魔したことがあり・・・それを話したのをキッカケに、大将の修業時代のこと、親方や兄弟子とのことなど、いろいろ興味深いお話を聴かせていただきました。

 

さわら炙り

 

白魚

 

大将自身、当初は鮨職人になるつもりなど全くなく、実はカフェのオーナーになるため、料理や食材などを研究する過程で、あるとき築地市場に訪問、そこで親方と知り合い、ちょっとだけバイトで新ばししみづで働いてみないか?と誘われたのがキッカケなんだとか・・・。

 

日本酒は宮城の日高見、その後は山形のくどき上手

 

子持ち煮いか

 

ところで、私が京都の鮨まつもとにお邪魔した際、兄弟子の方は一見、スマートな印象で、あまり寿司職人には見えず、ちょっと俳優の辰巳琢郎さん風の、どちらかといえば穏やかな方だったのですが、大将の修業中は、大将が思わず憎しみを抱いてしまうほど、とても厳しい方だったそう。

でも今は、大将が兄弟子を慕って頼りにしている感じが伝わってきますし、兄弟子がとても厳しかった分、一見ちょっとコワモテな親方は、逆に優しかったそうです。

 

ここからにぎり・・・まずは春子鯛

 

アオリイカ

 

マグロ赤身

 

マグロ中トロ

 

京都に江戸前寿司を根付かせたパイオニアとして、関西ではちょっと有名な、鮨まつもとのお店立ち上げに関するお話も聴けました。

鮨まつもとの大将は神奈川県湘南の出身で、京都とは何の縁もゆかりもない方らしく、所用で京都を訪れた際、たまたま空いていた花見小路の店舗を打診され、一目見てとても気に入って、そのままお店を立ち上げる」決心をしたのだそう。

ただ当時は、江戸前鮨など食べないのが粋!という、保守的な土地柄の京都・・・その中でも最も保守的な祇園という場所に、あえてお店を出すに当たっては、やはり相当な苦労があったそうです。

本人はもちろん、周囲への根回しには、親方ご夫妻の強力な援軍もあったそうですね。

 

小肌

 

たこ

 

平貝

 

 

煮蛤

 

車海老

 

雲丹

 

紫とバフンの2段になってます

 

ところで大将は、兄弟子とは連絡を取り合い、お互いのお店を行き来したりもしているそうですが、親方との交流はほとんどないそうです。

親方のお店に、お客さんとして訪れてみたいそうですが、『(弟子の大将に対し)俺に頭を下げさせたいのか!』という理由で断られ、また自分は親方に破門にされた身なので、お店に呼ぶこともないそう・・・破門という意味やその理由は不明ですが、ライオンの親が子をあえて崖から突き落とす逸話のように、大将にしっかりと一本立ちして欲しいという、江戸前寿司職人ならではの、粋な親方の親心なのかもしれませんね。

 

グラスでフランスの白ワイン

 

穴子は煮詰と塩

 

鉄火巻

 

グラスでフランスの赤ワイン

 

玉子

 

味噌汁のお椀で〆

 

キップのいい、ある意味男性より男前な大将ですが、その一方女性ならではの気遣いやオモテナシも十分で、とても居心地のいい店内。

江戸前の王道的なおつまみや料理は、赤酢のシャリによく合う、どれもキッチリ仕事が施されたネタの数々で、派手さはありませんが、これぞ江戸前鮨という趣向を十分味わえました。

そして大将との対話の過程で、個人的にはちょっと懐かしい祇園・花見小路の艶やかな風景を思い出させていただけましたし、いつかまた京都を訪れた際には、鮨まつもとにも再訪してみたいですね。

 

ごちそうさまでした・・・エレベーター前まで大将のお見送り

 

特に鮨店の場合、まだ他のお客さんのあまりいない、比較的早い時間で伺うと、自然と大将とのんびり話をすることが多いですが、いろいろ自分の知らない世界の話を聴けるのがちょっと楽しいですね。

その意味で、個人的には、前半と後半の2部制で一斉スタート、滞在制限時間があって、どこか落ち着かない予約の取れない人気店ではなく、2部制でもなく時間制限もない、ゆったりくつろげる鮨店にお邪魔したいですね。

 

まだ時間も早いので・・・

 

ちょっとどこかのバーでハシゴでもと・・・しばし銀座をフラフラと。(^-^; (・・・次回に続きます)