海上保安庁・大型巡視船の世代交代 | 艦艇・船舶つれづれ

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令和6年3月15日、第八管区海上保安本部・舞鶴海上保安部所属のヘリコプター搭載巡視船「ふそう(PLH21)」の解役式がありました。

 

巡視船「ふそう(PLH21)」解役式

(引用:X「海上保安庁【公式】」)

 

巡視船「ふそう」は舞鶴の所属でしたので、何度かお目にかかっています。

以前、大阪のサノヤス造船に来ていた時にもお会いしました。

令和2年7月12日・サノヤス造船の巡視船「ふそう」から

令和4年7月9日・木津川の新来島サノヤスの巡視船

 

「ふそう」は、発注は昭和58年度、昭和59年8月に三菱重工長崎造船所で起工され、翌60年6月に進水、そして昭和61年3月19日に竣工します。

【要目(「ふそう」)】

 総トン数:5,259トン、常備排水量:5,317トン、

 全長:130.0m、最大幅:15.5m、深さ:8.8m
 機関:ディーゼル機関×2、推進軸:2軸、

 出力:18,200HP、速力:23ノット
 兵装:35mm単装機銃×1、20mm多銃身機銃×1

 搭載機:ベル412型ヘリコプター×2(現在は固有の搭載機なし)

 ※引用:「世界の艦船 2020年10月」No.933、海人社、P.45

 

令和2年6月20日・舞鶴の海上保安庁桟橋の巡視船「ふそう(PLH21)」

 

当初は「みずほ」の船名で、横浜海上保安部に所属し、平成3年12月の「しきしま(PLH31)」の就役により名古屋海上保安部に転属、さらに令和元年7月の「みずほ(PLH41)」の就役により舞鶴海上保安部に転属するとともに船名も「ふそう」に改められました。

 

「ふそう」は同型船の「やしま(PLH22)」とともに、海上保安庁初のヘリコプターを2機搭載する大型巡視船で、解役までの総航程は地球約41周分と膨大な距離を航行してきました。

 

また、HP「乗りものニュース」の記事を見ると、「みずほ(PLH21)」を横浜から突き出した形になったヘリコプター2機搭載型の大型巡視船「しきしま(PLH31)」も本年の4月15日には解役となる予定です。

 

「しきしま(PLH31)」は、平成元年度の補正予算で発注され、平成2年4月に石川島播磨重工東京工場で起工され、翌3年6月に進水、平成4年4月に竣工し、横浜海上保安部に配属されています。

【要目(「しきしま」)】

 総トン数:7,175トン、全長:150.0m、最大幅:16.5m、深さ:9.0m
 機関:ディーゼル機関×4、推進軸:2軸、速力:25ノット以上
 兵装:35mm連装機銃×2、20mm多銃身機銃×2

 搭載機:スーパーピューマ332型ヘリコプター×2

 ※引用:「世界の艦船 2020年10月」No.933、海人社、P.42

 

巡視船「しきしま(PLH31)」(引用:Wikipedia)

(ja:User:Shampoorobot aka ja:User:A16504601 - 投稿者自身による著作物 (投稿者撮影), 

CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=123767175による)

 

「しきしま(PLH31)」は、日本の原子力発電所から発生した放射性廃棄物を再処理する仏国への輸送を護衛する目的で建造された、建造当時は世界最大の「Coast Guard Ship」でした。

就役後の平成4年11月には、仏国のシェルブールから日本の東海港までプルトニウムを輸送する「あかつき丸」の護衛に従事するという、本来の目的を果たしています。

 

しかし、その後の再処理輸送は行われなかったことから、広域哨戒や東南アジア諸国への派遣、尖閣警備などに活用されました。

長らく横浜海上保安部に所属していましたが、平成30年3月に鹿児島海上保安部に転出しています。

「しきしま」は、平成30年度から令和4年度にかけて延命工事を実施する予定でしたが、劣化が著しく断念され、代船が建造されることとなりました。

 

令和3年11月に同年度の補正予算に対する代船の整備事業評価書が作成されましたが、その中では次のように記載されています。

「老朽化が極めて進行し、船体各所の経年劣化及び漏水発生等により、業務執行のみならず船内生活もままならない状況であり、海上保安業務の遂行に大きな支障が生じているこから、早急な代替整備が必要である。」

船内生活もままならない状況とは、こんな感じでした。

 

ヘリコプター搭載型巡視船(PLH)の老朽化の状況

(引用:「令和3年度補正予算に係る新規事業採択時評価結果一覧

    (令和3年11月末時点)/巡視船艇整備事業 評価書」海上保安庁)

 

確かに外板の劣化や、甲板構造物に穴が開いているなど、結構酷い状態になっています。

 

「ふそう」型巡視船の2番船である「やしま(PLH22)」についても、令和5年度補正予算において代船の建造が決定されていることから、昭和末期から平成初期にかけて建造されたヘリコプター2機を搭載する大型巡視船は間もなく姿を消すこととなります。

 

代わって、「しきしま」とおぼ同じ大きさでヘリコプター2搭載型(当初は1機で運用)である「れいめい(PLH-33)」型がすでに3隻就役しており、「しきしま」の代船も「れいめい」型で、3月14日に三菱造船下関造船所で進水しています。

【要目(「れいめい」)】

 総トン数:約7,300トン、全長:150.0m、最大幅:17.0m、深さ:9.0m
 機関:ディーゼル機関×4、推進軸:2軸、速力:27ノット以上
 兵装:40mm単装機銃×2、20mm多銃身機銃×2

 搭載機:スーパーピューマ225型ヘリコプター×1

 ※引用:「世界の艦船 2020年10月」No.933、海人社、P.40

 

「れいめい」型巡視船「あさづき(PLH35)」(引用:Wikipedia)

(海上保安庁ホームページ, CC 表示 4.0, 

https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=126893290による)

 

「みずほ(PLH21)」に始まった総トン数5,000トンを超える大型のヘリコプター搭載型巡視船は、初めての世代交代を迎えています。

 

日本の海上保安における重要な存在である海上保安庁船艇には、今回取り上げた「しきしま」と同じように、船齢30年を超え老朽化が著しいものが少なからず存在します。

 

必要なところに必要なものを、その性能をいかんなく発揮できる状態でそろえることは、領海内の治安維持のため必要なことだと思います。

 

一時的なイベントに多額の税金を投入するのではなく、このような「必要なところ」に投入されることを望みたいですね。

 

【参考文献】

 Wikipedia および

 

 

 

【Web】

 HP「乗りものニュース」

 

 X「海上保安庁【公式】」