アメリカ人にも尊敬された上杉鷹山（うえすぎようざん）

アメリカ人にも尊敬された
上杉鷹山（うえすぎようざん）

上杉神社所蔵品。, パブリック・ドメイン, リンクによる

「なせば成るなさねば成らぬ何事も成らぬは人のなさぬなりけり」

という言葉は、上杉鷹山（うえすぎようざん、1751～1822年）が残した有名な言葉の一つです。この言葉は、文字通り、「物事を成し遂げるためには行動を起こすことが必要であり、何もしなければ何も達成できない」という意味で、自らの努力と行動が成功への鍵であるという鷹山の信念を示しており、多くの人々に影響を与え続けています。

上杉鷹山は、江戸時代中期の大名で、出羽国米沢藩（現在の山形県米沢市）9代藩主。山内上杉家25代当主です。米沢藩政改革を行った江戸時代の名君として知られ、米沢藩中興の祖として現在も米沢市民に深く尊敬されています。

米沢藩は上杉謙信の後裔である上杉家によって治められ、特に上杉鷹山の改革で知られています。

明治以降、鷹山は多くの修身（しゅうしん）の教科書や内村鑑三による英語の著作『代表的日本人』でも紹介されました。「鷹山公」と敬称をつけて呼ばれることが多く、理想のリーダーとして今も評価されています。

ジョン・F・ケネディ大統領が日本人記者団から尊敬する日本人について尋ねられた際に鷹山を挙げたという逸話があります（真偽は定かではないとも言われています）。また、セオドア・ルーズベルト大統領が鷹山を尊敬していたとも言われています。

キャロライン・ケネディは元駐日アメリカ合衆国大使（2013年11月19日 – 2017年1月18日）として米沢市を訪れ、鷹山を称賛するスピーチを行ったことがあります。2014年には山形県の白鷹山に、鷹山とケネディ両名を称える石碑が建立されました。

このようなリーダーが今の日本にいてほしいものです。

伝国の辞

鷹山が次の藩主に家を継がせる時に伝えた、藩主としての心得を「伝国の辞」です。

一、国家は先祖より子孫へ伝え候国家にして我私すべき物にはこれ無く候
一、人民は国家に属したる人民にして我私すべき物にはこれ無く候
一、国家人民の為に立たる君にして君の為に立たる国家人民にはこれ無く候
右三条御遺念有間敷候事
天明五巳年二月七日　　治憲　花押
治広殿　　机前

現代語訳：

簡単に訳すと、

「国家は、私有物ではない。国民は国家に所属するが個人の所有物ではない。国の代表は、国と国民のために存在するのであり、国の代表のために国と国民が存在するのではない」

と書かれています。

以下全文です。

国家は先祖から子孫へと受け継がれるものであり、私的に所有すべきものではありません。

人民は国家に属するものであり、個人的に所有すべきものではありません。

国と人民のために存在するのが君主であり、君主のために国と人民が存在するわけではありません。

これら三つの原則を忘れないでください。

天明5年（1785年）2月7日　治憲（鷹山の名）の印
治広殿（次期藩主）へ

老婆の手紙

その鷹山の人柄を表す手紙が残っています。

1778年1月4日（安永6年12月6日）、米沢西郊の遠山村（現在の、米沢市遠山町）のヒデヨというおばあさんが、嫁ぎ先の娘に宛てて書いた手紙です。この手紙のなかで言及されているお殿様が鷹山です。

手紙には、お殿様が意外な形で登場し、その後、銀五枚を褒美として与えたエピソードが紹介されています。手紙を書いたおばあさんも、お殿様からの援助に深い感謝の念を抱いており、お殿様への敬意と感謝を表しています。

この手紙はお殿様がどのようにして人々から尊敬され、愛されていたかを垣間見ることができる貴重な証拠となっています

投稿者 - 米沢市宮坂考古館, Copyrighted free use, リンクによる

おばあさんが娘に書いた手紙：

現代語訳

一筆お伝えするつもりでしたが、その後、何の連絡もない間、元気で働いていると思います。
私も元気ですので、ご安心ください。

秋の稲の残りを干して片付けていたら、夕立が来そうで心配していたところ、二人の侍が通りかかり、手伝いを受けました。

帰りには、刈り上げた餅をあげると言い、どこに届けるか聞いたら、大きな家の北の門から伝えておくとのことでした。それで、福田餅を33個作って持って行きました。

それで家族全員と孫たち全員に足袋を配りました。あなたの小松にもあげるから、と大名から頂いたものを大切に履かせてください。そして、しっかりと育てていただくよう、心からお願いします。

十二月六日

とうへい

ひでよ

おかの殿

さらに申し上げますが、松の足に合わない時は大切にしまっておいてください。
1月の正月に来られる時には、どうぞ。

もとの手紙

一トフデ申シ上ゲマイラセ候アレカラオトサタナク候アイダ
（一筆で申し上げまいらせ候あれから音沙汰なく候間）
タツシヤデカセキオルモノトオモイオリ候
（達者で稼ぎおるものと思いおり候）
オラエモタッシャデオルアンシンナサレタク候
（おらえも達者でおる安心なされたく候）
アキエネノザンギリボシシマイユーダチガキソウデキヲモンデイタラ
（秋稲の残り残り干し仕舞い夕立が気来そうで気をもんでいたら）
ニタリノオサムライトリカカツテオテツダイウケテ
（二人のお侍通りかかってお手伝い受けて）
カエリニカリアゲモチアゲモウスドコヘオトドケスルカトキイタラ
（帰りに刈り上げ餅あげ申す何処へお届けするかと聞いたら御上屋敷北の御門から言うておくとのこと）
オカミヤシキキタノゴモンカライウテオクトノコト
（御上屋敷北の御門から言うておくとのこと）
ソレデフクデモチ三十三マルメテモツテユキ候トコロ
（それで福田餅三十三丸めて持って行き候所）
オサムライドコロカオトノサマデアッタノデコシガヌケルバカリデタマゲハテ申シ候
（お侍どころか御殿様であったので腰が抜けるばかりでたまげ果て申し候）
ソシテゴホウビニギン五マイヲイタタキ候
（そして御褒美に銀五枚を頂き候）
ソレデカナイヂウトマゴコノコラズニタビくレヤリ候
（それで家内中と孫子残らずに足袋くれやり候）
オマイノコマツノニモヤルカラオトノサマヨリハイヨーモノトシテダイシニハカセラレベク候
（おまいの小松にもやるからと御殿様よりはいようものとして大事に履かせられるべく候）
ソシテマメニソタテラルベククレグレモネガイアゲ候
（そしてまめに育てられるべくくれぐれも願い上げ候）

十二かつ六か
（十二月六日）
トウベイ
ヒデヨ
おかのどの
（おかの殿）

ナホ申シアケ候マツノアシニアワヌトキワダイジニシマイオカルベク候
（なお申し上げ候松の足に合わぬ時は大事にしまいおかるべく候）
イサイショガツニオイデノトキハナスベク候
（一月正月においでの時はなすべく候）