眠れないときのヨーガ:不眠と心身の緊張をやわらげるために
「眠りたいのに眠れない」
「夜中に何度も目が覚める」
「仕事のことが頭から離れない」
「眠れないことが不安になる」
このような睡眠の悩みを抱えている人は、決して少なくありません。睡眠負債という言葉があるくらいです。
睡眠負債
睡眠不足が積み重なる「睡眠負債」は、本人の疲労や集中力の低下だけでなく、社会全体にも大きな影響を及ぼします。
日本では、睡眠不足や睡眠障害によって生じる経済的損失について、過去の研究で年間約3兆5,000億円という試算が報告されています。
この試算は、欠勤や遅刻、作業効率の低下、交通事故などによる損失を含めたもので、厚生労働省関連の資料でも紹介されています。
さらに、厚生労働省のe-ヘルスネットでは、睡眠問題による経済・社会的損失は日本で年間「数兆円」に上るとしています。睡眠は単なる個人の休息ではなく、健康、生産性、安全、そして社会全体の活力に関わる重要な生活基盤なのです。
日本人の約5人に1人が「不眠」を訴えている
厚生労働省の資料では、不眠を訴える成人は21.4%、およそ5人に1人と報告されています。
また、厚生労働省「令和5年(2023年)国民健康・栄養調査」では、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は、男性38.5%、女性43.6%にのぼります。
さらに、睡眠で休養がとれている人は74.9%であり、反対にいえば、約4人に1人は睡眠による十分な休養感を得られていません。
つまり、睡眠の問題は決して特殊なものではなく、現代人にとって非常に身近な問題なのです。
※「約5人に1人が不眠症」ではなく、「約5人に1人が不眠を訴えている」とするのが正確です。医学的に診断された不眠症の有病率とは異なります。
なぜ眠れなくなるのか
不眠には、様々な要因があります。
厚生労働省では、ストレスをはじめ、こころや身体の病気、薬の副作用など、さまざまな要因が不眠につながるとしています。
現代ではさらに、
・仕事や人間関係によるストレス
・夜遅くまでの仕事
・パソコンやスマートフォン
・生活リズムの乱れ
・交替勤務
・長時間の仕事や通勤
・身体やこころの病気
なども睡眠に影響します。
特に、経営者や管理職など、仕事上の判断を常に求められる立場では、身体は休んでいても頭の中では仕事が続いている、ということがあります。
「眠らなければ」が、さらに眠れなくなる
不眠が続くと、
「今日も眠れないのではないか」
↓
「明日の仕事に支障が出る」
↓
「早く眠らなければ」
↓
心身が緊張する
↓
さらに眠れなくなる
という悪循環に陥る場合があります。
大切なのは、眠ろうと頑張りすぎないことです。
ヨーガでは、
身体をゆるめる
↓
呼吸を静める
↓
心の活動を静める
↓
眠ろうとする努力を手放す
↓
自然な眠りを待つ
という方向へ導いていきます。
ヨーガは睡眠に役立つのか
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠のためのリラクゼーション方法として、腹式呼吸、ヨーガ、瞑想などが紹介されています。
また、厚生労働省eJIMの睡眠障害に関する情報でも、ヨーガは睡眠の質を改善するのに役立つ可能性があるとされています。
ただし、ヨーガは不眠症に対する医療的治療の代わりになるものではありません。
不眠が長期間続いている場合、日中の生活に支障がある場合、あるいは睡眠薬を長期間使用している場合には、医師に相談しながらヨーガを補助的に取り入れることが大切です。
就寝前は「休むヨーガ」
夜のヨーガでは、頑張る必要はありません。
カパーラバーティ、バストリカー、長いクンバカなど、刺激の強い呼吸法は就寝直前には行わず、静かな呼吸と穏やかな身体運動を中心にします。
子どものポーズ、ゆっくりした呼吸、仰向けでのリラックス、シャヴァーサナなどを利用して、身体を少しずつ休息状態へ導きます。
就寝前の環境も大切
ヨーガだけでなく、就寝前の生活そのものを見直します。
できれば就寝の1時間程度前から、パソコンやスマートフォンを見ない時間をつくります。
特に仕事のメール、ニュース、SNSなどは避け、仕事上の判断や問題解決を終了します。
仕事が気になる場合は、紙に
「明日やること」
「今気になっていること」
を書き出します。
そして、
「今日はここまで。続きは明日考える」
と仕事や活動をおもいきってやめます。
温かいミルク、穏やかなアロマ、頭皮への軽いオイルマッサージなども、就寝前のリラックスした習慣として取り入れることができます。
まずは簡単な方法から
特別な道具がなくても、次のような方法から始められます。
子どものポーズ(バラ―サナ)
頭をクッションなどに預け、肩、首、背中の力を抜きます。
吐く息とともに身体が重くなり、床に身体を預けていく感覚を味わいます。
2~3分程度で十分です。
ゆっくりした呼吸
楽な姿勢で、自然な呼吸を行います。
吸う息よりも吐く息を少し長めにします。
無理に深く呼吸する必要はありません。
シャヴァーサナ(屍のポーズ)
最後は仰向けになり、身体を床に完全に預けます。
「眠らなければ」と考えず、
「今は何もしなくてよい」
と身体を休ませます。
眠気が自然に訪れたら、そのまま眠ります。
入眠のためのハタ・ヨーガ実践プログラム
ここからは、就寝前に行う具体的なハタ・ヨーガの実践方法を紹介します。
「瞑想を体験してみたい」から、
「ヨーガを体系的に学びたい」へ。
身体・呼吸・心・瞑想を総合的に学び、日常生活に活かしていくための基礎コースです。
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